大学入試共通テストのプレテストの結果が出ています。塾生の中にもプレテストを受けた生徒がちらほらいました。一応、数学専門塾なので、数学についてちょっと覗いてみました。
まずは大学入試センターの発表している結果等については、以下のリンク先にあります。
試行調査(平成29年11月実施分)の結果速報等について
ちなみに数学の問題と正答率は以下です(PDF)。
試験時間が従来の60分から70分に変更になっています。内容は大問5問の構成で、第3問〜第5問のうち2つを選択し、計4問の構成は従来通りです。
大きく印象が異なるのは、問題として使用される題材の変化です。グラフ描画ソフト、対話形式による出題、Tシャツの販売、渋滞をもとにした経路の問題などが取り上げられています。具体的な題材を用いた問題となっています。
新テストでは「思考力・判断力・表現力」を問うということ、それに伴う記述式の導入が大きく取り上げられました。数学I・Aの記述式の問題は全部で3問です。
試験時間は従来通りの60分となっています。内容は大問5問の構成で、第3問〜第5問のうち2つを選択し、計4問の構成は数学I・Aと同様、従来通りです。
問題の題材として、対話形式による出題および薬の副作用の問題、ポップコーンの内容量の問題などが取り上げられていますが、数学I・Aと比べると従来のテストの色が濃く残っている印象です。
記述式の問題は残念ながら1問もありませんでした。
まず、正答率について見てみると「思ったよりも低い」という印象です。
数学I・Aでは正答率7割を超えるような問いは記述式を除いた全45問中5問しかありません。正答率が5割を超える問題については11問です。気になるのは、正答率が2割を下回る問題が15問もあるということです。
正答率7割以上の問題 | 正答率5割以上の問題 | 正答率2割以下の問題 |
5/45(11%) | 11/45(24%) | 15/45(31%) |
数学II・Bでは全45問中7割を超えるものが4問、5割を超えるものが18問です。2割を下回るものは10問です。数学II・Bでは「確率分布と統計的な推測」という単元があるのですが、これを扱う学校はあまりないので、この問題を除外すると全36問中7割を超えるものが4問、5割を超えるものが18問、2割を下回るものは4問となります。こちらの方が参考になると思います。
正答率7割以上の問題 | 正答率5割以上の問題 | 正答率2割以下の問題 |
4/36(11%) | 18/36(50%) | 4/36(11%) |
数学II・Bは現行のセンター試験と似たような結果になります。従来のテストに比べると、そこまで大きな変化がないので当然といえば当然かもしれません。薬の副作用の問題の問題などは、一部の私立大の入試などでも出題されていたりします。
問題は数学I・Aのような出題になった場合の話ですね。ちょっと心配なのは、「数学の力はある程度ある」という層と「まったくできない」という層が1くくりになってしまいそうな点です。純粋に数学を考える程度ならできるけれども、それを具体的な問題に応用するレベルには至らないという層は、このタイプの問題だと数学ではない部分で弾かれてしまいそうな気がします(そんなレベルは弾いてしまえば良い、という考えの方もいらっしゃるかもしれませんが)。
正答率2割以下の問題の多さが気になる部分です。こうなると、数学の能力を測るという部分では信頼ができなくなる可能性もあります。また、どこまでを「数学の能力」として捉えるかも議論の余地がありそうです。
実際に問題を解いてみれば分かりますが、そこで用いる数学的な道具は(当たり前ですが)従来のテストと同じです。しかし、従来の出題形式ならできても、このような具体的題材ではできないという生徒がいた場合、その生徒に足りないものは何かということになります。そして、それが数学的な能力なのかどうか、ということも考えなくてはなりません。
いずれにしても、高校生にあまりにも多くのものを求めるテストではマズいのではないかと思っています。いま高校生じゃなくて良かった、と大人が思うようなものではダメでしょう。