というわけで、6月になると中3の授業では2次方程式あたりをやることになります。
このあたりから、数学に対する姿勢の違いのようなものが顕著になってくるように思います。
昨年も、6月の記事で「解の公式」について書いていました。
塾長今日は最高気温が30℃を超えているようですね。夏男の塾長は暑いのは得意なのでなんとなく浮かれてしまいますね〜。いま、パチコチしながら相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」がBGMで流れています。そのくらい浮かれています。[…]
毎年、同じような時期に同じようなことが起こるので、いつもいつも同じことばかり書いているような気持ちになります。
2次方程式の解の公式
2次方程式の解の公式は以下のようなものです。
$$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$
2次方程式の解の公式は、これから先の発展を考えるときちんと覚えておきたいものですが、だからといって、いきなり丸暗記するのは意味がありません。
まずは、この公式を $ax^2+bx+c=0$ ($a\neq 0$)からきちんと導けるようになっておくべきです。
実際に公式を導いてみると、以下のような感じになります。
\begin{align*}
&ax^2+bx+c=0\\
&x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=0\\
&\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a^2}+\frac{c}{a}=0\\
&\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2}{4a^2}-\frac{c}{a}\\
&\left(x+\frac{b}{2a}\right)^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2}\\
&x+\frac{b}{2a}=\pm\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}\\
&x+\frac{b}{2a}=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
&x=-\frac{b}{2a}\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
&x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}
一見するとかなり大変そうな変形に見えますが、平方根までの計算を確実にできる人であれば、そこまで難しい変形ではありません。
むしろ、高校入試までに押さえておきたい大事な計算の規則などが詰まっているので、自分で公式を導けるように練習しておくべきです。
解の公式を使うかどうか
なお、この解の公式を使えば、あらゆる2次方程式の解を求めることができるようになります。
だからと言って、解の公式を使わなければならないということではありません。
例えば、次の問題で解の公式を使う人はほとんどいないでしょう。
ほとんどの中学3年生は因数分解を利用して
$$(x+3)(x-1)=0$$
から、$x=-3$ または $x=1$ と解を求めるはずです。
では、次の問題はどうでしょうか。
この問題で解の公式を使おうと思う人は、おそらく公式を丸暗記している人ではないかと思います。
もちろん、解の公式を用いて解いてもまったく問題はありません。
しかし、以下のように解くこともできます。
\begin{align*}
&(x+1)^2-1-2=0\\
&(x+1)^2=3\\
&x+1=\pm\sqrt{3}\\
&x=-1\pm\sqrt{3}
\end{align*}
計算過程を見れば、これは解の公式を導く際の計算そのものであることが分かります。
個人的には、分数の形が出てこないのでこっちの方が好きです。
また、この計算が分かっていれば、$x^2+2x+3=0$ という2次方程式が実数解をもたないこともすぐに分かります。
それでは、次の問題はどうでしょうか。
これなんかは、解の公式を使って解く人がほとんどだと思います。
高校生ならたすき掛けで因数分解しようと思う人もいるでしょうが、中学生だとほぼ全員が解の公式を使います。
しかし、式を見て $x=2$ を代入したら等式が成り立つことを見抜ける人もたくさんいるのではないでしょうか。
等式が成り立つような $x$ の値は方程式の解なので、$x=2$ は解です。
ということは、左辺が $(x-2)$ という因数をもつわけで、左辺は $(x-2)(ax+b)$ のようになるはずです。
あとは、暗算で $(x-2)(2x+1)=0$ と因数分解できます。
これで、$x=2$ または $\displaystyle x=-\frac{1}{2}$ が得られます。
解けるから大丈夫!ではない
上記の例を見てみれば、問題が解けるからといって必ずしもそれが深い理解につながっているとは言えないことが分かると思います。
表面的には方程式の解を求められていたとしても、そこに至る過程で大きな差が生まれているのです。
そういう部分をチェックせずに、答えが合っているかどうかばかりを気にしていると、大事なことがごっそりと抜け落ちてしまいます。
ところが、高校入試ではそのような表面的な理解でも乗り切れてしまうため、下駄を履かせる指導がまかり通ってしまうわけです。
そのような状態で上位校へ進学すると、その後で大変な苦労をすることになります。
実際に、上位校へ進学したものの、数学が壊滅的な成績なってしまって当塾へ来られる方が増えています。しかし、そのタイミングでは残念ながら手遅れです。
高校数学で躓く生徒のほとんどは、中学数学の勉強に原因があります。そこに戻ってやり直すには、相当な覚悟と時間が必要となります。
だからこそ、中学生のうちから正攻法で数学を学んでいくことが大切なのです。