この前、対数の不等式の問題をやったのだけど、理解できていない生徒が案外多かった。
対数の不等式の問題だったんだけど
$1<a$ のとき $\log_aA<\log_aB \Longleftrightarrow A<B$
が成り立つことをよく理解できていない感じの人がちらほらいた。
高3から入塾してくる生徒は、意外とこういう基本的な部分の理解が欠けていることが多い。
上の定理をただ記憶しているという生徒も少なくないというのが実情である。底を確認して、上の不等式に当てはめて考えているのである。実感として「こういう感じのことだな」というものが全くなく、ただ式だけが存在している感じなのである。
これは、グラフを考えたら当たり前のことを言っているのだ。
$1<a$ のとき $y=\log_ax$ のグラフは下のようになる。
このとき、$x$ の値として $A$、$B$ を $A<B$ となるようにとる。
そうすると、$A<B$ である限り $\log_aA<\log_aB$ になることが実感できるはずである。
不安なら、$A<B$ を満たすようにいくつか $A$、$B$ をとってみるといい。
逆に、$\log_aA<\log_aB$ から $x$ を考える場合にも、必ず $A<B$ となることが分かるだろう。
説明すると「そういうことか!」とすぐに納得してくれる。
教科書にも載っている話のはずなのに、どうしてこんな基本的なことが分かっていないのだろう。
以前はそんなふうに思っていたけど、進学校の授業の実態が少しずつ分かってきて驚くこともなくなった。
試験で点を取るためには、解き方を覚えて、それを使って問題演習をたくさんやる
こういう授業がまかり通っているわけである。そりゃあ数学が苦手になったり、できないっていう生徒が増えるわけだ。
生徒は生徒で数学の「点数」ばかりを見ているものだから、点数が上がる授業を良い授業といい、そういう授業をしてくれる先生を良い先生と評価する。
こうして、気がつかないうちに「本物」が消えていくのである。
でも、本物の力が必要となったときにはもう手遅れだよ、という事態が起こるのである。
こういう話は、勉強とか受験界隈に限った話ではないと思う。
もっと、きちんとした目で物事を見て評価するということが必要なんじゃないだろうかと思ったりする。