数学IIIの大切な極限

学校の授業は積分に入っているらしいけど、うちの授業はまだまだ微分なのです。
学校の授業はほいほい進んでいるのですが、生徒の理解はイマイチのようなのできちんとフォローをしなければなりません。
数学IIIの内容は、理学系や工学系に進学する学生にとって非常に重要な知識となります。
理系入試において数学IIIの内容が重視される傾向にあることも事実ですが、大学入学後の学問の深化を踏まえた上で理解する必要があります。
卒塾生の声から、理系に進学したにもかかわらず、積分計算などの基礎的な数学知識を十分に習得できていない学生が少なくないことが伺えます。
大学の講義についていくことができず、過去問演習に頼って単位を取得する学生もいるようです。
大学合格を目的とした学習では、このような事態に陥ってしまう可能性も否定できません。大変残念なことです。
数学IIIでは教科書内容の理解を最優先するべきでしょう(これは数学IIIに限った話ではありませんが)。
昨日は極限について扱いました。たまにはどういう感じの授業をしているのか紹介しておきます(笑)
数学IIIで基本となる極限は
\begin{align*}
&\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1\\
&\lim_{x\to0}\frac{e^x-1}{x}=1\\
&\lim_{x\to0}\frac{\log(1+x)}{x}=1
\end{align*}
の3つです。
これを丸暗記している人も多いようですが、覚えるのであれば少し考えて覚えておきたいところです。
やはり、グラフとセットにして覚えるのが基本です。そこに微分係数の話も絡めると、より良いでしょう。

$f(x)=\sin x$ の $x=0$ における微分係数(接線の傾き)は1なので、微分係数の定義から
$$\lim_{x\to0}\frac{\sin x-\sin 0}{x-0}=\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1$$
となります。
グラフを見て確認しましょう。

$f(x)=e^x$ の $x=0$ における微分係数(接線の傾き)は1なので、同様に
$$\lim_{x\to0}\frac{e^x-e^0}{x-0}=\lim_{x\to0}\frac{e^x-1}{x}=1$$
となります。

$f(x)=\log x$ の $x=1$ における微分係数(接線の傾き)は1なので、これまた同様に
$$\lim_{x\to1}\frac{\log x-\log 1}{x-1}=\lim_{x\to1}\frac{\log x-0}{x-1}=1$$
これだけ $x\to 1$ になってて気持ち悪いので、$t=x-1$ としておきましょう。
$x\to 1$ のとき $t\to 0$、$x=1+t$ となるので、結局
$$\lim_{x\to1}\frac{\log x-0}{x-1}=\lim_{t\to0}\frac{\log(1+t)}{t}=1$$
となります。
これを1回自分の手で確認しておけば印象的に記憶できるのではないでしょうか。
忘れてもきっとグラフから導けるはずです。
ちなみに、$\displaystyle \lim_{x\to 0}(1+h)^{\frac{1}{h}}=1$ も3つ目の極限の式から導くことができます。
人間というのは忘れる生き物なので、忘れることを前提に勉強しなくてはなりません。
とくに数学では、記号的な暗記をしたところでその中身が理解できていなければすぐに忘れてしまうのがふつうです。
「完璧に覚えよう!」などと言って、この極限の式を紙に50回書いてもまったく意味はありません。
きちんと自分の頭と手を使って「そういうことか!」と納得しながら覚えていくことが大事なのです。
数学IIIは難しいという人が多いようですが、問題集に手を出す前に教科書内容を掘り下げてみることをオススメします。
いろいろな発見があるでしょうし、問題を考えるときに有効な事柄がたくさん見つかります。
気をつけたいのは、上で紹介したようなことは残念ながら教科書には書かれているとは限らないということです。
こういう部分は、教科書内容を詳しく解説した参考書(ほぼ絶滅しました)などを読み込むか、数学に詳しい指導者に教わるしかないでしょう。
本来は学校の授業で教科書をきちんと掘り下げるべきなのですが、受験対策の方が大事だという高校が増えているようです。
その結果、非常に浅いところで理解が止まってしまっている学生が増えています。
これはとても残念なことです。