数学のおすすめ参考書 2022


書店に行けば、数学の参考書・問題集がずらりと並んでいます。昔に比べると随分とバラエティに富んでいるなと羨ましく思います。その反面、当たり外れも大きく、どれを選べばよいのか分からないということも考えられます。実際、生徒からも「どういう参考書をやればいいの?」という相談を受けることが多いので、よくオススメするものを選んでみました。
「参考書くらい自分で決めてくれ」と思うこともありますが(笑)、あれだけ数があると中身を確認するだけでも大変だろうなという気持ちもあります。また、適当にチョイスして後で困ったことになられても嫌なので、しっかりとした内容のものを知っておくことも仕事の1つです。
理解のための参考書
教科書だけで理解をするというのはよほどの優れた人でなければ不可能です。そこで、教科書内容を補足し深く概念を理解するための参考書を選んでみました。教科書の代わりにここで紹介する参考書を日常的に使っている生徒もたくさんいます。以前に比べるとこうしたタイプの参考書は非常に少なくなりました。需要がないと言えばそれまでですが、数学難民が増えている一因ではないかと思ったりもします。
総合的研究シリーズ(旺文社)
別記事でも紹介した総合的研究シリーズです。
全部揃えるとかなりの分厚さになります。非常に丁寧な記述が特徴で、私も説明の際に参考にさせていただくことがあります。前書きや後書きからは著者の熱意がひしひしと伝わってきます。塾生からは、著者の長岡先生の語り口が優しくて好きだという評価もありました。ただし、丁寧な説明ゆえに「まわりくどい」と感じる人もいるかもしれません。
内容は初歩からかなり高度な内容まで含んでいます。日頃から本書を読み込んでおけば、数学は相当な実力がつくだろうと想像できます。しかし、相当な厚さと濃さがあるので、読みこなすにもそれなりの能力が必要となります。実質的には辞書的な使い方がメインとなるでしょう。(個人的には、このくらいの書籍をしっかりと読み込める力をつけて大学へ行って欲しいと思いますが。)
練習問題も含まれていますが、難易度にバラツキがあるので、問題演習は別のものを用いてもいいかもしれません。

新数学Plus Elite シリーズ(駿台文庫)
説明はやや硬質な感じを受けますが、シンプルな説明が好きな人や、数学に自信がある人にはぴったりでしょう。教科書の範囲外の発展的な内容などは後半にまとめてあります。
『総合的研究』に比べるとやや高度な内容が中心で、どちらかと言えば数学が得意な生徒がさらに力をつけたい場合に使用する感じでしょうか。とはいえ、基礎的な内容もしっかりと記述してあり、個人的にはとても好きな参考書です。

基礎力を固める問題集(I+A+II+B)
基礎力アップには日々の問題演習が欠かせません。このレベルでは
- 概念理解の穴がないかのチェック
- 具体例を通して理解を深める
- 簡単な作業を自動処理できるようにする
といったようなことが目的となります。しかし、難しすぎると心が折れてしまいますし、目的にも適わないものとなります。また、量が多すぎるとこなすのが精一杯となり、これまた意味がありません。適度な問題量とこのレベルに見合った解説がなされているものをチョイスしました。
文系の数学(河合出版)
「文系の」とありますが、理系の人の基礎固めにも十分利用できます。各単元で絶対に押さえておきたい問題がコンパクトにまとまっています。数学I+Aの内容が59問、数学II+Bの内容が93問で計152問の例題と、巻末に演習問題が120問あります。
各問題に解説講義とポイントが書かれており、たまにコラムが挿入されています。解説はこの手の問題集の中ではかなりしっかりと書かれています。1日◯問のように決めて日常的に反復練習するのが理想的な使い方でしょう。あるいは、短期間で一通りさっとやって弱点を見つけるという使い方もできます。
塾でもサブの問題集に採用しようかなと思っているくらい、出来の良い問題集だと思います。この問題集で解説が少ないと感じたり、解答が意味不明だと感じる場合には教科書に戻るべきです。

入門問題精講(旺文社)
以前は基礎問題精講シリーズをオススメしていましたが、入門問題精講が登場してからはこちらをオススメしています。
基礎問題精講のあっさりした解説に比べて、こちらのシリーズはかなり詳しく解説がなされています。教科書からステップアップするような構成なので、数学が苦手な人は最初の問題集としてこちらを強くおすすめします。「問題とその解法を示して場当たり的な解説をつけた」ような参考書が多いのですが、しっかりとした基礎力をつけたいという人はじっくりと取り組むと良いでしょう。
ただし、この入門問題精講I・Aには整数の単元が収録されていないのでご注意ください。
基礎問題精講シリーズ(旺文社)
入門問題精講が登場して以来、このシリーズはあまり存在価値のないものになってしまいました。現在は「お好みならば」という程度の存在です。解説はなかなかしっかりとしているのですが、問題によってムラがあります。見開きに納めるという制限があるのかもしれませんが、ここはもう少し詳しく解説して欲しいなという部分と、この内容に対してそこまで説明しなくても、という部分が多少見受けられます。とはいえ、全体的にはよくまとまっている問題集です。
10日あればいいシリーズ(実教出版)
実教出版は教科書が非常によく出来ているのですが、問題集もなかなか渋い感じで良いです。「10日あればいい」とありますが、まあ10日では無理でしょう(笑)。
レベル的には『基礎問題精講』より易しめです。ただし、解説はあまりなく、解答もかなり簡素に書かれています。このシリーズのメリットは「薄い」「安い」という2点に尽きます。とはいえ、基礎力を養うのに必要な問題はしっかりと入っています。
繰り返しやりたい、時間をかけずに一通りの基礎を確認したい、そういう場合には有効です。もっと短期間でやる場合にはさらに問題数を絞った次のものもあります。
いずれにしても解説はほぼないようなものなので、確認用と割り切って使えばなかなかコストパフォーマンスの良い問題集です。

