【塾生必読】第6回石川県総合模試の数学を解いてみた【2019】

塾長
第6回石川県総合模試が実施されました。今回はとくに「数学が難しかった」という声をたくさんいただいたので、塾長が解いてみた感想と簡単な解説をアップしていきます。第5回石川県総合模試は金沢市統一テストと被っていたので「解いてみた」をやりませんでしたが、何件か質問をいただいたので、今回は真面目にやります(笑)

いよいよ12月ということで、今回の総合模試は今後の進路決定においても重要な意味を持つと思われます。とは言っても、今回の成績だけを見て判断するのはダメです。テストの難易度はその度に変わってくるので、数学が比較的簡単だった場合(今年は第1回の金沢市統一テストがそういう感じですね)と難しかった場合とを見比べながらになると思います。終わった直後でまだいろいろと分からないうちから「出来なかったから志望校を下げよう」などという悲観的な考えにならないように注意してくださいね!

概観

全体的な難易度 

大問数7・小問数22ということでセットとしてはいつもと同じような問題構成でした。ここが大きく変わることはないでしょう。そして、相変わらず時間的にはかなり厳しいテストでした。完答できる生徒自体が非常に少ないと思われます。

小問集合以外での出題は、規則性、2次関数、方程式、作図、平面図形、空間図形という入試頻出の内容となっています。どの問題も1つ1つ時間をかけてやれば解けるという状態にはしておきたい問題です。ただし、50分という試験時間の中で解くことを考えた場合には、問題の取捨選択も大切になってきます。そのあたりは、模試の受験経験がある人とない人で差がつく部分でしょう。

各問題とも高難度の問題というわけではありませんが、標準レベルからやや難レベルの問題が揃っているため、全体としてはかなり難しく感じられたのではないかと思います。

大問1

内容 小問集合

難易度 

上位校を狙う人が大問1で満点を目指すのは当たり前の範囲ですが、数学が苦手だという人もまずは大問1で満点を取るための勉強をきちんとやりましょう。ここでボロボロと点数を落としているようでは、他のところをいくら勉強しても無駄なので、今回のテストで7割取れなかったという人は、単問形式の問題集などを利用して復習をやっておきたいところです。

(1)のエ・オあたりは計算のミスが目立つ問題なので、計算の手順や途中式をどこまで書くかなど、きちんと自分に合った対策をやっておきましょう。また、(2)の2次方程式では「解の公式」を用いる問題がよく出題されますが、それ以外の計算方法も含めて(できれば解の公式を自分で導く練習も!)よく練習しておきましょう。

(3)は確率の問題ですが、中学生の確率の基本は数え出して考えるです。「全部で何通りあるか」が分かれば必ず解けるので、まずは数えるということをきちんとやる練習をしてください。(4)、(5)は資料・統計の範囲ですが、平均や中央値、最頻値などの用語の定義が曖昧な生徒が多いので、きちんと確認しておくことが大切です。

単問形式の問題のトレーニングには以下のような教材があります。

実際に、書店などで中身を確認してみてくださいね。

 

大問2(復習オススメNo.3)

内容 規則性

難易度 やや難

大問2は規則性の問題でした。問題文が長く「ちょっと何言ってるか分かんない」となった人も多かったかもしれません。個人的には、純粋に数学の力を測ることが目的であるならば、こうした長すぎる問題文は模試や入試などでは必要ないのではないかと思っています。一見すると面倒な問題に見えますが、実際に解いてみるとものすごく単純な問題です。

塾長
まあ、こうした長い文から必要な情報を引っ張ってくる能力も大切ですが、それは数学と違う場面でやるべきではないかと私は思っております。

問題としては $n=4$ のときと $n=5$ のときの状態が例示されています。そして(1)では $n=6$ の場合を作れという問題です。実際にルールを確認しながら、それにしたがって作ってみることが大切です。

まず、$n=4$ の場合は以下のようになります。

次に、$n=5$ の場合は以下のようになります。 ここから、$n=6$ の場合を指示通りに作ってみると以下のようになります。

$n=6$ の場合は $6\times 6=36$ 個のマスが現れます。この数の列に含まれる最大の数は、マス目の数の個数($n^2$)と一致することを押さえておきましょう。また、$n$ が偶数の場合と奇数の場合で色付きのマスの配置が異なることも確認しておきましょう。

