2024第4回石川県総合模試の数学を解いてみた

模試を受験したみなさん、お疲れ様でした!
統一テスト前の模試ということで気合いを入れて準備したという人もいたことでしょう。
一方で、体調不良で思うように実力を発揮できなかったという人もいたようです。学力だけでなく、心と体の準備もしっかりとするように心がけましょう。
そして、模試が終わったらできるだけ早めに復習をやる、これが鉄則です!
概観
今回も数学は大問数が7(うち小問数23)で、石川県公立高校入試に合わせたいつも通りのセットでした。
いずれの大問も入試頻出の典型的な問題が中心でした。各問題の難易度もそれほど高くなく、数学が得意な人は余裕で満点が取れるような内容だったかもしれません。ただし、時間的な厳しさは相変わらずなため、解ききれずに試験が終了してしまったという人もいたのではないかと思います。
前半は方程式・関数といった計算を中心とした問題、後半が作図を含む図形の問題と公立高校入試とほぼ同じ構成でした。点差が付きやすいのは後半の図形の問題なので、上位校を狙う人は前半をなるべく時間をかけずサクッと終わらせ、できるだけ後半の図形に時間を残してじっくりと取り組みたいところです。
今年度はずっと易しめの問題が続いていますが、なかなか平均点が上がらないので今回も全体の難易度は標準としておきます。
全体的な難易度 標準
問題の解説
ここからは問題の具体的な解説となります。問題用紙を準備してご覧ください。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
基本的な計算力や知識を問う問題です。今回は少し変わった問題として回転の問題が1つ入っていましたが、とくに難しい問題ではなかったので難易度には影響はありません。大問1はどの生徒も満点を狙ってください。とくに数学が苦手な人は大問1の得点が生命線となるので、ミスのないように慎重にやっていきましょう。
(1)は単純な計算問題です。とくに難しい問題はありませんが、計算手順を間違えると面倒になってしまうような問題も含まれるので、計算の工夫を常に考えるようにしてください。
例えば、オの $\displaystyle \frac{8}{\sqrt{2}}-\sqrt{26}\div\sqrt{13}$ などはかなり遠回りで計算している人をよく見かけます。ある程度は暗算で終わらせて、途中式を書くにしても
$$4\sqrt{2}-\sqrt{2}=3\sqrt{2}$$
くらいのスピード感で解きたいところです。
「途中式を丁寧に書きましょう」という人もいますが、個人的に途中式は必要以上に増えるとミスする可能性が高くなるため、できるだけシンプルに計算することをオススメします。もちろん基礎が怪しい人が練習の段階でしっかり書くことは否定しません。
(2)は簡単な2次方程式の問題でした。因数分解で解けるので解説も不要でしょう。
(3)は $y$ が $x$ に比例するものを選ぶというワークなどにも必ずある問題でした。
(4)は正三角形を回転させる問題です。ほぼ直観で $120^\circ$ と分かる問題でした。難しく考えてしまった人は問題用紙を実際に回転させて確認してみるといいでしょう。
(5)は確率の問題でした。大小2つのサイコロを投げる定番中の定番の問題です。目の出方は全部で36通りあり、これらはすべて同様に確からしくなります。(大の目、小の目)とすると、出た目の数の積が2桁の偶数となるのは
(2、5)(2、6)(3、4)(3、6)
(4、3)(4、4)(4、5)(4、6)
(5、2)(5、4)(5、6)(6、2)
(6、3)(6、4)(6、5)(6、6)
の16通りなので、求める確率は $\displaystyle\frac{16}{36}=\frac{4}{9}$ となります。
これも単純にヒストグラムを読み取って割合を計算するだけです。
大問2
内容 統計
難易度 易
大問2は統計の問題でした。基本的な知識があれば余裕で解ける内容でした。
あるクラス25人の生徒の通学時間を調べたものが下の度数分布表で与えられます。
(1)は $x=12$ のときの20分以上30分未満の階級の相対度数を求める問題です。
$y=7$ となるので、求める相対度数は $7\div 25=0.25$ ですね。
(2)では、「中央値を含む階級の階級値が15分、最頻値が25分であるときの $x$、$y$ の値」を求める問題です。
まず、当たり前のことですが、$x+y=19$ となります。次に中央値が15分になるということは、小さい方から数えて13番目の人が10〜20の階級に入るということなので、$x$ は9より大きい値でなければなりません。さらに、最頻値が25分ということは、20〜30の度数が最も大きいということなので、$y>x$ となります。これらの条件を満たすのは、$x=9$、$y=10$ のみです。
大問3(復習おすすめNo.2)
内容 関数
難易度 標準
大問3は関数の問題でした。いわゆるダイヤグラムの問題と呼ばれるもので、グラフを用いて動きを視覚化するような問題で、入試でもよく出題されます。
