金沢市統一テストの直後に第5回石川県総合模試が実施されました。テストが連続して大変だったと思いますが、統一テストも総合模試も復習しないで受けっぱなしになっていればまったく無意味なものとなります。早めに復習をやって、弱点についていろいろと考えておくことが大切です。
すでに結果が返ってきていますが、数学は平均点が51.1点と今年度の中では比較的高めの平均点となりました。しかし、得点分布を見ると75点以上の高得点者が非常に少なく、歪な形の得点分布となっています。
ざっくりとした言い方ですが、易しい問題と難しい問題の差が大きく、易しい問題を取りこぼさなければそれだけで上位層になれるという感じのテストでした。上位校狙いの人は65〜70点あたりがクリアできていたかどうかがポイントになりそうです。
こうなると、後半の図形の(3)、前半の関数の(3)あたりは解かなくても十分上位に入り込めてしまうことになります。まあ、合格するだけでいいのであれば、そうした戦略で受験勉強をするのもいいかもしれませんが、中学生の間に幾何の基礎をきちんと固めておかないと高校での数学はかなり厳しくなると言えるでしょう。
というわけで、今回は全部の問題の解いてみたはやりませんが、気になった問題をピックアップして解説しようかなと思います。
大問7の解説
今回は、ほとんどの人が後回しにしたであろう、大問7の空間図形の問題を取り上げます。
こんな感じの直方体を題材にした問題でした。与えられた条件は、$\mathrm{AB=AE=8}$、$\mathrm{AD}=4$ というもの。あ、例によって単位は面倒なので省略します。
(1)は $\mathrm{DG}$ とねじれの位置にある辺の長さの和というちょっとした引っ掛けのある問題でした。
ねじれの位置にあるのは、$\mathrm{AB}$、$\mathrm{BF}$、$\mathrm{FE}$、$\mathrm{AE}$、$\mathrm{BC}$、$\mathrm{EH}$ となるので、これらの和をとって
$$8+8+8+8+4+4=40$$
となります。この問題でも正答率は50%を切っていたので、少し気をつけておきたいところです。
(2)では、$\mathrm{AB}$ の中点 $\mathrm{M}$、$\mathrm{BF}$ の中点 $\mathrm{N}$ をとります。なお、$\mathrm{D}$、$\mathrm{M}$、$\mathrm{N}$、$\mathrm{G}$ は同一平面上であることも書かれています。$\mathrm{MN}=a$ としたとき、四角形 $\mathrm{DMNG}$ の周の長さを $a$ で表せという問題でした。
模範解答は相似を使わない縛りがあるせいか、かなり面倒な解き方になっていました。
当塾ではすでに相似は終わっているので、相似を用いてシンプルに考えます。
まず、$\mathrm{MN}$ の長さですが、これは面 $\mathrm{CGHD}$ を正面から見た図で考えていきましょう。もとの立体は直方体なので、図のように、$\mathrm{M}$ は $\mathrm{CD}$ の中点、$\mathrm{N}$ は $\mathrm{CG}$ の中点と見ることができます。そうすると中点連結定理によって、$\mathrm{GD}=2a$ がすぐに求まります。
次に面 $\mathrm{ABCD}$ を正面から見た図を考えます。
上図の $\triangle\mathrm{AMD}$ は1つ前の図の $\triangle\mathrm{CNM}$ と合同になるので、$\mathrm{MD}=a$ となります。さらに、対称性から $\mathrm{NG}=a$ もすぐに分かります。
したがって、求める$\mathrm{DMNG}$ の周の長さは
$$a+a+a+2a=5a$$
となります。
(3)は下図における、四角錐 $\mathrm{H-DMNG}$ の体積を求める問題でした。
総合模試はこんな感じの分かりにくい図を出してくるので、図を違う角度から描き直したりするといいのですが、時間もないのでなかなか余裕がないかもしれません。
さて、こうした立体の中に中途半端に浮かんでいる立体の体積を求める場合は、周りから削り取っていく方法と、いい感じに分割する方法がよく用いられます。もちろん、直接求められる場合もあります。
大事なことは計算しやすい面を見つけることです。ここでは、求める立体の面 $\mathrm{DGH}$ が直方体の面と同じ平面にあることに着目しましょう。面 $\mathrm{DGH}$ は簡単に計算できるので、この面を底面として計算できないかを考えます。
$\mathrm{MG}$ を繋いでみると、$\mathrm{M-DGH}$ という三角錐が計算できそうです。実際に、この三角錐は高さも $\mathrm{AD}$ に一致するのでサクッと計算できます。
問題は、三角錐 $\mathrm{M-DGH}$ と求める四角錐 $\mathrm{H-DMNG}$ との関係です。
色をつけてみると見やすいかもしれません。どこを頂点と見るかで少し変わってきますが、$\mathrm{H}$ を頂点とすると $\mathrm{H-MNG}$ という三角錐と $\mathrm{M-DGH}$ を加えると四角錐 $\mathrm{H-DMNG}$ となることがわかるでしょう。
ここがこの問題を解く上で最大のポイントとなります。分割によって2つの三角錐に分けられるのです。
しかも、この2つの三角錐 $\mathrm{H-MNG}$ と $\mathrm{M-DGH}$ は $\mathrm{H}$ を頂点として捉え直せば、ともに底面が同じ平面上に存在することから、高さも共有することが分かります。
ということは、底面積の比によって、体積を考えていくことができます。
先ほどの図を考えてみると、底面積の比は、$1:2$ となっていることが一目瞭然です。そのため、三角錐 $\mathrm{M-DGH}$ を求め、それを半分にすれば $\mathrm{H-MNG}$ も求められます。
では、三角錐 $\mathrm{M-DGH}$ を求めていきましょう。
これでもか!と線を強調してみると分かりやすいです。
底面 $\mathrm{DGH}$ の面積は
$$\frac{1}{2}\times 8\times 8=32$$
であり、高さは $\mathrm{AD}=4$ から、 $\mathrm{M-DGH}$ の体積は
$$\frac{1}{3}\times 32\times 4\ \cdots(\ast)$$
となります。これは計算しても簡単にはならないのでこのままにしておきましょう。
さらに、この半分の体積を足すことになりますが、わざわざ $(\ast)$ を $\displaystyle \frac{1}{2}$ して、なんてやっていては日が暮れてしまいます。$\displaystyle 1+\frac{1}{2}=\frac{3}{2}$ なので、一気に $\displaystyle \frac{3}{2}$ 倍すればOKです。
というわけで、求める四角錐 $\mathrm{H-DMNG}$ の体積は
$$\frac{3}{2}\times \frac{1}{3}\times 32\times 4=64$$
となります。