第1回金沢市統一テスト 2019(数学)
まだ塾生全員から話を聞けてはいませんが、数学はそこまで難しくなかったという声が多かったですが、時間的に厳しかったということはみんなが口を揃えて言っておりました(笑)
昨年と同じようなセットで難易度的には少し易しくなったかなあという印象です。しかし、生徒が言っていたように時間的にはかなりキツい問題構成であるため、平均点(昨年度は50点でした)などは大きく変動しないのではないかと思われます。
概観
いわゆる受験テクニックや高度な知識は必要なく、教科書で扱う基本的な知識が正しく身についていればきちんと点数が取れる問題ばかりでした。以前の統一テスト(10年ほど前ですかね?)は難易度や傾向がバラバラで「出たとこ勝負」みたいな感じもありましたが、最近はよく練られた良問揃いのテストで、難易度も程よい感じのテストになっています。そのため、復習をしっかりやれば確実に実力アップにつながるでしょう。
なお、問題数としては、大問8・小問25前後という昨年とほぼ同等のセットだったわけですが、時間的には厳しいセットだったように思います。焦ってしまってミスをしてしまったという人も多いかもしれません。入試でも言えることですが、解くのがあまり速くないという人は、スピードを追い求めるのではなくしっかりとできる範囲で確実に解くことを心がけておきましょう。
問題の難易度的には比較的易しめの問題が多かったのですが、問題数を考慮すると昨年とあまり変わらない難易度でした。
大問1
大問1は計算や基本的な知識を問う小問集合でした。あまり時間をかけずに終わらせたいところです。
(1)については、基本的な計算のルールが身についていれば問題なく解けるはずです。しかし、「テストになると緊張してミスをしてしまう!」という人もいると思います。そういう場合に、途中式を丁寧に書くというのは一般的に言われることですが、どちらかというと暗算で計算する練習をしておくほうが良いと思います。もちろん、計算のルールそのものが頭に入っていない人は教科書からやり直しておきましょう。
とくに間違いが多くなるのは、エの文字を含んだタイプの通分とオの根号を含んだ計算です。
エの$\displaystyle \frac{3a+b}{4}-\frac{2a-b}{3}$ では分子は1つの数のように考えるので、$\displaystyle \frac{(3a+b)}{4}-\frac{(2a-b)}{3}$ のように見えて欲しいところですね。通分すれば
$$\frac{3(3a+b)-4(2a-b)}{12}$$
となります。あとは分子の計算をやるだけです。
オについては次のように計算をした中学生が多かったのではないかと思います。
\begin{align*}
\sqrt{12}-\frac{9}{\sqrt{3}}&=2\sqrt{3}-\frac{9\sqrt{3}}{3}\\
&=2\sqrt{3}-3\sqrt{3}\\
&=-\sqrt{3}
\end{align*}
もちろんこれで問題はありませんが、有理化は最後にやっておけばいいので
\begin{align*}
\sqrt{12}-\frac{9}{\sqrt{3}}&=\frac{6-9}{\sqrt{3}}\\
&=-\frac{3}{\sqrt{3}}\\
&=-\sqrt{3}
\end{align*}
とするほうが個人的には好みです。というよりも、$\displaystyle \frac{9}{\sqrt{3}}$ はこのままでも $3\sqrt{3}$ に見えて欲しいです(笑)
(2)は解の公式を利用すれば簡単に解は求まりますが、それではあまりに芸がないので平方完成から考えてみるのも思考力アップにつながります。下のような変形で求めるのは手間がかかって現実的ではないかもしれませんが、今後、非常に重要になるんですよ!
\begin{align*}
&\left(x+\frac{5}{2}\right)^2-\frac{25}{4}-2=0\\
&\left(x+\frac{5}{2}\right)^2-\frac{33}{4}=0\\
&\left(x+\frac{5}{2}\right)^2=\frac{33}{4}\\
&x+\frac{5}{2}=\pm\frac{\sqrt{33}}{2}\\
&x=\frac{-5\pm\sqrt{33}}{2}
\end{align*}
(3)は2つの平行線があるため「同位角や錯角が有効かな?」くらいには考えて欲しいです。どちらを考えてもいいですが、ここは同位角と三角形の外角を考えれば簡単に求まります。
(4)については、散々やらされた人も多いと思いますが(笑)、きちんとグラフを描いて「指定された範囲で切り取られたグラフがどうなっているか」を考えれば問題なく解けたでしょう。
(5)も単純にデータの個数を考えていけばすぐに求められます。「中央値って何?」という人は教科書へGO!