実戦力を養う問題集(I+A+II+B)
模試や実際の入試などでの得点力をアップさせるためには、難易度の高めの問題をじっくり時間を使って考えるという練習が必要です。このレベルになると、何度も繰り返し解くのではなく、「問題の着眼点」「同値な言い換え」などを意識して、問題を自分の知っている知識の範囲内に落とし込む練習をしていくことが必要となります。そのためには、ただ面倒な問題や必要以上に難しい問題を避け、しっかりと考えられた質の良い問題を解いていくことがポイントになります。
シュアスタシリーズ(東洋館出版社)
数学IIIのところでも紹介していますが、シュアスタのシリーズにI+AとII+Bもそろいました。このシリーズは、ちょうどいい難易度の良問が多く、演習用としてはよくできていると思います。「標準問題精講」や「やさしい理系数学」に比べると、基礎的な問題も含まれおり段階的に問題に取り組めるようになっています。(☆によって3段階で難易度が設定されています。)問題編と解答編で分冊になっているのも使いやすいかもしれません。ただし、糊が強力なのでバラすときに失敗する可能性が高いです(笑)。初版なので誤植が結構あります。でも、丁寧にやっていれば気づく範囲なので問題ないかと思います。

標準問題精講シリーズ(旺文社)
また旺文社の問題集ですが、私は決して旺文社の回し者ではありません(笑)実は『標準問題精講』のさらに1つ上のレベルとして『上級問題精講』もあります。本当はそちらの方が好きなのですが、需要を考えるとこちらを優先することにしました。
いわゆる入試標準レベルの問題(大学入試の典型的な問題)が詰まっています。良問が多く、解説もしっかりしているので、じっくり取り組めばかなり実力がつくと思います。研究の部分は絶対に読んでもらいたい内容ばかりです。ただし、I+AとII+Bで著者が異なるため、やや雰囲気が異なります(気にするほどではありませんが)。
なお、分野別のシリーズも出ています。弱点がはっきりしている場合はこちらも見てみてください。

やさしい理系数学(河合出版)
「どこがやさしいんだ!」と怒りを覚え、本書を壁に叩きつける受験生がたくさんいるとかいないとか。いわゆる通称「やさ理」です。確かに『標準問題精講』と比べると難しい問題も含まれていますが、全体としては入試標準レベルをよく押さえてあります。
この問題集の長所は別解が豊富であるということです。数学の勉強において、自分にない発想を知るというのは非常に大切です。それが入試に必要かどうかは別問題としても数学が好きな人にはぜひやってもらいたい問題集です。
当たり前ですが、理系数学なので数学IIIまで入っています。ただし、数学IIIの内容は薄いです。I+A+II+Bの範囲で使うと良いでしょう。

ハイレベル 数学I・A・II・B の完全攻略 (駿台受験シリーズ)
この問題集はI+A+II+Bの範囲で問題数が44問のみというかなり尖った構成になっています。収録されている問題は骨のあるものが多く、難関大を目指す人にはちょうど良い演習になると思います。比較的時間が取れる時期にじっくりと取り組んでいくと良いでしょう。
特筆すべき点は、1問ごとにアプローチ・解答・フォローアップという構成になっており、かなりしつこい解説がなされているというところです。その問題に関する類題なども取り上げられており、1問に時間をかけながらじっくりと考えるのが好きな人にとくに向いていると思います。この解説部分を読み込むことが重要なので、あまりゴチャゴチャした解説が好きでない人は手を出さない方がいいでしょう。また、ある程度の実力がないと使いこなせない問題集であるため、使用時期には注意したいところです。
数学I・A・II・B徹底研究(数学新社)
以前、聖文新社から出版されていた本ですが、出版社の廃業とともに絶版となっていました。が、この度めでたく復刊されたそうです!良い本がこうして残っていくのはありがたいですね。
大学入試までに一度は触れておきたい問題が104問の例題にコンパクトに収められています。類題と演習問題もついているので、これ一冊で入試標準レベルの問題は一通り押さえられるようになっています。解説は、どちらかと言えばアッサリしていますが、しっかりとツボを押さえたものとなっています。途中計算などの省略はありますが、ある程度自分の頭で考えながら行間を埋めていくと効果的でしょう。ところどころで挟まれる「ワンポイント解説」「研究」「ティータイム」などのコラムが秀逸です。
数学IIIの問題集
数学IIIは、理系大学を受験する人には切っても切れない科目です(看護系などは必要ありませんが)。国立大の理系入試では問題の半分くらいが数学III内容という大学もめずらしくありません。しかし、その割には問題集の選択肢が少ないというのがネックです。また、数学IIIの履修タイミングを考えると、問題数があまりにも多いものは現実的な選択肢とは言えません(浪人生の場合は有益ですが)。案外、数学IIIの参考書選びは大変です。
カルキュール数学III(駿台文庫)
数学IIIの中でもとくに微積分に関しては計算力が非常に重要となります。しかし、高校生の多くが、計算力が固まらないうちに応用問題にとりかかっているように感じます。まずは計算力をしっかりと鍛えておくことが大切です。そうすれば、微積分の応用の際に、余計な部分に気を取られずに済みます。
計算問題は教科書の傍用問題集でも十分ですが、あえて挙げるとすれば、この問題集です。これ1冊やっておけば、大抵の計算はクリアできるでしょう。積分計算は面倒なものもありますが、少なくともこの問題集レベルの計算はきちんとできるように準備しておきましょう。