こんな感じのグラフが与えられています。A駅からB駅までの40kmを、途中P駅に4分停車して44分で運行する電車のグラフです。A駅、B駅とも始発は6時で、その後10分間隔で電車が発車します。
(1)はB駅を6:10に出発した電車がP駅に着く時間を求める問題です。これは簡単だったと思います。電車は分速1kmの速さであることが上のグラフから読み取れます。また、B駅からP駅までは25kmなので、所要時間は25分ということになります。よって、求める時刻は6:35となります。
(2)は、A駅の始発電車(上のグラフの電車)がB駅に着くまでにB駅発の電車とすれ違う回数を求める問題です。これもグラフをイメージしてみるとすぐに分かります。6:00から10分間隔で電車が発車するので、下の青線のように電車が運行します。
見ての通り5回となります。
(3)は「A駅の始発電車がB駅の始発電車とすれ違うのはA駅から何kmの地点か」を求める問題です。これこそダイヤグラムの醍醐味といった問題です。
B駅の始発電車の動きを書き込むと図のような対称なグラフができあがります。したがって、2つの電車がすれ違うのはちょうど真ん中の時間なので6:22となります。このときB駅の始発列車は、B駅から22km進んでいることになるので、求める値は $40-22=18$ よりA駅から18kmの地点であることが分かります。
模範解答では上のグラフを用いているにもかかわらず、わざわざ直線の式を用いて解いてあります。まあ、それも必要な考えではありますが、せっかく時間を節約できる問題なので、そうした考え方も提示してくれるとありがたいですね。
ダイヤグラムの問題では、図形的な(視覚的な)考察も非常に有効なので、すぐに計算に持ち込まずに全体をよく眺めてみて欲しいところです。
大問4
内容 方程式
難易度 易
大問4はシンプルな方程式の問題でした。美術館の入館料が、大人1人が $x$ 円、子ども1人が $y$ 円で、合計が20人以上の場合は入館料の合計金額が10%引きになるという設定です。
そして、「大人4人、子ども3人の入館料は7200円」「大人5人、子ども15人の入館料は16200」という条件が与えられます。これは、そのまま式を作ったら終わってしまうような問題です。
1つ目の条件から
$$4x+3y=7200$$
2つ目の条件から
$$0.9(5x+15y)=16200$$
これを連立して解くと $x=1200$、$y=800$ となります。
計算がやや面倒に見えますが、$0.9(5x+15y)=16200$ の方を整理すると比較的簡単な式が得られます。
大問5
内容 作図
難易度 標準
大問5は作図の問題でした。作図の問題では、与えられた条件を満たす点をだいたいの感じで予想してみることが大切です。
今回の問題は以下のようになります。
- 点Pは辺BC上の点
- 頂点Cから辺ABにひいた垂線と辺ABとの交点をHとしたとき、$\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{PHC}$ となる
という感じです。まずは、定規やコンパスを持つ前に、どのあたりになるかを考えてみましょう。そうすると下のように点Pの位置がなんとなく見えてきます。
このとき、$\triangle\mathrm{BHC}$ と $\triangle\mathrm{HPC}$ は相似な三角形となります。$\angle\mathrm{CBH}=\angle\mathrm{CHP}$ と $\angle\mathrm{HCB}=\angle\mathrm{PCH}$ からすぐに見えるでしょう。ということは、残りの1つの角について
$$\angle\mathrm{BHC}=\angle\mathrm{HPC}=90^\circ$$
となることが分かります。つまり、作図としてはCからABに垂線をおろしてHを作図し、さらにHからBCに垂線をおろしてPを作図するという流れです。
大問6(復習おすすめNo.3)
内容 平面図形
難易度 標準
大問6は平面図形の問題で、1つの正方形とそれを回転移動させた正方形に関するものでした。回転移動は頻出の問題なのでできた人も多かったと思います。(3)は少し難しい部分もありますが、上位校狙いの人は完答してほしい問題です。
(1)は下図のように $\angle\mathrm{EAC}=31^\circ$ としたときの $\angle\mathrm{ADG}$ の大きさを求める問題です。
回転移動では合同な図形に着目し、等しい長さや角をチェックしていくのが基本です。ここでも $\mathrm{AG=AD}$ であることが分かれば、$\triangle\mathrm{ADG}$ が二等辺三角形となることが見えてくるでしょう。
また、対角線 $AC$ で作られる $\angle\mathrm{CAD}=45^\circ$ に注意して、
$$\angle\mathrm{DAG}=90^\circ-31^\circ-45^\circ=14^\circ$$
となります。
よって、$\displaystyle\angle\mathrm{ADG}=\frac{180^\circ-14^\circ}{2}=83^\circ$ となります。