大問2・確率
大問2は確率の問題でした。ぱっと見は「何だか難しそう!」という問題ですが、実際には2つのサイコロを投げるという単純な問題です。
中学生の確率の問題というのは、「実際に数え出して考える」という非常に基本的かつ重要なことを問われる問題が多いので、見た目に惑わされることなく積極的に挑戦してみて欲しい分野です。
今回の問題では、以下の情報を押さえられていたかどうかを確認しておきましょう。
- 大小2つのサイコロを投げる
- 出た目の数の和を考える
- 駒の動き方のルール
駒の動き方は、出た目の数の和によって以下のようになります。
数の和 | 0 | 1 | 2 12 | 3 11 | 4 10 | 5 9 | 6 8 | 7 |
マス目 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
このように見れば、数の和が0や1になることはないため(最低でも数の和は2ですよ!)0や1のマス目に駒が来ることはありません。
2つのサイコロの目を考えるときは、表を作って考えると簡単です。
この表を何度も使いまわしていますが、そのくらいよく出てくる表です! 全体で36通りになります。
(1)では、駒が7のマスに移動する確率です。これは数の和が7になるときですから、以下の水色の部分が該当します。したがって、全体36通りのうち、上の6通りが該当するので求める確率は
$$\frac{6}{36}=\frac{1}{6}$$
となります。
(2)は、駒が移動する確率が最も大きいマスを考えるわけですが、これも数えれば難しくありません。結局数の和が6または8のときに止まる6のマスが最も大きくなります。下の緑色の10通りが該当するものです。
よって、求める確率は
$$\frac{10}{36}=\frac{5}{18}$$
大問3・方程式
難易度 易
第3問は方程式の問題でした。どの問題集にも載っていそうな問題だったので、「いける!」と思った人は多かったのではないでしょうか。
方程式の問題では、式がどうしたこうしたよりも、まずは情報を整理することが先です。
- 昨年の参加人数は75人
- 今年はAが10%減、Bは20%増
- 全体は昨年より3人増
これくらいのことは把握してほしいところですね。求めるものは「今年」の参加人数ですが、これは昨年の人数を基準とした情報が与えられているため、昨年度の人数を文字で置いて考えていくほうが簡単かと思います。
昨年のAの参加者を $x$、Bの参加者を $y$ とすると、今年のAの参加者は $0.9x$、Bの参加者は $1.2y$ となります。まずはここまでをきちんと把握しておきましょう。
なお、10%減だとか20%増などがよく分からないという人は、方程式とは別に割合について早急に初歩からやり直すことをお勧めします。
問題の条件から
\begin{align*}
\begin{cases}
x+y=75\\
0.9x+1.2y=78
\end{cases}
\end{align*}
とする人もいたと思いますが、値が大きくなるので少々面倒です。ここは「全体で3人増えた」をよく考えて
\begin{align*}
\begin{cases}
x+y=75\\
-0.1x+0.2y=3
\end{cases}
\end{align*}
とするほうが計算は簡単になるでしょう。
あとはこれらを解いて、$x=40$、$y=35$ が得られます。ここで安心して終わってしまうと中学生時代の私と同じですよ(笑)
求めるのは今年の人数で、文字で置いたのは去年の人数ですから、Aが $0.9\times 40=36$、Bが $1.2\times 35=42$ となります。
大問4・関数
難易度 標準
大問4は関数の問題でした。ちょうど石川県総合模試でも似たようなダイヤグラムの問題がありました。
塾長今回の模試の問題の中でも復習しておきたい問題No.1が大問3の関数の問題です。問題の設定がかなり面倒になっていますが、グラフをうまく利用して問題を視覚的に捉えていく練習をしておきましょう。こうしたタイプの問題は入試でも頻[…]
ダイヤグラムの問題に限らず、関数の問題で大事なことはグラフを利用しながら視覚的に状況を把握していくことです。
