先日、中学3年生の授業で比の計算が出てきました。
といったよくある計算です。
と思ったのですが、何やら不穏な感じがするので「どんなもんかな〜」と生徒が解いているところを観察してみました。
すると、次のような計算をノートに書いている生徒が多数いました。
\begin{align*}
x:24&=5:8\\
8x&=120\\
x&=15
\end{align*}
もちろん、何も間違ってはいないので問題はないように思えます。
また、問題集の解説などを見てもこのように解いてあるものがほとんどです。「内項の積=外項の積」のようにまとめてあるものもよく見かけます。
ためしに手元にある参考書・問題集を見てみたのですが、上記のような方法で解いてある解説ばかりで、これ以外の方法で解いてある模範解答は見当たりませんでした。
「答えも合っているし、模範解答と同じ解き方でやってあるし、完璧だ!」
そう思う人も多いのですが、実はこれがいろいろと問題があったりするのです。
比のことが正しく理解できていて、$5:8$ という表記の意味も理解できていれば、$x:24=5:8$ をわざわざ先程のような面倒な計算をやって $x$ を求めることはしないのではないでしょうか。
ふつうに「8を3倍すれば24なわけだから5も3倍して15だな」となるのではないかと思うのです。
ところが、問題集などでは $8x=120$ のように変形して解いてあるのものばかりであるため、この方法でやらないといけないと考えてしまう中学生も多いのではないかと思います。
ちなみに、変形するにしても $8x=120$ とするのは絶望的にセンスがありません。どうせなら $8x=5\times 24$ と計算しないでおく方がマシです。
$5\times 24=120$ をやって、そのあとで $120\div 8$ を計算しているとしたらかなり無駄が多くなります。そして、その分だけ計算ミスのリスクが高くなるわけです。また、途中式をバカ丁寧に書く習慣がついてしまい、時間的なロスも大きくなってしまいます。
このような模範解答通りに無駄な計算をやってしまうタイプの人って実はかなり多いのではないかと思います。
そして、無反省のままテストに突入して、計算ミスを多発したり時間が足りないなんてことになってしまっているように思います。
とくに真面目な性格の人ほどこうした罠にかかってしまっているように思います。
大学受験の共通テスト(センター試験)も時間制限がかなり厳しいテストなのですが、得点が伸び悩む生徒は計算とスピードに問題を抱えていて、その原因は今回の記事で取り上げたようなことが元になっているケースが多いのです。
計算問題というのは「単なる計算でしょ!」といった感じで軽視されがちなのですが、いろいろな工夫を学ぶにはちょうどいい素材だと思います。もちろん、そうしたネタが仕込んであるようなものでないと作業になってしまいますが。
「答えがあっている・模範解答と同じ」なので問題ない!とするのではなく、もう一歩踏み込んで「もっと良い方法があるかもしれない」と考えることも大切です。
計算問題のような単純なものこそ、もっと簡単にならないかと考えてみることが大切です。模範解答が必ずしもベストな方法とは限りませんよ!