ここでは大きい方から3番目の数は、表から明らかなように34となります。

(2)は(1)で $n^2$ が最大の数となることが分かっていますが、偶数と奇数の場合で変わってくることを考えなくてはいけません。

まず、簡単な $n$ が偶数の場合を考えてみます。大きい方から順に4つの数を取り出すと

$n^2$, $n^2-1$, $n^2-2$, $n^2-3$

という4つの数が得られます。これらの和が664になるので、計算としては

$$n^2+(n^2-1)+(n^2-2)+(n^2-3)=664$$

となります。整理すると、$\displaystyle n^2=\frac{335}{2}$ ですが、これを満たすような自然数 $n$ は存在しないため不適となります。

次に、$n$ が奇数の場合を考えてみましょう。このとき、奇数の具体例が1つしかないため $n=7$ の場合を作ってみて、$n=5$ の場合と比べながら考えることが大切です。

$n=5$ の場合、大きい方から4つの数をとると、25、23、21、19となります。

$n=7$ の場合、大きい方から4つの数をとると、49、47、45、43となります。

マスの進み方を考える(これをきちんと確認しないとダメです!)と、最大の数から降順に4つの奇数を取れば良いことがわかります。

したがって、$n^2$、$n^2-2$、$n^2-4$、$n^2-6$ という4つの数の和を考えて

\begin{align*}
n^2+(n^2-2)+(n^2-4)+(n^2-6)&=664\\
4n^2&=676\\
n^2&=169
\end{align*}

したがって、$n=13$ となり奇数であることを満たします。以上から、求める $n$ の値は13であることが分かります。

塾長
この手の問題で大事なことは「規則を数式で表すこと」だと思っている人が多いのですが、実際には規則が見えるまで具体例をいくつも作ってみるということです。こうした地道な作業を「数学的ではない」なんて思っている人が多いのですが、それはとんでもない間違いです。そうした勘違いを抱えたまま高校生になってしまわないように気をつけてほしいところです。

規則性の問題は高校数学にもつながる重要な問題です。しかし、上で述べたように単に点数を取るための方法だけを覚えるような行為は絶対に避けてほしいところです。できれば、下のような本で「規則」から見えてくる数学の面白さを味わっておいてほしいなあと思います。

大問3(復習オススメNo.1)

内容 関数

難易度 標準

大問3は2次関数のよく出題されるタイプの問題でした。たくさん問題をやった人は「あ、これ進○ゼミでみた問題だ!」となった人も多かったかもしれません(笑)

関数の問題はいつも言っていますが「グラフ」が重要です。グラフをかきながら考える習慣をつけておきましょう。また、与えられた条件から引き出せる情報は出来る限り事前に引き出しておきましょう。

塾長
備えあれば憂いなしですね(笑)
※これ言いたかっただけ説あり

この問題では、与えられる情報がかなり多いのできちんと整理をしておきましょう。

まずは、2つの関数が、① $y=x^2$ と ② $\displaystyle y=\frac{4}{9}x^2$ です。
そして、点 $\mathrm{A}$ は①上の点で $x=-4$ であることから、$\mathrm{A}(-4,\ 16)$ が分かります。
また、点 $\mathrm{A}$ と点 $\mathrm{B}$ 、点 $\mathrm{C}$ は $y$ 座標が共通($y=16$)となることも押さえておきましょう。
さらに、点 $\mathrm{A}$ と点 $\mathrm{B}$ は $y$ 軸に関して対称な点となるため、$\mathrm{B}(4,\ 16)$となります。
そして、点 $\mathrm{C}$ については、$\displaystyle 16=\frac{4}{9}x^2$ より $36=x^2$ なので、$x=6$ が得られます(正の値をとります)。つまり、$\mathrm{C}(6,\ 16)$ です。
最後に、点 $\mathrm{D}$ も①上の点で $x=-1$ であるから、$\mathrm{D}(-1,\ 1)$ となることが分かります。

かなり情報が多いですが、各点の座標を事前に求めておくと考えやすいでしょう。

さて、(1)の問題は点 $\mathrm{P}$ の $y$ 座標がとる値の範囲を求める問題です。「範囲」とか「不等式」という言葉に過剰に反応した人もいるかもしれませんが、単に点Pがどこからどこまで動くかという変域の問題に過ぎません。点 $\mathrm{P}$ が $\mathrm{D}$ から $\mathrm{B}$ まで動くので(実際に頭の中で動かしてみましょう!)、この間に $y$ 座標は $0\leqq y\leqq 16$ の範囲を動きます。

なお、この問題が「$y=x^2$ が $-1\leqq x\leqq 4$ のときの $y$ の変域を求めよ」という問題と本質的に同じ問題であることも理解しておきましょう。