(2)は下図のように $\mathrm{H}$ と $\mathrm{I}$ をとったときの $\triangle\mathrm{AEH}\equiv \triangle\mathrm{ADI}$ となることの証明です。
ここでも、等しい長さや角についてよく考えてみることが大切です。
まずは合同な正方形の1辺であることから $\mathrm{AE=AD}$ が言えます。次に、正方形の内角の1つであることから $\angle\mathrm{AEH}=\angle\mathrm{ADI}=90^\circ$ となります。
もう1つは、辺を狙う(2辺とその間の角)か角を狙う(1辺とその両端の角)かということになりますが、辺に関する条件はほぼないに等しいので角から考えていきましょう。
ここで着目するのは、$\angle\mathrm{EAF}=\angle\mathrm{CAD}=45^\circ$ です。このとき、
\begin{align*}
&\angle\mathrm{EAH}=\angle\mathrm{EAF}-\angle\mathrm{HAI}\\
&\angle\mathrm{DAI}=\angle\mathrm{CAD}-\angle\mathrm{HAI}
\end{align*}
となり、ともに $45^\circ-\angle\mathrm{HAI}$ となることから、$\angle\mathrm{EAH}=\angle\mathrm{DAI}$ となります。
以上から、$\triangle\mathrm{AEH}\equiv \triangle\mathrm{ADI}$ が証明できました。
(3)は少し難しく感じた人もいたかもしれませんが、分からないものはとりあえず文字で置いて考えていくと道筋が見えてくるはずです。
与えられた条件は(2)の図において、$\triangle\mathrm{AEH}$ の面積が $60\mathrm{cm}$、四角形 $\mathrm{ABCI}$ の周の長さが $\triangle\mathrm{AEH}$ の周の長さより $14\mathrm{cm}$ 長いというものです。このとき、正方形 $\mathrm{ABCD}$ の一辺の長さを求めよという問題でした。
まずは、正方形の1辺を $x\mathrm{cm}$ とします。(以下、面倒なので単位は省略します)
$\mathrm{AB=BC=AE=CD}=x$ となります。$\triangle\mathrm{AEH}$ の面積が $60$ となることから、
$$\frac{1}{2}x\times \mathrm{EH}=60$$
となります。よって、$\displaystyle\mathrm{EH}=\frac{120}{x}$ となります。
このとき、(2)で証明した $\triangle\mathrm{AEH}\equiv \triangle\mathrm{ADI}$ から $\mathrm{EH=DI}$ であることから
$$\mathrm{CI=CD-DI}=x-\frac{120}{x}$$
となります。また、同じく合同であることから、$\mathrm{AH=AI}$ となります。これを $y$ としておきましょう。
そうすると、四角形 $\mathrm{ABCI}$ の周の長さは
$$2x+\left(x-\frac{120}{x}\right)+y$$
となります。また、$\triangle\mathrm{AEH}$ の周の長さは
$$x+\frac{120}{x}+y$$
となります。この2式の差が14となるので
$$2x-2\times \frac{120}{x}=14$$
となります。$y$ は求まりませんが、差をとると相殺されるため求める必要がありません。
これを整理すると
$$x^2-7x-120=0$$
さらに $(x-15)(x+8)=0$ と因数分解できます。$x>0$ なので $x=15$ となり、求める辺の長さは $15$ となります。
大問7(復習おすすめNo.1)
内容 空間図形
難易度 標準
最後はお決まりの空間図形の問題でした。(1)、(2)は平易な問題だったのできちんと得点しておきたいところです。上位校を狙う人は(3)まで解き切ってほしいレベルの問題でした。
上図において、$\mathrm{AB}=8$、$\mathrm{BC}=6$、$\mathrm{CA}=10$、$\mathrm{AD}=4$ および $\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{ABE}=\angle\mathrm{CBE}=90^\circ$ が与えられています。
(1)はとくに解説は必要ないでしょう。
(2)は図のように辺 $\mathrm{FC}$ を延長して $\mathrm{G}$ をとり、$\mathrm{CG=8cm}$ としたときの $\triangle\mathrm{ABG}$ の面積を求める問題でした。
模範解答では合同から考えていますが、ここはシンプルに三平方の定理を用いるのが良いでしょう。
