バラバラに見えてはあまり意味がない

中学校も中間テストが終わったようで、生徒から色々とテストの話を聞いています。
この時期はほぼ計算問題のみのようなテストになることも多いのですが、やはり気になるのは因数分解の扱いです。
因数分解では「公式」がいくつか出てきます。
手元にある教科書(新しい数学:東書)では、導入として展開の話があり、$x^2+7x+12$ を因数分解してみよう、と続きます。
そして、ちょっと違いますが下のような図があり、$a$ と $b$ を図を使わずに考えてみようといったことが書かれています。
その直後に乗法公式を逆に使って、因数分解することを考えてみようとあります。
そして、公式1として
$$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$$
が与えられ、すぐ後に例として $x^2+5x+6$ を因数分解してみよう、と続きます。
説明では、公式で $a+b=5$、$ab=6$、つまり和が5、積が6になる数 $a$、$b$ を見つければよい、とあります。
そこからいくつかの練習問題を経て、「$x^2+6x+9$ を公式1を使って因数分解してみましょう。どんなことがわかるでしょうか」とあります。
その次に、
公式2 $x^2+2ab+a^2=(x+a)^2$
公式3 $x^2-2ab+a^2=(x-a)^2$
と続きます。
さらに、今度は唐突に公式4として $x^2-a^2=(x+a)(x-a)$ が登場します。
そして、最後に「これまでに学んだ公式をまとめると、次のようになる」として
(2) $x^2+2ax+a^2=(x+a)^2$
(3) $x^2-2ax+a^2=(x-a)^2$
(4) $x^2-a^2=(x+a)(x-a)$
みたいな表が出て来ます。
こうした構成では、式によって公式を使い分けて因数分解をしないといけないような気になります。
実際に、どの公式のパターンなんだろうと考えてしまう中学生がとても多いのです。
そうやって知らず知らずのうちにパターンマッチングの方に思考を奪われてしまうことになります。
せっかく $x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$ からスタートしているのだから、基本的にはこの考え方1つで事足りる、と分かることが大事なのではないでしょうか?
おそらく乗法公式がベースにあって、それを逆にして因数分解の公式になる的なことを言いたいのかもしれませんが、そもそも乗法公式自体が不要な公式です。
展開するなら分配すればよいし、因数分解するなら「どんな形を分配したら目の前の式になるか」と考えればいいだけです。
この考え方が入っていないせいで、高校の数学ですごく無駄な計算をする人がたくさんいます。
公式を使うにしても、(1)だけ頭に入っていれば、(2)〜(4)は不要です。
さらには、テストにおいて「どの公式を利用して因数分解するか」なんてことを問われたりする事態が発生します。
何でもかんでも公式にすればいいというものではありません。
こうして公式を細分化してしまうせいで、「結局同じことやってるだけだね!」という大事な観点が抜けてしまうように思います。
覚えるものを細分化するのではなく、「この考え方が分かってればいらないわ、コレ」みたいな感じで考えられるようになってもらいたいですね。