(2)は、すでに2点の座標が分かっているので、2点 $(-1,\ 1)$ と $(6,\ 16)$ を通る直線を求める問題として考えていけばOKです。

2点を通る直線を求める場合に $y=ax+b$ のように直線の式を表して、そこから連立方程式を作って解くという人がいます。数学的には何も間違ってはいませんが、せっかくグラフを目の前にしているので、もう少し「直線」を意識した解き方ができるようになっておきたいですね。直線においてもっとも重要なのは「傾き」です。これは $x$ が $-1$ から $6$ まで $7$ 増える間に、$y$ が $1$ から $16$ まで $15$ 増えるから、$\displaystyle \frac{15}{7}$ だな、と頭の中でサッと暗算できるように練習しておきましょう。これで

$$y=\frac{15}{7}x+q$$

のように直線の方程式を表せるので、文字が1つ減って楽になります。あとは $(-1,\ 1)$ か $(6,\ 16)$ を代入して求めればOKです。

塾長
座標軸を自在に操って $y-1=\frac{15}{7}(x+1)$ として直線を求めてほしいなあというのは少し贅沢ですかね?(笑)

(3)も頭の中でワチャワチャするよりも、スッと図を描いてしまった方がいいでしょう。

求める四角形ADQBは、上の図を見て $\triangle\mathrm{ADC}$(斜線部分)から $\triangle\mathrm{BQC}$(色付き部分)を引くと求められそうです。

まず、大きな三角形 $\triangle\mathrm{ADC}$ については、底辺を $\mathrm{AC}=10$ と見ると、高さは点 $\mathrm{A}$と点  $\mathrm{D}$ の $y$ 座標の差を考えて $16-1=15$ となるため

$$\triangle\mathrm{ADC}=\frac{1}{2}\times 10\times 15=75$$

です。次に小さい三角形 $\triangle\mathrm{BQC}$ を考えます。同様に考えれば $\mathrm{BC}=1$ を底辺と見ると、点 $\mathrm{Q}$ と点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標の差を考えて面積を求めていけますが、点 $\mathrm{Q}$ の座標を求めるのが少々面倒です(もちろん面倒くさがらずに求めてくれてもOKです!)。

このとき、図形的な特徴を考えるとラクができそうです。下の図を見てください。

$\mathrm{BC}//\mathrm{DP}$ であり、$\mathrm{BC=DP=2}$ であることから、四角形BCPDは平行四辺形となることが分かります。そして、Qは対角線の中点となりますね。$\triangle\mathrm{ADC}$ と平行四辺形BCPDの高さは同じなので、結局、$\triangle\mathrm{BQC}$ の高さは $\triangle\mathrm{ADC}$ の半分であることが分かります。図では、$2\mathrm{SQ}=\mathrm{DT}$ となります。よって、$\triangle\mathrm{BQC}$ の面積は

$$\triangle\mathrm{BQC}=\frac{1}{2}\times 2\times \frac{15}{2}=\frac{15}{2}$$

となります。よって、求める四角形ADQBの面積は

$$75-\frac{15}{2}=\frac{135}{2}$$

となります。

模範解答でも同じように三角形を2つ利用して求める方法と、台形から三角形を引いて求める方法の2つの解法が掲載されていました。どれが良いということはないので、自分が見つけた方法で解ければOKです。ただし、今後の応用のことを考えると、このブログで取り上げたような見方を知っておいてほしいところです。

塾長
関数と図形の融合問題は入試でも頻出です。こういうタイプの問題は「図形の問題」という意識をもって取り組む方が良いと思っています。関数の知識というものは正直ほとんど使っていません。分類的には関数の問題として分類しますが、知識としては図形の知識が重要となります。

大問4

内容 方程式

難易度 標準

最初の感想としては「は〜面倒だなあ」です(笑)

最近の流行はこの問題のように情報の整理に重点が置かれた問題が多くなっています。

塾長
ほうれんそうもブロッコリーも嫌いな人だと問題文を読むのさえ苦痛かもしれませんね。こうした具体的な日常の場面を想定した数学の問題が増えているので、数学を演繹の学問だと勘違いする人が増えそうで嫌です(はっきり言ってしまった・・・)。

親切にも表が与えられているので、この好意を無駄にしないようにしましょう。ただし、この表は100gあたりの含有量になっています。このままでもいいのですが、計算が面倒なので1gあたりの表にしておくといいでしょう。

