解答速報はすでに新聞にも載っていたので確認された方も多いかなと思います。下のリンクからもご覧いただけます。気になって仕方ないという方はチェックしてみてください。
概観
大問数7・小問数22という構成は石川県公立高校入試の問題としては例年通りであり、問題の構成自体には大きな変化は見られませんでした。
出題範囲を大問順に見ると、小問集合、確率、関数、方程式、作図、平面図形、空間図形という the 公立高校入試の数学という内容です。昨年からの変更は規則性の問題が確率の問題に変更になったくらいで、出題分野はほぼ同じでした。
各問題の難易度も昨年と大きな差はありません。ただし、典型問題の反復ばかりをやっていた受験生は少し手が出しにくい問題があったのではないかと思います。また、問題文が長いというのは最近のトレンドですね。全体的には難問というレベルの問題はなく、標準的な内容のテストでした。泉丘高校や二水高校などの上位校では高得点者もそれなりにいそうですが、最近の中学生の数学力を考えるとこのレベルの問題でも苦戦する上位層は案外多いのではないかと思います。
全体的な難易度 やや難
各問題の概要
ここから大問ごとに細かい内容を見ていきたいと思います。面白そうな問題はちょっと詳し目の解説もつけておきます。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
前半は単純な計算問題ばかりです。計算のルールや方法についてはしっかりと準備をして満点を狙いたい部分です。計算ミスについては、性格的な問題もあったりするので簡単には矯正できないかもしれませんが、ミスが少なくなるような工夫は少しでもやっておきたいところです。とくに途中式をやたらと丁寧に書く人がいますが、転記ミスも計算ミスの原因の1つなので、暗算力を高めるように練習をしておくといいでしょう。とくに高校入試レベルの計算問題では、2行程度で終わらせられるように準備しておきたいところです。
(1)は全問正解したいところですが、案外イ、ウ、エあたりの計算で間違える人が多くいるので要注意です。
(2)の2次方程式は解の公式を使うだけの問題です。昨年も同様の問題が出題されていました。石川県総合模試でも同タイプの問題がしつこいくらい出されていました。
(3)は数量関係を不等式に表す問題でした。これもとくに難しくない問題なのですが、等式では捉えられても不等式になるとできなくなるという生徒が意外と多いのです。この問題が
という問題であれば、$a=5b+20$ と正答率は高くなります。ところが、20枚以上余ったの場合に $a\geqq 5b+20$ と捉えられない人が多いわけです。
(4)は数値を代入して求める問題ですが、これもそのへんの問題集に必ず載っているような問題です。$x^2-y^2$ を $(x+y)(x-y)$ として代入すると計算がラクになるというものです。
(5)は資料の問題です。受験生の皆さんが「おい、そこ破るなよ!」と突っ込んだとか突っ込まなかったとか…。そんな話はひとまず置いておきましょう。ここでは、度数と相対度数がきちんとわかっていれば問題なく解けたでしょう。度数6のときの相対度数が0.15なので、度数の合計すなわちクラスの生徒の数は40です。3冊の度数は $40\times 0.25=10$ となり、4冊の度数は $40-(6+6+12+10)=6$ です。したがって、平均は
$$\frac{1\times 6+2\times 12+3\times 10+4\times 6}{40}=2.1$$
として求まります。
大問2
内容 確率
難易度 標準
確率の問題の基本はすべて書き出して数えてみるということです。
(1)では「出た目の数の約数と同じ数字が書かれたカードをすべて取り除く」という規則に従って具体的にやってみればすぐに答えが求まります。もちろん、残るカードが4枚になるということは、出た目の約数が2つの場合であり、素数の目が出る時と考えてもOKです。
出た目 | 約数 | 残ったカードの枚数 |
1 | 1 | 5 |
2 | 1, 2 | 4 |
3 | 1, 3 | 4 |
4 | 1, 2, 4 | 3 |
5 | 1, 5 | 4 |
6 | 1, 2, 3, 6 | 2 |
書き出せば、2、3、5となることが分かります。
(2)も規則に従って考えていきましょう。
- 出た目の数が異なるときは、大小2つのサイコロの目と同じ数字が書かれたカードどうしを入れ換える。
- 出た目の数が同じ時は何もしない。
2つのサイコロの場合には表を利用して考えるとラクなのですが、これも杓子定規に表を作って考えないといけないとか条件反射的に表を用いだす人がいるので危険です。私もこの表を使って考える場合が多いのですが、この問題では表を使うメリットはありません。
右端のカードが偶数となる確率を考えますが、まず出た目の数が同じ時は何もしないので、常に6が右端にきます。
また、出た目の数が異なる場合も、6が関係しないものは右端のカードに何の影響も与えないので、常に6が右端にきます。
結局、6と奇数という組の場合に、右端の数が奇数になることがわかります。これは、(1,6)、(3,6)、(5,6)、(6,1)、(6,3)、(6,5)であるため、求める確率は
$$\frac{36-6}{36}=\frac{5}{6}$$
となります。
大問3(良問)
内容 関数
難易度 難
今年の入試問題の目玉はこの問題でしょうか。これまではオーソドックスな(あんまり面白くない)問題が多かったのですが、今年の(2)はとても良い問題だったと思います。