そのため、グラフを描くのが苦手という人やグラフから式を求めるのが苦手だという人は、こういう問題の前にもっと簡単な問題を用いて、グラフを描く・読み取る練習をしっかりとやっておきましょう。話はそれからです!(笑)
まずは与えられたグラフを確認しておきましょう。
(1)は、太郎さんが家からスーパーまで行くときの速さを求める問題です。上のグラフでは原点から、グラフが最初に折れる $(15,\ 1200)$ の点までの話です。このとき、グラフから太郎さんは一定の速さで歩き、15分で1200m進んでいることがわかります。分速というのは1分でどれだけ進むかを表したものですから、15分で1200m進んでいるなら、1分で80m進んでいることになりますね。つまり分速80mということです。
(2)のスーパーを出発してから駅に着くまでというのは、グラフでいうと $(25,\ 1200)$ と $(40,\ 2100)$ の線分を表します。2点を通る直線の式を求めればOKです。
このとき、$y=ax+b$ のようにおいて上記の点の値を代入して計算する人もいますが、できれば暗算でサクッと求めたいところです。せっかく速度の問題をやっているわけですし。ここも(1)と同じような考え方で、15分で900m進んでいるから分速60mであるとサクッと求められるようになっておきましょう。また、ダイヤグラムの問題では直線の傾きと速度が一致するということをきちんと理解しておきましょう。とりあえず、この直線は
$$y=60x+q$$
のようになることが分かります。あとは $(40,\ 2100)$ を通るので
$$2100=60\times 40+q$$
から、$q=-300$ くらいは暗算で求められるでしょう。$y=60x-300$ が求める式となります。
(3)はいろいろと面倒な情報が与えられていますが、これも最終的にグラフを描くことを目標に考えていくといいでしょう。
太郎さんの兄は、太郎さんが家を出発してから15分後に家を出発するので結局10:15に家を出たことになります。そして、最初は分速60m、途中から分速150mで走って太郎さんと同時に駅に着きます。これを大体の感じでグラフにしてみると、下の赤いグラフのようになります。
知りたいのはグラフが折れ曲がる部分の時刻です。とりあえず、この時刻を兄が出発してから $t$ 分後と考えていきます。最初からの時刻にするといろいろ面倒なので、こういう部分の扱いは柔軟に対応できるように準備しておきましょう。
兄が家から駅に着くまでトータルで25分かかっているため、分速60m歩いた時間を $t$ 分とすると、分速150mで走った時間は $25-t$ 分となります。そして、家から駅までは2100mあるので
$$60t+150(25-t)=2100$$
となります。これを解くと、$\displaystyle x=\frac{55}{3}$ となります。問題は、これが「分」であることです。答えは秒まで求める必要があるので、そこまで求めなければなりません。
これは、$\displaystyle \frac{55}{3}=18+\frac{1}{3}$ と変形でき、さらに $\displaystyle \frac{1}{3}$ 分が $20$ 秒であることを(アナログの時計を思い浮かべてくださいね!)考えると、10時15分から18分20秒後、すなわち10時33分20秒となることが分かります。
大問5・作図
難易度 易
大問5は作図でした。作図の問題ではコンパスや定規をどう使うかを考える前に、まずは図形的な特徴をきちんと考えていくことが大切です。
今回の問題は、$\mathrm{P}$ が満たす条件として
- $\angle\mathrm{PAB}=\angle\mathrm{PBA}$
- $\mathrm{P}$ は $\mathrm{OX}$、$\mathrm{OY}$ の両方に接する円の中心
というのがあるので、まずはこのことをきちんと考察しておきましょう。
$\angle\mathrm{PAB}=\angle\mathrm{PBA}$ については、二等辺三角形ができあがるので、$\mathrm{PA=PB}$ が分かります。つまり、$P$ は2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ からの距離が等しい点の集合だと捉え直すことが可能なわけです。