冬どり夏どり
ほうれんそう0.60.2
ブロッコリー1.40.8

情報を整理する場合には、細かく区切って見ていくことが大切です。

今回の料理では「冬どり」のものを使います。合わせて400gです。

ビタミンCの総量は「夏どり」で計算した場合よりも216mg多くなります。

これくらいで十分でしょう。

ほうれんそうを $x$ g使う場合、ブロッコリーは $(400-x)$ gとなります。このときに含まれるビタミンCの総量は

$$0.6x+1.4(400-x)$$

です。これが夏どりになると

$$0.2x+0.8(400-x)$$

となります。「夏どり」で計算した場合よりも216mg多くなるので、

$$0.2x+0.8(400-x)+216=0.6x+1.4(400-x)$$

という式が成り立ちます。これを解くと、$x=120$ となります。したがって、求めるビタミンCの総量は

$$0.6\times 120=72$$

となります。

塾長
$x$ を求めて「よし解けたぞ〜」と解答欄に120と書いてしまった人はよく反省しましょう。計算は手段です!計算で求めたものが解とは限りません。

大問5

内容 作図

難易度 標準

大問5の作図の問題はオーソドックスな問題でした。

作図の問題で大事なことは、コンパスでできることは等距離の点をとるだけということです。といっても、そのことをだけを知っていても何もできません。図形の知識はきちんと確認しておきましょう。

今回は、$\mathrm{P}$ が $\mathrm{BC}$ 上にあるということと、$\triangle\mathrm{ABP}$ の面積と $\triangle\mathrm{ACP}$ の面積比が $5:3$ になるということが分かっています。$\triangle\mathrm{ABP}:\triangle\mathrm{ACP}=5:3$ となるわけですが、$\triangle\mathrm{ABP}$ と $\triangle\mathrm{ACP}$ は高さが同じになるため、面積比は底辺の比で決まります。すなわち、$\mathrm{BP:PC}=5:3$ となるということです。

図で考えると以下のように点 $\mathrm{P}$ が現れます。

これを「等距離」で考えていくと「垂直二等分線(2点からの距離が等しい点の集合)」を利用できます。

点 $\mathrm{B}$ と点 $\mathrm{C}$ の垂直二等分線を引き、それと $\mathrm{BC}$ の交点を求めると上図の点 $\mathrm{D}$ が得られます。同様にして、点 $\mathrm{D}$ と点 $\mathrm{C}$ の垂直二等分線から点 $\mathrm{E}$ が得られます。さらに同様にして、点 $\mathrm{D}$ と点 $\mathrm{E}$ の垂直二等分線から点 $\mathrm{P}$ が得られます。

塾長
作図が得意でない人は、いきなりコンパスであれこれやるのではなく、まず図形的にどのような特徴があるかを考え、それをコンパスを用いてどう求めるかを考えていくといいでしょう。

大問6(復習オススメNo.1)

内容 平面図形

難易度 やや難

大問6は平面図形の問題でしたが、いよいよ相似が本格的に入ってきましたね。相似が入ってくると、平面図形の問題では線分比面積比が関係する問題が増えます。その分、難易度も高くなってくるのでしっかりと復習をやっておきたいところです。

(1)では、$\mathrm{BC}$ の中点が $\mathrm{F}$ であることと $\angle\mathrm{FEC}=55^\circ$ であることが与えられています。これと、四角形 $\mathrm{ABCD}$ が $\mathrm{2AB=AD}$ の平行四辺形であることを活用していきましょう。


まず、$\mathrm{F}$ が $\mathrm{BC}$ の中点であることと、$\mathrm{2AB=AD}$ であることから $\mathrm{AB=BF}$ となるので、$\triangle\mathrm{ABF}$ は二等辺三角形であり、$\angle\mathrm{BAF}=\angle\mathrm{BFA}$ となります。

また、$\mathrm{AB}//\mathrm{DE}$ から錯角が等しくなるため、$\angle\mathrm{BAF}=\angle\mathrm{FEC}=55^\circ$ となります。つまり、$\angle\mathrm{BAF}=\angle\mathrm{BFA}=55^\circ$ です。

ここで、$\mathrm{CB}$ を$\mathrm{B}$ の方へ延長した点 $\mathrm{P}$ を取ると、三角形の外角であることから、$\angle\mathrm{ABP}=55^\circ\times 2=110^\circ$ となります。さらに $\mathrm{AB}//\mathrm{DC}$ より、$\angle\mathrm{ABP}=\angle\mathrm{DCF}=110^\circ$ となります。