(1)はよくある定義域と値域の問題です。グラフを描いて考えれば何も難しくないです。
問題は(2)です。関数の問題で回転移動が出てくるとはなかなかです。
$\triangle \mathrm{APQ}$ を原点を中心として $360^\circ$ 回転させるのですが、回転させた結果、色のついた図形がドーナツ型になりそうという予想はできたのではないでしょうか。こうした予想は非常に大切です。実際に回転をさせるとドーナツ型になります。
あとは、その面積を考えればいいのですが、大きな円から小さな円を引くことになります。大きな円の半径はどこになるでしょうか。また、小さな円の半径はどこになるでしょうか。
これは原点からいちばん遠い点といちばん近い点を考えていけばOKです。原点から一番遠い点がQであることはすぐに理解できると思います。ここは、Q$(3,\ 9)$ であることと、三平方の定理を用いて
$$\mathrm{OQ}=\sqrt{3^2+9^2}=\sqrt{90}$$
となります。また、小さい方の円の半径はAでもPでもなく、APの中点(APと $y$ 軸との交点)となります。原点から一番近い点を考えていけば当然ですね。この半径は1です。
したがって、求める面積は
$$\sqrt{90}\times \sqrt{90}\times \pi-\pi=89\pi$$
となります。
(3)も受験生泣かせの問題だったのではないかと思います。こうした問題では、だいたいこんな感じになるだろうという予想を立てて図を書いてみるという姿勢が大切です。正確ではなくてもいいので、大まかな図として下図のようなものを描き、位置関係を把握してみましょう。
あとは、斜線部の三角形と色付きの四角形の面積が等しくなるように考えます。このとき、斜線部と色付き部分が重なるところは面積が等しいので考えなくてもOKです。しかし、重なる部分を全部除外して考えようとすると難しくなります。ここでは、あえてAPを結ぶことで、等積変形を利用していくのがラクな方法です。つまり、$\triangle\mathrm{APR}$ と $\triangle\mathrm{APQ}$ が等しくなるようにRを取ればいいわけです。これは、Qを通る直線APと平行な直線が直線OAと交わる点を考え、その点がRとなると考えればいいということになります。
Aの座標は $(-1,1)$、Pの座標は $(3,9)$、なので直線APの傾きは2です。Q$(4,16)$ を通る傾き2の直線の方程式は、$y=2x+8$ です。また、直線OAの方程式は $y=-x$ なので
$$\begin{cases}y=2x+8\\y=-x\end{cases}$$
と連立して解けば、$\displaystyle x=-\frac{8}{3}$、$\displaystyle x=\frac{8}{3}$ が得られます。
大問4
内容 方程式
難易度 易
方程式の問題は、ここ数年は傾向が安定しています。表やグラフを使った「現実的な題材」の問題が出題されており、今年もゴミの排出量についての問題でした。昨年は料理が題材でしたが、要は表面的なものに惑わされるのではなく、さまざまな具体例の中にある共通するものをきちんと考えられるようになっておくということが大切です。
2008年の3種類のゴミの排出量を $x$、2018年の3種類のゴミの排出量を $y$ とすると、まずは $x=y+225$ が得られます。
次に、燃えないゴミに着目すると、2008年が $\displaystyle \frac{8}{100}x$、2018年が $\displaystyle \frac{4}{100}y$ となります。
あとは、2018年の燃えないゴミが、2008年の燃えないゴミより6割減っていた(つまり4割になった)ので
$$\frac{4}{10}\times \frac{8}{100}x=\frac{4}{100}y$$
となります。あとは得られた2本の式を連立して解けばOKです。
大問5
内容 作図
難易度 やや難
いつも言っていますが、作図では等距離を意識しながら図形を考えていくことが大切です。条件は3つあります。
- 点Pは直線BCに対して点Aと同じ側にある。
- $\angle\mathrm{ABP}=\angle\mathrm{CBP}$
- $\angle\mathrm{ADC}=\angle\mathrm{APC}$
①の条件はあまり深く考えなくてもOKです。
②の条件から、Pは $\angle\mathrm{ABC}$ の二等分線上にあることがわかります。これで、だいたいのPの位置を予想しましょう。
③の条件は円周角を考えれば、P、D、A、Cが同一円周上にあることがわかります。この円の中心はP、D、A、Cから等距離の点となります。これをバラしてAとDから等距離かつCとDから等距離と考えられれば完璧です。円周角にあまり慣れていない人は③で苦戦したかも知れません。
大問6
内容 平面図形
難易度 標準
(1)は円周角と中心角の関係を考えれば一瞬で $140^\circ$ が求まりますね。今年は円周角がよく出てきます(笑)
(2)はなかなかいい問題です。色付きの部分の面積は、$\triangle\mathrm{OBE}$ の面積からおうぎ形OBDの面積を引けば求まります。まず、(1)をヒントとして、A、B、C、Dの対称性と$\angle\mathrm{ACO}=60^\circ$ から $\triangle\mathrm{OAC}$ と $\triangle\mathrm{OBD}$ が正三角形(ついでに $\triangle\mathrm{OAC}\equiv\triangle\mathrm{OBD}$ です)になることを押さえましょう。