次に「$\mathrm{P}$ は $\mathrm{OX}$、$\mathrm{OY}$ の両方に接する円の中心」についてですが、これも図形をイメージすることからスタートしてみてください。円において重要なのは中心と半径です。中心は $\mathrm{P}$ ですが、半径はどうなるでしょう? $P$ が2直線 $\mathrm{OX}$、$\mathrm{OY}$ から等距離にある点の集合になることがつかめれば解けたも同然です。
作図の問題では、コンパスが主役となります。コンパスを用いてできることは「等しい距離」をとることです。上記の2つの条件も結局は2つの「等距離の条件」へと置き換えられることを意識しておいて欲しいと思います。
なお、「2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ からの距離が等しい点の集合」はABの垂直二等分線であり、「2直線 $\mathrm{OX}$、$\mathrm{OY}$ から等距離にある点の集合」は $\angle \mathrm{XOY}$ の二等分線となります。
大問6・規則性
難易度 易
大問6は規則性の問題でした。
というわけで、規則性の問題でも最初にやることは1つです。それは
です。ほとんどの問題が、こうした具体例を作るところからスタートしているはずです。
今回も、(1)で5番目の図形がどうなるかを聞かれ、(2)で6番目がどうなるかを聞かれます。問題文には3番目までしかないので、4番目、5番目、6番目を実際に自分で描いてみて考えるようにしましょう。
(1)では、実際に数えてみると15個の正六角形が含まれていることが分かります。
(2)も同じように、実際に目で見て解くと、52cmとなることが分かります。
そして、(3)ではこれらを一般化して考えていくことになります。
(1)、(2)を具体例として見ると、どのような規則が浮かび上がってくるでしょうか。これは、表を利用して考えてみましょう。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | … | n | |
正6角形 | 3 | 6 | 9 | 12 | 15 | 18 | 3n | |
周の長さ | 12 | 20 | 28 | 36 | 44 | 52 | 8n+4 |
今回は秋の長さが関係してくるので、実際に6番目までの周の長さを求めて表にしてみましょう。このとき、カンの良い人は「あ!」と気づくかもしれません。そうでない人も慌てずに。
実際に書き出すと、12、20、28、36、44、52、…と推移していきます。このとき、隣同士の数の関係をよく考えてみてください。8ずつ一定の割合で増えていくことが分かると思います。したがって、nの1次関数となることをまずは意識しておきましょう。
この「一定の割合で増える」ということが、1次関数や直線と繋がらない人が結構多いのですが、そういう人は本当に数学の勉強ができているかどうか、表面的な解き方の習得に終始していないかをよく考えてみてください。
当然、1次関数なので変化の割合としては8nとなります。あとは、nが1のときに12となることを考えて(別にnが2のときでも3のときでもいいです)
$$8n+4$$
で表されることが理解できればOKです。実際に、nが4や5や6でも成り立っていることが分かるでしょう。
こうした考え方がベースにあってきちんと理解できているという人は、発展的な内容として「数列」というものに触れてみることをお勧めします。しかし、最初に述べたように「点数を取るため」の方法として数列をやっているとしたらそれは「害悪」になる可能性が高いです。まずは、数学として当たり前の姿勢を作り上げることを忘れないようにしてください。
大問7・平面図形
難易度 標準
大問7は平面図形です。真面目に最初から解いた人は、この問題前後で時間切れになったという人もいるかもしれません。しかし、平面図形と空間図形は入試にも必ず出題される問題なので、復習をバッチリやっておきましょうね!