さらに、$\mathrm{F}$ が $\mathrm{BC}$ の中点であることと、$\mathrm{2AB=AD}$ であることから $\mathrm{DC=CF}$ となるので、 $\triangle\mathrm{DCF}$ も二等辺三角形となり、$\angle\mathrm{DCF}=110^\circ$ を考えて

$$\angle\mathrm{DFC}=(180^\circ-110^\circ)\times \frac{1}{2}=35^\circ$$

となります。

(2)は相似の証明問題です。相似の証明では2角の一致から考えることが基本となりますが、今回の問題では長さの情報が与えられているので、辺の比にも着目する必要があります。

まず角度を考えると、平行四辺形の性質から $\angle\mathrm{BAD}=\angle\mathrm{FCD}$ が言えます。

また、$\mathrm{FC}=3$、$\mathrm{BA=6}$ および $\mathrm{CD=6}$、$\mathrm{AD}=12$ であることから

$$\mathrm{FC:BA=CD:AD=1:2}$$

がいえるので、$\triangle\mathrm{ABD}\sim\triangle\mathrm{CFD}$ となります。

(3)は面積比の問題です。このタイプの問題は平面図形でも超頻出なので、考え方をきちんと押さえておかないといけません。オーソドックスな解き方は模範解答に譲るとして、ここでは少し遠回りしながら「比」についての考え方を深めていきましょう。

高校入試でよく出題されるのが、高さが等しい三角形の面積比は底辺の比で決まるというタイプのものです。この問題もこれを利用していきます。

どう考えて行ってもいいのですが、まず色付きの $\triangle\mathrm{GHF}$ の面積を1として $\triangle\mathrm{GDE}$ との比を考えてみます。

DGの中点がHであることから、高さの等しい $\triangle\mathrm{HFD}$ を考えて、

$$\triangle\mathrm{GFD}=2\times\triangle\mathrm{GHF}$$

です。$\triangle\mathrm{GHF}$ の面積を1としたので、$\triangle\mathrm{GFD}=2$ ですね。同じように $\triangle\mathrm{GFD}$ と高さの等しい三角形 $\triangle\mathrm{EFD}$ を考えます。ここで、$\mathrm{GF:FE}$ が必要になります。 ここがポイントです。(2)で与えられた $\mathrm{FC}$ の長さを考えると下図のようになります。

$\triangle\mathrm{ABF}\sim \triangle\mathrm{ECF}$(2つの錯角からすぐに証明できます)なので、$\mathrm{AF:FE=3:1}$ です。

また、下図のような関係も成り立ちます。

ここでも、$\triangle\mathrm{ABG}\sim \triangle\mathrm{GED}$ であり $\mathrm{AG:GE=3:4}$ です。

さて、これで直線 $\mathrm{AE}$ についての2つの比が求められました。このとき、

となります。このとき、$\mathrm{AE}$ を1とすると、

$$\mathrm{AG}=\frac{3}{7},\ \mathrm{GE}=\frac{4}{7},\ \mathrm{AF}=\frac{3}{4},\ \mathrm{FE}=\frac{1}{4}$$

であることを意味します。比の理解は大丈夫でしょうか? このとき分母をそろえると

$$\mathrm{AG}=\frac{12}{28},\ \mathrm{GE}=\frac{16}{28},\ \mathrm{AF}=\frac{21}{28},\ \mathrm{FE}=\frac{7}{28}$$

となるので、結局上の図は次のように書き換えられます。

このとき、$\mathrm{GF}=21-12=9$ となるため、$\mathrm{GF:FE}=9:7$ が得られます。$\triangle\mathrm{GFD}=2$ だったので、

$$2:\triangle\mathrm{EFD}=9:7$$

から $\displaystyle \triangle\mathrm{EFD}=\frac{14}{9}$ となります。

次に、$\mathrm{EC:CD}=1:3$ となるので、高さの等しい2つの三角形 $\triangle\mathrm{ECF}$ と $\triangle\mathrm{FCD}$ の面積比も$1:3$ となります。つまり

\begin{align*}
\triangle\mathrm{ECF}&=\frac{1}{4}\triangle\mathrm{EFD}\\
&=\frac{1}{4}\times \frac{14}{9}\\
&=\frac{7}{18}
\end{align*}

となります。したがって、$\triangle\mathrm{GHF}$ の面積は $\triangle\mathrm{EDF}$ の $\displaystyle \frac{18}{7}$ 倍となることが分かりました。