おうぎ形OBDの面積は、$\mathrm{AB}=8$ から円の半径 $\mathrm{OB}=4$ であり、$\angle\mathrm{BOD}=60^\circ$ から
$$4^2\times \pi\times \frac{60}{360}=\frac{8}{3}\pi$$
となります。
$\triangle\mathrm{OBE}$ については、$\angle\mathrm{BOD}=60^\circ$ と、BEが円の接線であることから $\angle\mathrm{OBE}=90^\circ$ が得られるため、いわゆる $90^\circ$、$ 60^\circ$、$30^\circ$ の直角三角形となり、線分比として
$$\mathrm{OB:OE:BE}=1:2:\sqrt{3}$$
が得られます。$\mathrm{OB:BE}=1:\sqrt{3}$ から
\begin{align*}
\mathrm{4:BE}&=1:\sqrt{3}\\
\mathrm{BE}&=4\sqrt{3}
\end{align*}
となります。したがって、$\triangle\mathrm{OBE}$ の面積は
$$\frac{1}{2}\times 4\times 4\sqrt{3}=8\sqrt{3}$$
となり、求める面積は $\displaystyle 8\sqrt{3}-\frac{8}{3}\pi$ となります。
(3)は相似の証明です。線分に関する情報は与えられていないので、ここでは2つの角に着目しながら相似を考えていきましょう。
大問7
内容 空間図形
難易度 標準
(1)のねじれの位置は大丈夫でしょう。
(2)もオーソドックな問題です。設定から正四面体になることをまずは押さえましょう。ADの長さを三平方の定理によって求めると、$3\sqrt{3}$ となります。同様に考えてODも同じ長さになります。このとき、$\triangle\mathrm{OAD}$ は $\mathrm{OD=AD}$ の二等辺三角形になるので、DからOAに垂線を下ろしたとき、垂線の長さがこれまた三平方の定理から
$$\sqrt{(3\sqrt{3})^2-3^2}=3\sqrt{2}$$
が得られるので、
$$\frac{1}{2}\times 6\times 3\sqrt{2}=9\sqrt{2}$$
となります。
(3)はどこから手をつけようか迷った人も多いと思いますが、面積比や体積比の問題では共通する部分がないかという視点で問題を眺めていくといいでしょう。2つの立体に分けた場合、どちらの立体にも点Bが含まれます。そのため、Bから平面OABに垂線をおろして、それを高さと考えていくとすっきりします。高さが等しければ、体積比は底面積の比で表されます。
図としては、上のような感じになります。このとき、四角形 $\mathrm{EFCA}$ の面積が $\triangle\mathrm{OEF}$ の2倍になればOKということなのですが、これは結局 $\triangle\mathrm{OEF}:\triangle\mathrm{OAC}=1:3$ となるということです。$\mathrm{OE}=x$ とすると $\mathrm{OE}=2x$ となります。
あとは、高さの等しい三角形を使って $x$ を求めていきましょう。AFに補助線を引くとわかりやすいです。
最初に、$\triangle\mathrm{OAC}$ の面積を $S$ としておきます。次に $\mathrm{OF:OC}=2x:8$ であることから
$$\triangle\mathrm{OAF}=S\times \frac{2x}{8}=\frac{x}{4}S$$
となります。また $\mathrm{OE:OA}=x:8$ なので、
\begin{align*}
\triangle\mathrm{OEF}&=\frac{x}{8}\times \triangle\mathrm{OAF}\\
&=\frac{x^2}{32}S
\end{align*}
となることがわかります。$\triangle\mathrm{OEF}$ は $S$ の $\displaystyle \frac{1}{3}$ の面積となるので、結局
$$\frac{x^2}{32}S=\frac{1}{3}S \Longleftrightarrow x^2=\frac{32}{3}$$
となり、$\displaystyle x=\frac{4\sqrt{6}}{3}$ となります。
基本的に、考えてることは高さが等しい三角形を利用するということだけですね。
まとめ
最初に述べたように1つ1つの問題を見ていくと、いわゆる難問と言えるようなものは含まれていません。しかし、制限時間が50分ということを考えると簡単なテストとは言えません。また、最近の中学生の数学力を考慮すると、昨年の問題よりもかなり難しいと感じた受験生が多かったのではないかと思います。
しかし、繰り返し指摘をしておきますが、難問は1つもありません。むしろ今年は良問が多いテストだったと私は思います。ちゃんと数学を理解している人であれば高得点を取れたのではないでしょうか。
逆に言えば、ふだんは高得点を取れていたのに今回の入試で苦戦したという人は、この先、高校生になってからの勉強に不安を抱えていると思っておくほうがいいでしょう。