(1)は証明問題でした。証明問題もアレルギーを誘発する問題のようですが、中学数学の場合は図形の証明問題が中心になるのでそこまで難しい証明問題はありません。苦手な人は、証明ではなく図形の知識が曖昧であることが多いので、この際にいちからやり直しておきましょう。
まずは結論の確認です。$\triangle\mathrm{ABE}\equiv \triangle\mathrm{CFE}$ が言えればOKです。
次に与えられた条件を確認しましょう。
- 長方形 $\mathrm{ABCD}$
- $\angle\mathrm{DAC}=\angle\mathrm{EAC}$
- $\mathrm{AF}\perp\mathrm{CF}$
また、これらの条件からさらに引き出せる情報を考えてみましょう。
長方形 $\mathrm{ABCD}$ からは、
- $\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{BCD}=\angle\mathrm{CDA}=\angle\mathrm{DAB}=90^\circ$
- $\mathrm{AB}//\mathrm{DC}$、$\mathrm{AD}//\mathrm{BC}$
などが分かります。
さらに、$\mathrm{AD}//\mathrm{BC}$ より $\angle\mathrm{DAC}=\angle\mathrm{ECA}$ となります(錯角)。したがって、$\angle\mathrm{ECA}=\angle\mathrm{EAC}$ がいえて $\triangle\mathrm{EAC}$ は二等辺三角形だと分かります。このあたりまで来たら見通しがかなり良くなってくるのではないでしょうか。
なお、もう1つ大事なこととして結論の1つ手前をよく考えるということが挙げられます。
$\triangle\mathrm{ABE}\equiv \triangle\mathrm{CFE}$ を言えばいいのですが、
- $\angle\mathrm{ABE}=\angle\mathrm{CFE}=90^\circ$
- $\angle\mathrm{AEB}=\angle\mathrm{CEF}$(対頂角)
はすでに明らかです。したがって、直角三角形の合同をいうために斜辺が等しいことをいえばいいと気づけたらOKです。これも先ほどの $\triangle\mathrm{EAC}$ が二等辺三角形となることから証明できますね。
(2)は(1)の考察がしっかりとできていれば問題なく解けたのではないでしょうか? $\angle\mathrm{EBF}$ を求めますが、これは(1)の結果から $\triangle\mathrm{EBF}$ が二等辺三角形になることが分かります。さらに、$\angle\mathrm{BEF}$ は $36^\circ+90\circ$で求められるので、$\angle\mathrm{EBF}$ もすぐに求められるはずです。
$$\frac{180^\circ-126^\circ}{2}=\frac{54^\circ}{2}=27^\circ$$
ですね。
(3)は面積の問題です。これも(1)、(2)の流れが理解できていれば、ほぼ「見えちゃってます!」という問題です。
$\mathrm{AB}=4$、$\mathrm{BE}=3$、$\mathrm{EC=5}$ が与えられていますが、$\mathrm{AE=5}$、$\mathrm{EF}=3$ もすぐに分かります。ここまで分かると、あとは面積の典型的な考え方を利用していきます。
面積は何によって決まるのか。何かが変わったときに面積はどう変化するか。そうしたことを分かっているということが、面積を理解しているということです。面積公式を知っているとか、等積変形を知っているとか、そういう表層での理解で止まっている人は要注意です。
面積は基本的に底辺と高さという2つの要素によって決まります。したがって、面積の比較をする場合に底辺も高さも異なる図形の面積を比較するのは大変になります。そのため、どちらかを固定できるような視点をもつことが大切となります。三角形の場合、高さが等しくなるように底辺を考えていくと、底辺の比がそのまま面積の比となってくれるので計算がラクになります。たとえば、$\triangle\mathrm{ABE}$ と $\triangle\mathrm{AEC}$ の面積の比は、$\mathrm{BE:EC}$ と等しくなります。(3)はこの考え方をガンガンに使っていく問題です。
ここではまず長方形の面積が求められるので、そこからスタートします。長方形の面積は
$$4\times 8=32$$
です。また、
$$\triangle\mathrm{ABC}=32\times \frac{1}{2}=16$$
さらに、
$$\triangle\mathrm{ABE}=16\times \frac{3}{8}=6$$
したがって、
$$\triangle\mathrm{BFE}=6\times \frac{3}{5}=\frac{18}{5}$$
