というわけで、今回は平面図形の証明問題を1つ用意しました。
高校入試では、基本的に三角形の合同や相似の証明が多く出題されるので、このような証明問題はあまり出てきませんが、内接四角形の面白い性質が見えてくるので、図形が得意な人はノーヒントで挑戦してみましょう。
いきなりは厳しいという人は、下にスクロールしてヒントを見て考えてみましょう。
ヒント 相似な三角形が出てくるように、点 $\mathrm{E}$ を $\mathrm{BD}$ 上に作ってみましょう。
証 明
図のように $\mathrm{BD}$ 上に点 $\mathrm{E}$ を
$$\angle\mathrm{BAE}=\angle\mathrm{CAD}\quad\cdots(1)$$
となるようにとる。また、弧 $\mathrm{AD}$ の円周角について
$$\angle\mathrm{ABE}=\angle\mathrm{ACD}$$
が成り立つから、$\triangle\mathrm{ABE}\sim\triangle\mathrm{ACD}$ である。
したがって、$\mathrm{AB:BE=AC:CD}$ すなわち
$$\mathrm{AB\times CD=AC\times BE}\quad\cdots(2)$$
また、(1)より、
$$\angle\mathrm{EAD}=\angle\mathrm{BAC}$$
弧 $\mathrm{AB}$ の円周角について
$$\angle\mathrm{ADE}=\angle\mathrm{ACB}$$
が成り立つから、$\triangle\mathrm{AED}\sim\triangle\mathrm{ABC}$ である。
したがって、$\mathrm{AD:ED=AC:BC}$ すなわち
$$\mathrm{AD\times BC=AC\times ED}\quad\cdots(3)$$
(2)、(3)の辺々を加えると
\begin{align*}
\mathrm{AB\times CD+AD\times BC}&=\mathrm{AC\times BE+AC\times ED}\\
&=\mathrm{AC(BE+ED)}\\
&=\mathrm{AC\times BD}
\end{align*}
よって示された。
というわけで、今回証明した定理はトレミーの定理と呼ばれる有名な定理です。
この定理の証明では、最初に $\mathrm{E}$ を自分で設定するところがポイントになります。これによって三角形の相似が利用できるようになります。
このように、自分で点を設定したりあるいは補助線を引いたりする必要のある問題は、入試でも正答率がかなり下がります。
決まったパターンの問題はできるけど、見たことのない問題に対してはフリーズしてしまうという中高生が増えています。その原因は、パターンの習得ばかりに走って試行錯誤の時間をほとんど取らないことにあるように思います。分からなかったから答えを見てやり方を覚えるなんていう方法では、いつまでたっても数学の力は身につきません。手と頭をフル回転させながら、あれこれやってみることが数学ではいちばん大切なことです。そのためには、試行錯誤の中で発見があるような良質な問題に挑戦することが大切ですね。