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ただの方程式だけど

高校1年生の準備講座で毎年扱っている問題がある。高校数学への入門。

方程式 \(ax=b\) を解け。

有名な問題だし大抵の教科書や問題集にも載っているはずだ。分かっている人にはどうってことのない問題である。

ところが、高校入試が終わったばかりの新高校1年生に解かせると、何の疑問も持たずに \(\displaystyle x=\frac{b}{a}\) と書く人がいる。下手すると、高校2年生あたりでもこうやって解いてしまう人がいる。

毎年やっている準備講座の感じでは、だいたい5割から6割くらいの生徒がこういう風に解いてしまう。

もちろん、正しく解けば

\(a\neq 0\) のとき \(\displaystyle x=\frac{b}{a}\)

\(a=0\) かつ \(b\neq 0\) のとき 解なし

\(a=0\) かつ \(b=0\) のとき \(x\) は任意の実数

となる。だけど、こういう感じで書くと、この結果を「覚えよう」とする生徒が出てくる。

おいおいおい、ちょいと待たんかーい!

こんなもん覚える必要なんてないし、仮に覚えたとしても、そこには何の実感もなく理解なんて到底できないわけである。

こういう生徒は、たいてい高校入試でいろいろと悪い癖がついてしまっている。数学における文字の有効性と、それゆえ生じる問題について、なーんも知らんっていう人が多すぎるんじゃないか。もうちょっと丁寧に考えるっていうことを経験しておかないと先々で困ったことになる。

\(a\) も \(b\) も一般化された定数で、どんな値かは分からない。だから、具体的にあれこれやってみて、実感を得ることが大事なのである。とくに、特殊な例をよく考えてみることが大事だ。

\(3x=6\) とか \(0\cdot x=4\) とか \(0\cdot x=0\) とか考えてみればいい。

その上でこれらを \(x\) について解くことを考えてみる。ここでも、問題の生じる人がいて、\(a\) や \(b\) を求めようとする人も出てくる。こうなると、もう「方程式を解く」という話に戻ることになる。

思考の進み方としては、「\(ax=b\) から \(\displaystyle x=\frac{b}{a}\) としたいけど、\(a\) とか \(b\) とか分からんぞ。そしたらまず \(a\) とか \(b\) とかについて考えるかー。その後で解けばいいじゃん」程度のものである。

で、\(3x=6\) とか \(3x=0\) とか \(0\cdot x=4\) とか \(0\cdot x=0\) なんていう具体的な \(a\)、\(b\) を与えてみて、\(x\) を考えていく。

\(3x=6\) なら「ふつうに」解いて \(x=2\) だ。\(3x=0\) も同じように解いて \(x=0\) である。

ところが、\(a=0\) になると、0で割るという操作が入ってしまうので「ふつうに」解いたらダメである。でも、\(x\) にいろいろ入れてみたら分かる。

\(0\cdot x=4\) なら \(x\) に何を入れても \(0=4\) となって等号は成り立たない。

\(0\cdot x=0\) なら \(x\) に何を入れても \(0=0\) となっていつでも等号がなりたつ。

だから

\(a\neq 0\) のとき \(\displaystyle x=\frac{b}{a}\)

\(a=0\) かつ \(b\neq 0\) のとき 解なし

\(a=0\) かつ \(b=0\) のとき \(x\) は任意の実数

となるわけである。こういう具体例を通して実感を得るという作業をやらない人がとても多い印象だ。具体と抽象はつねに行き来するものであるはずなのに。そして、問題を解いてみるということの意味はここにあるのだけど、それはそれでただ具体例をやっておしまいっていう人が多い。

こういう、あまり表立って見えない部分に問題を抱えている高校生とか中学生ってたくさんいるのである。

「もっとたくさんやろう!」では解決しないんですよ。

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