となります。最後の部分がちょっとアレ?っとなるかもしれませんが、比を意識できていれば理解できるはずです。
大問8・空間図形
難易度 標準
最後の大問8は空間図形でした。空間図形では「立体の切断」に関する問題がよく出題されますが、これがうまくイメージできないという人が多いようです。これについては、いろいろな記事で指摘していますが、実際に立体のモデルを作って切断してみることが近道でしょう。あれこれと頭で考える前に、実物で実感を得ることが大切です。とはいえ、今回の問題はそこまで面倒な切断は出てこなかったので、難しいと感じる人は少なかったと思います。立体も対称性を活かせる立方体でした。
(1)のなじれの位置は、空間図形の知識でもよく問われるものです。2本の直線を含む平面を作ろうとすると、文字通り平面が「ねじれ」てしまうような位置関係にあるものを探していけばOKです。CG、DH、FG、EHの4本が該当します。
(2)の問題は表面積の差を求める問題です。こういう問題で、真面目に表面積を求めようとする人が案外います。もちろん、その姿勢は悪くありませんが「ん〜面倒だなあ」くらいのことは感じておきましょう(笑)
面積の差を考えれば良いだけなので、2つの図形に共通する部分は考慮する必要はありません(差はゼロなので)。たとえば、$\triangle\mathrm{BCD}$ は両方の立体の表面積に含まれるため、無視してOKということになります。
また、$\triangle\mathrm{BFG}$ と $\triangle\mathrm{BCG}$ などは全て同じ面積となることにも着目しておきましょう。
したがって、三角錐BCGDの方は
- 三角形BCG、BCD、CDG
- 三角形BCD
また、ABD-EFGHの方は
- 三角形ABD、BFG、DGH
- 三角形BCD
- 四角形ABFE、ADHE、EFGH
で構成されています。つまり、2つの立体の表面積の差はABFE、ADHE、EFGHの3つの四角形の面積分となります。
これは、1つの四角形(正方形です)は $6\times 6=36$ なので、$36\times 3=108 \mathrm{cm}^2$ となります。
(3)は立体をいろいろな角度から観察できる「目」を持っているかどうかで大きく変わってきます。与えられた図は1つしかありませんが、これを頭の中で動かす(あるいは図を描き直す)ことができるようになっておきたいところです。見取り図だとか展開図などをやったのは、こうした図形の考察のための準備です。もちろん、それらだけでは足りないのでいろいろと図を描く練習は積んでおきましょう。
求める立体はとても複雑そうに見えますが実に単純な図形となります。これは立方体から、三角錐BCGDと同じ形の立体(三角錐ABDE、BEFG、DEHG)を4つ引いたものとなります。これを考える際に、対称性というものを強く意識して欲しいですね(立体を眺める位置を変えたら文字だけが入れ替わって形は全く同じように見えます!)。
というわけで、まずは三角錐三角錐BCGDの体積が
$$\frac{1}{3}\times \left(\frac{1}{2}\times 6\times 6\right)\times 6=36$$
となります。これを立方体から4つ引くことになるので
$$6\times 6\times 6-4\times 36=36\times 2=72$$
が求める立体BDEGの体積となります。
解いてみての感想
というわけで、仕事の合間に時間を見つけてチマチマ解いてみましたが、やはり良い問題が多かったなあという印象です。
生徒の話では月曜日に早速答案が返却されているようです。塾によっては「簡単だった」とか「平均点がかなり上がる」という予想を出しているところもあるかもしれませんが、そういうものはあまり気にしなくていいです。できた人はできた人で自信を持てばいいし、できなかった人はできなかった人で、これからどうするかを考えればいいだけの話です。分野がどうだ、対策がどうだ、簡単だった難しかった、平均点が合格ラインが云々、正直そんな話はどうでも良くて(笑)数学としてどういうことを考えていくべきかということをきちんと分析してもらいたいというのが私の本音です。
金沢市統一テストがどういう趣旨で作成されているのか詳細は知りませんが、単に面倒なだけの問題や表層だけの難しさしかないような問題は少なく、きちんとした数学の問題になっているのではないかと思いました。統一テストの問題が石川県総合模試の問題と似ているという人もいますが、個人的には統一テストの方が問題の質が高いなあと思います。難しい問題だから良い問題ということではありません。また、分野や聞かれる内容が同じだから「似たような問題」というわけでもありません。他教科のことは詳しく知りませんが、石川県総合模試の数学はあくまでも入試対策の一環としての模試という位置づけであり、試験対策のための問題が多いように思います。そういう意味では、統一テストの問題の方がきちんとした基礎力を問う問題が多いので、復習にはしっかりと時間をかけるといいのではないかと思います。その上で冬休みにどういうことをすべきかを考えていきましょう。