授業中の脱線話をしている途中にふと思い出した。
大昔のことであるが、俺が中学生の頃の話。
美術の先生のことが好きで、休み時間などによく美術準備室に遊びに行っていた。
あ、ちなみに男の先生ね(笑)あ、だからってソッチ系の話じゃない。
昼休みなんかに、絵を描いたり版画を作ったりしていたわけ。
あるとき、その先生に「消したり描き直したりしたのはダメ」と言われたことがある。
スケッチをするにしても、版画の下絵を描くにしても「一発勝負」だと。
それがどんな意味なのか当時は分からなかったし、そんな話すら忘れていた。
絵画だけでなく、音楽にしても、「一発勝負」という側面がある。
そのときに浮かんだものを瞬時に表現し、次の瞬間には、それは過去のものとなる。
絵画では過去を消せるけど、音楽では絶対にそれができない。
だから、極限まで神経を集中させることが必要だし、正確に表現するために、日々の弛まぬ努力というものが絶対不可欠になる。
多分、その先生は、そういうことを言いたかったんじゃないかと、今さらだが思う。
修正が許されないからこそ、その一瞬への準備が重要となる。
確かに、楽器を嗜む自分にも心当たりがある。
そして、修正がきかない故、二度と同じものを作ることができないということに、意味がある。
それは、すなわち「授業」でも同じである。
まあ、俺の授業と芸術を同列で語るなんて憚られるが、そんなことを思った。
今日の授業は、たとえ同じ単元をやったとしても、二度とできない。
それ故に価値がある。
そう考えるからこそ、しっかりと準備をするし、一瞬に神経を集中させる。
はた目からはそうは見えないかもしれないが、授業中は頭の中がフル回転しているのだ。
なるほど、そういうことだったのか、と妙に納得してしまった。
そして、これは、生きていく上でも同じだなと思った。
歳をとると、これまでバラバラに、そして適当に考えていたことが繋がってくる。
いやー、ほんと面白いなあ。