まだ習っていないという人はこの際、教科書等を読んで理解しておくことをオススメします。
$\triangle\mathrm{GBC}$ は $\angle\mathrm{BCG}=90^\circ$ の直角三角形なので
$$\mathrm{GB}=\sqrt{8^2+6^2}=\sqrt{100}=10$$
したがって、
$$\triangle\mathrm{ABG}=\frac{1}{2}\times 10\times 8=40$$
となります。
(3)は今回の問題の中では比較的難易度の高い問題でしたが、1つずつ確認していくと、基本的な内容の積み重ねであることがわかります。こうした問題こそ理解度の差が現れます。まずは設定を確認しておきましょう。
(2)の図において $\mathrm{AG}$ の中点 $\mathrm{M}$ が新たに与えられます。このとき四角錐 $\mathrm{B-ADFM}$ をつくり、その体積を求めよという問題です。
分かりやすいように底面を色で塗ってみます。
これでも分かりにくいので線を太くしてみましょう。
この四角錐の体積を求めるわけですが、模範解答のように $\mathrm{B}$ から $\mathrm{AB}$ に垂線を下ろし、$\triangle\mathrm{ABC}$ の面積を経由して $\mathrm{BH}$ を求めていく方法が、よく見かける解法であり簡単な方法ではないかと思います。まずは、そちらをよく理解しておきましょう。
ここでは、せっかくなので高さを求めずに底面積の比から考える方法でやってみたいと思います。
まずは、図のように四角錐 $\mathrm{B-ADFM}$ と四角錐 $\mathrm{B-ADFC}$ を考えます。この2つは高さが等しいので、体積の比は底面積の比で求められます。
底面の四角形$\mathrm{ADFM}$と長方形$\mathrm{ADFC}$の面積を考えましょう。
このとき、下図のように長方形を半分にした$\triangle\mathrm{AFC}$と$\triangle\mathrm{AFG}$に着目します。条件から$\mathrm{CF:CG=4:8=1:2}$なので$\mathrm{FC:CG=1:3}$です。
$\triangle\mathrm{AFC}$ の面積を1とすると、長方形 $\mathrm{ADFC}$ は2、また $\triangle\mathrm{AFG}$ は3となります。さらに、$\triangle\mathrm{AMF}$ は $\triangle\mathrm{AFG}$ の半分なので($\mathrm{M}$ が中点であることに注意)$\displaystyle\frac{3}{2}$ となります。
整理すると、長方形 $\mathrm{ADFC}$ は2、また四角形 $\mathrm{ADFM}$ は$\triangle\mathrm{ADF}$($\triangle\mathrm{AFC}$ と同じ面積)と $\triangle\mathrm{AMF}$ の和なので $\displaystyle\frac{5}{2}$ となり、結局
$$\mathrm{ADFC:ADFM}=2:\frac{5}{2}=4:5$$
となります。そして、四角錐$\mathrm{B-ADFC}$は下図のように、三角柱$\mathrm{ABC-DEF}$から三角錐$\mathrm{B-DEF}$を引いたものとなります。
三角錐は三角柱の$\displaystyle\frac{1}{3}$の体積となり、残った四角錐$\mathrm{B-ADFC}$は三角柱の$\displaystyle\frac{2}{3}$となるので
$$\frac{2}{3}\times \left(\frac{1}{2}\times 8\times 6\right)\times 4=64$$
したがって、求める$\mathrm{B-ADFM}$の体積は
$$64\times \frac{4}{5}=80$$
となります。
こっちの方が面倒になりますが、考え方はとても大切なので確認しておいてほしいですね!
まとめ
問題をゲットしてすぐに解いてみたのですが、全体で20分ちょっとほどで解き終わりました。解き終わってすぐの感想としては「かなり簡単だなあ」という感じでしたが、最近の模試の問題の傾向を考えるとスタンダードな問題レベルだったと思います。
数学が得意な人は満点が取れたと思いますが、そうでない人には苦しい問題が多かったかもしれません。最近は平均点の前後に大半の生徒が密集するような成績分布となっており、上位層がかなり薄くなってきています。今回の模試の問題レベルであってもそこまで平均点は高くならないでしょう。そのため、数学が得意な生徒は他の人と圧倒的な差をつけやすくなっています。
まだまだ入試本番までは時間があるため、焦ってあれこれやる必要はありませんが、そろそろ基本的な知識などはしっかりと頭に入れておかなければならない時期となりました。
とくに図形分野(中2内容)の知識が曖昧なままの人が多いように思うので、そのあたりの復習に力を入れてみるのもいいかもしれません。