数学III 重要事項完全習得編(河合出版)
数学IIIの基礎固めに新しい参考書を紹介しておきます。これは「文系の数学」の数学IIIバージョンといった位置付けになります。数学IIIを学ぶ上で欠かせない問題を一通り取り上げてあります。例題がちょうど100題に収まっているので、数学III全体をざっくりと勉強したい人や、分厚いのが嫌いな人にはうってつけです。難関大を受験する人以外は、正直この1冊で数学IIIは十分と言えます。解説もシンプルですが十分なものとなっています。
シュアスタ数学III入試問題(東洋館出版社)
マイナーな出版社の問題集ですが、非常によく作られています。純粋な問題集というよりは、参考書+問題集という位置付けでしょうか。単元の前半では、教科書内容の確認があり、その後で3段階のレベル別で問題が載っています。問題数も比較的少なくまとめられており、学校の授業と並行しながらでも使用できると思います。(初版では誤植が結構ありますが、きちんとやっていればすぐに気づくレベルです。)
このレベルの問題をしっかりと解けるようにしておけば、一般の国立大の入試では十分でしょう。

数学III 徹底研究(フォーラム・A)
出版社が異なりますが、『数学I・A・II・Bの徹底研究(数学新社)』(復刊されました!)と同じ著者の本です。問題のレベルなどの対象も同じようなイメージです。シュアスタと比べてもレベル的には似たような感じになるため、解説やレイアウトなどの好みで選んで良いでしょう。全体的によくまとまった問題集です。問題数は少なめですが、いいところをついた問題が多く取り上げられています。たまに挟まれるコラム的な部分も個人的に好みです。
標準問題精講(旺文社)
標準問題精講シリーズの中でも、数学IIIは若干レベルが高めに設定されています。その分、解説がよく書かれています。「研究」の部分はいろいろと興味深いことも書いてあるので必読です。
こちらも分野別があり、とくに高校生が苦手な2次曲線と複素数平面を取り上げています。
標準問題精講は国立大の入試で合否をわけそうな問題が中心であり、難関大受験者はしっかりと解ききれるようにしておきたい問題ばかりです。とくに微積分の問題は厳選されており、非常に興味深い問題がたくさんあります。簡単に解ける問題はありませんが、しっかりと考えて取り組むと相当の実力がつくでしょう。

ハイレベル 数学IIIの完全攻略(駿台受験シリーズ)
数学I+A+II+Bでも取り上げた問題集の数学III版です。問題数は少ないのですが、1問ごとにアプローチ・解答・フォローアップという構成は同じで、じっくりと解説を読み込んでいくとかなりの実力がつくでしょう。ただし、ハイレベルというだけあって骨のある問題が並んでいます。難関大を目指す人以外は必要ありません。また、ある程度の実力が身についていないとキツく感じると思います。解説を読んでみて難しく感じる人は手を出してはいけません。
まとめ
結局のところ、参考書や問題集は「自分に合っているかどうか」が重要になります。また、完璧な問題集というものも存在しません。それぞれに長所や短所があります。必ず自分の目で確かめることが大切です。
また、参考書をどう使えばいいかということを聞かれることもあります。よくあるのが「何周すればいいですか」という質問です。おそらく、そういう人はあまり成績は伸びないと思います。「◯周すること」「終わらせること」が目的にならないように注意してください。
方法はどうであれ、参考書や問題集を使うのは、自分に欠けているものを補い自分のものにするためです。その目的さえしっかりとしていれば、あとはどのように使用しても良いと思います。
- 参考書は自分に合ったものを自分の目で確かめて選ぼう
- 参考書を終わらせる・周回することが目的にならないように自分自身の目的をしっかりと定めよう
