根号があるので二乗しまーす!の前に

塾長
気がつけば今年も残すところあと3日となりました。2020年は新型コロナウイルスに振り回された1年でした。まだまだ収束する気配はないので、引き続き感染予防に努めながら新年も粛々とやっていこうと思います。ま、小さい塾なんで密になることはないんですけどね(笑)

ということで、塾の方はすでに冬期講習がスタートしております。今年は春先の休校期間が影響して学校の冬休みが短くなっており、その影響もあって、冬期講習の期間&時間が例年より短くなっています。

講習期間は演習を重点的に行う期間として位置付けていますが、今年はなかなか思うように時間が取れなかったので、演習不足を回避するためにいろいろと頭を使いました。冬期講習では問題数を大幅に絞って、とくにミスや勘違いの原因となりそうな部分を重点的に取り上げました。典型問題の演習はおそらく学校の課題などでもたくさん出されていると思うので、そちらにお任せすることにしました(笑)

ちゃんと考えて解いている人はふつうに正解できる問題ですが、何となく解いている人は間違う可能性の高い問題(生徒曰くイヤラシイ問題)のオンパレードとなっております。

例えばこんな問題です。

不等式 $\sqrt{3-x}<x+1$ を解け.

まあ、あらかじめイヤラシイ問題と分かっていると身構えて注意深くなるものですが、何も言わずにテストの最初の方に載せておくと正答率が簡単に50%を切ります。トップ校の理系の生徒でも簡単に引っかかります。ちなみに、これでもまだイヤラシサで言えば5段階でレベル2くらいですよ(笑)

代表的な答案として以下のようなものが多く見られます。

両辺を平方して
\begin{align*}
&3-x<(x+1)^2 \Longleftrightarrow x^2+3x-2>0\\
&\therefore\ x<\frac{-3-\sqrt{17}}{2},\ \frac{-3+\sqrt{17}}{2}
\end{align*}

これだけでは間違った答案となってしまいます。理由は分かりますか?

この問題では、ほとんどの人が平方するという方針を考えると思います。それ自体は何も間違いではありません。根号を外して考えるというのは大切な方針です。だからと言って、何の断りもなく平方してOKかというとそうではありません。

普段、数学を勉強する際に、定義であったり定理やその証明を注意深く追いかけている人は、平方する際に同値性が崩れる可能性を強く意識できているはずなので、こうした「乱暴な答案」になることは少ないのですが、何となくこうしておけばOKくらいにしか考えていない人やこの問題ではこうするという表面的な解法の習得ばかりをやっている人は、上のような乱暴な答案を作りがちです。

平方を考える前に、いくつかのことを確認しておきましょう。

まず、根号について考える必要があります。通常の不等号の記号は実数の範囲で使用されます(これさえ知らない高校生がいます)。そのため、根号内が負となるような場合は不適となります。したがって、$3-x\geqq 0$ でなければなりません。

また、不等式の左辺 $\sqrt{3-x}$ は平方根の定義からも明らかですが $\sqrt{3-x}\geqq0$ であるため、右辺 $x+1$ が負の値である場合は明らかに不等式は成り立ちません。

塾長
「$0$ 以上の値 $<$ 負の値」という関係は成り立ちませんね!

さらに、不等式の両辺を平方することを考えてみましょう。$A<B$ と $A^2<B^2$ は同値と言えるでしょうか?

例えば、$A=-2$,$B=1$ のときは $A<B$ は成り立ちますが、$A^2=4$,$B^2=1$ となり $A^2>B^2$ となってしまいます。また、$A=1$,$B=-2$ のときは $A^2=1$,$B^2=4$ なので $A^2<B^2$ ですが $A>B$ となってしまいます。

このように具体的な数値でいくつか具体例を作ってみると分かりますが、$A<B \Longleftrightarrow A^2<B^2$ が成り立つためには、$A\geqq 0$、$B\geqq 0$ でなければなりません。つまり

$$A<B\Longleftrightarrow \begin{cases}A^2<B^2\\A\geqq0\\B\geqq0\end{cases}$$

ということです。

以上のようなことを考えられていれば

$$\sqrt{3-x}<x+1\Longleftrightarrow \begin{cases}3-x<(x+1)^2\\3-x\geqq0\\x+1\geqq0\end{cases}$$

として、正しく $\displaystyle \frac{-3+\sqrt{17}}{2}<x\leqq 3$ と解けるのではないでしょうか。

少なくとも高校生のみなさんには、この程度のことくらいは考えて問題に取り組めるようになってほしいと思っています。

というわけで、冬期講習ではこんな感じの問題を中心に取り扱っているよ〜という紹介でしたが、よくよく考えてみると冬期講習だけではなくて、普段からこんな感じの問題ばかりやっている気がします、あはは(笑)

塾長
どれだけ解き方をなぞる訓練をしたところで、考えることを放棄してしまえば、こうした正しい思考を得ることは不可能に近いと思います。量をやればそのうち質が上がるなどと言っている人は、おそらく数学をちゃんと学んでこなかった人なんだろうなあと想像します。
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