数学の指導において「問題集を繰り返しやる」ことを推奨する人が意外にたくさんいる。
代表的なのは「チャート式○周マン」である。高校の数学教師にもそういう人は少なからずいて、夏休みの課題にそういう周回課題が出ている学校もある。
多分、そういう指導者は実際に問題集を繰り返すという方法で数学をやってきたのだろう。そして、それはそれで1つの方法だと思うし、実際にその方法で試験をクリアすることは可能であるとも思う。
ただ、個人的には数学の勉強に関して「問題集を繰り返しやる」ことを推奨することはない。まあ、やりたければやれば、くらいの立場である。
これは数学という科目に対する認識の違いなのかもしれないし、経験の違いなのかもしれない。どっちが正しいか、ということは分からないが、自分としては、数学を楽しくそして興味を深めながら勉強してきた。そういう部分を少しでも生徒と共有できたらいいなあ、という感じなので、あまり自分の方法を強制するようなことはしない。
もちろん、英単語やネクステなどの類は覚えることが目的になるから、繰り返しやるということを前提に指導するものもある。
ただ、数学もそれと同列にしてしまうのは非常に違和感を感じるし、正直どのような意味があるのだろうと思ってしまう。
一般的には「解き方を覚える」という感じのことが言われているし、ググったらこんなページが出てきたりする。
苦手な人でも大学受験で合格点が取れる数学勉強法を解説。偏差値44から京都大学に合格した筆者が伝える「予備校に行かずに参考…
部分的には納得できるものもあるが、ちょっと何言ってるか分かんないという部分もたくさんある。「右脳」なんて言葉が出てきたら胡散臭いことこの上なしである。でも、数学が苦手な人は、こういうのを鵜呑みにしてしまうこともあるかも知れない。
1つ確かなことは、これまでの指導経験から「繰り返しやることで理解が深まる」というのはとても疑わしいことであるということだ。繰り返しやることで理解が深まるという人は、そもそもの能力が高い場合が多いし、繰り返したことが成績につながっているというわけではないように思う。
逆に数学で躓いている人は、繰り返しやったところで理解はほとんど深まらないし、結局は解法のアウトラインだけを記憶することになってしまう場合が多いように思う。そして、「繰り返す」ことが目的となってしまい、結局いわゆる「問題は解けるけど実は何も分かってないマン」になってしまうわけだ。
そもそも数学の問題をやるときは、初見でどこまで考えるかが重要であって、2回目を前提にしてやることに意味はない。繰り返しを前提にやる場合は、一度答えを見てしまったらその問題の価値はほとんどなくなってしまうし。
そんな方法よりも、もっと1問にアホかってくらい時間かけて取り組む方が実力がつくように思うし、繰り返すくらいなら、もっといろいろな問題に取り組んだ方がためになるんじゃないかなあと思ったりする。そもそも、繰り返しやるって飽きない?って話だし。
なんだか、この「問題集は繰り返すもの」みたいな指導が数学でも主流になってきていることは考えものだと思う。試験をクリアするためだけに数学をやるのであればそれは合理的な方法かも知れないが、だったら数学なんかやらなくていいじゃん、という思いがあるのである。
この辺りの話も、そのうちコラムにまとめてみようかな。全然更新できてないけど。