塾長
ちょっと遊んでみたのは、1つの線分上に2つの異なる比が与えられた場合に何が分かるかということを確認したかったのです。2つの比が与えられた場合、分割数を同じにして考えると未知の部分の比も分かります。これは結構出てくるのでちゃんと理解しておいて欲しいですね。というか、「比」に関しての理解が足りていない中学生・高校生をたくさん見かけます。これも「はじき」だの「みはじ」だのやってる弊害なんじゃないかと思っております。

大問7

内容 空間図形

難易度 標準

最後の大問7は空間図形でした。空間図形の問題はどうしても見た目がゴツくなるので敬遠する人も多いようです。

塾長
順番に解いていったら一体どのくらいの生徒がこの問題にたどり着くでしょうか? 今までの模試で一回も空間図形を解いていないという人もいるかもしれません(笑)ただ、どうしても苦手だという人は空間図形には手を出さないのも1つの作戦だと思います。

(1)はねじれの位置の問題なので、必ず解いておきたい問題です。ねじれの位置については大丈夫でしょう。

(2)から路頭に迷う生徒も出てくるかもしれません。「$\triangle\mathrm{PQC}$ が変な感じに見える」なんて視覚トリックにまんまとハマってしまわないように注意しましょう。図が見にくい場合は自分でかき直す!が鉄則ですよ。

というわけで平面ABCD側から見た図を描いてみました。図のようにRを付け足しておきます。

求めるものは色付きの三角形 $\triangle\mathrm{PQC}$ をBCを軸に一回転させた立体の体積です。しかし、これをいきなり求めるのは大変です(そもそも何という図形ですか?)。

ここでは、まず $\triangle\mathrm{PRC}$ を回転させた三角錐から斜線の $\triangle\mathrm{PRQ}$ を回転させた三角錐を引くというのがシンプルな発想でしょう。

塾長
体積を求められる立体はどんなものかという「自分ができること」をきちんと認識しておくことが大切です。生徒を見ていると無謀なことにチャレンジする人が出てくるので困ります。そういうことをテストのときにやらないで下さいね!

このとき、必要になるのはPRの長さです。これについては、習いたてホヤホヤの中点連結定理を用いて

$$\mathrm{PR=\frac{1}{2}AQ}=\frac{1}{2}\times 12=6$$

と求められます。また、$\mathrm{RQ}=3$ となるので、$\mathrm{CR}=6+3=9$ です。

よって、求める図形の体積は

$$\frac{1}{3}\times 6\times 6\times \pi \times (9-3)=72\pi\ (\mathrm{cm}^3)$$

となります。

この計算を下のように計算する人が多いのですが、面倒ではないですか?

小さい方の三角錐:$\displaystyle \frac{1}{3}\times 6\times 6\times \pi \times 3=108\pi$

大きい方の三角錐:$\displaystyle \frac{1}{3}\times 6\times 6\times \pi \times 9=36\pi$

よって、$108\pi-36\pi=72\pi\ (\mathrm{cm}^2)$

共通部分が出てきていることに気付いて欲しいですね。同じことの繰り返しはなるべく避けたいところです。

塾長
せっかく中3で展開や因数分解の工夫とかをやってるのに、こういうときに活用できないのであれば意味がありませんよ!

(3)も立体の問題ではよくありがちな、視点の変換を利用する問題です。$\triangle\mathrm{PFB}$ を底面としたときの高さなんて、いきなり求まるわけでがないので、頭を使いたいところです。こういう問題では、体積が求められないだろうかと考えてみます。実際 $\triangle\mathrm{PBQ}$ を底面と見ると体積が求まります。さらに、$\triangle{PFB}$ の面積が求められるので、$\triangle\mathrm{PFB}$ を底面としたときの高さは面積から求めることが可能となります。この解説は、模範解答のものをよくみてください。

塾長
この問題、どう考えても$\mathrm{AB}=6$ cmじゃないよなあと思いながら解いていたのですが、どうやら誤植で修正が入っていたようです(修正の紙に気づかなかったポンコツ)。(3)の解説がうっすいのはそのせいです(笑)

まとめ

というわけで、すべての問題を解いてみたわけですが、中学3年生が解くとなるとやはり難しい模試だなというのが感想です。一方で、上位校を狙う生徒であれば、満点を取る生徒もいるだろうなあと思います。つまり、入試用の問題集を繰り返しやっておけば「どこかで見た」「どこかで解いた」問題ばかりであるということです。そういう意味では、高得点を取りたいという人はその手の問題集を仕上げておけば良いということになります。それが良いか悪いかはおいておきますが。

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