石川県公立高校入試まで残り1ヶ月ほどとなりました。いよいよ最後の追い込みといった感じになってきていると思います。模試の復習もしっかりとやって本番に向けて着実に準備を進めていきましょう!
今年度の模試を連続受験してきた人は、第1回の模試から再度復習をやってみると良いでしょう。できていなかった部分がしっかりと改善されていることが実感できるのではないかと思います。また、一方で改善できずに残っている課題も見えてくるのではないかと思います。本番までに、どのあたりに手をつけていくかという計画も立てやすいでしょう。
概観
今年度の最終回ということで後半の図形は中3内容が中心となっていました。まだ理解が不足している人には少し難しく感じたかもしれませんが、しっかりと理解を深めてきた人には易しく感じられる内容だったのではないかと思います。平面図形は円が中心となる問題、空間図形では体積比と三平方の定理の問題が出題されていました。いずれも、正答率は低いでしょう。一方で、前半は関数が少し面倒な問題でしたが、それ以外は軽めの問題でした。
今年度はずっと易しめの問題が続いていまいたが、最終回もここ数年の総合模試の中ではかなりマイルドな内容の出題となりました。しかし、中学生の数学力の低下を考えると、今回の問題であっても、平均点はそこまで上がらないでしょう。
難易度としては「やや易」でもいいかなというレベルですが、今年度の状況を考えると「標準」としておくのが良いかと思います。
全体的な難易度 標準
各問題の概要
以下、各問題の解説となります。問題を用意してご覧ください。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
大問1はいつも通りの計算を中心とした内容でした。
(1)ではオの根号を含む計算を取り上げましょう。
$\sqrt{12}\div 2$ の計算などは、$2\sqrt{3}\div 2$ と計算をしている人をよく見かけますが、$\sqrt{12}\div\sqrt{4}$ と見る方が良いでしょう。$\sqrt{27}$ はすぐに $3\sqrt{3}$ と見えて欲しいですし、$\displaystyle \frac{15}{\sqrt{3}}$ も見た瞬間に $5\sqrt{3}$ と変換できるようになると良いでしょう。
(2)を展開して因数分解し直したという人もいると思いますが、無駄な計算が増えるので出来れば避けましょう。ここはそのまま $(x+5)^2=1$ として、$x+5=\pm1$ とする方がミスも少なくなるでしょう。
(3)は一体どうしちゃったんだろうという出題でした。$0.4\mathrm{kg}$ の $a$ %は何 $\mathrm{g}$ かという問題です。さすがに正答率は100%に近いものとなると思いますが、単位の見間違えなどもありそうです。$0.4\mathrm{kg}=400\mathrm{g}$ なので
$$400\times \frac{a}{100}=4a$$
と計算せずとも求められるようになっておきたい問題です。
(4)も頻出の問題ですね。$\sqrt{X^2}$($X$ は整数)という形になればOKなので、根号内が平方数となるようなものを考えます。
$$180=2^2\times 3^2\times 5$$
となるので、$n=5$、$n=2^2\times 5$、$n=3^2\times 5$、$n=2^2\times 3^2\times 5$ すなわち、$n=5$、$n=20$、$n=45$、$n=180$ となります。
(5)は箱ひげ図をもとにした問題でした。これも問題として「本当にこんな出題で大丈夫?」と心配になる問題でした。データの総数が100なので、最小値と最大値は必ず存在しますが、中央値と第1・第3四分位数はその値をとる生徒は存在しません。
大問2
内容 確率
難易度 易
大問2は確率問題でした。非常に簡単な問題だったので、満点を取りたいところです。
ポイントは「どの玉を取り出すことも同様に確からしい」というところです。そのため、玉を1つ1つ区別して考えなければなりません。
50の玉が1個(Aとします)、30の玉が2個(B、Cとします)、10の玉が3個(D、E、Fとします)
(1)は、1個取り出すとき、30の玉を取り出す確率を求める問題です。取り出す場合の数は、A、B、C、D、E、Fの6通りあり、そのうち、B、Cが30の玉となるので、求める確率は
$$\frac{2}{6}=\frac{1}{3}$$
となります。
(2)は、2個取り出すとき、取り出した玉に書かれた数の和を得点とし、その得点が60となる確率を求める問題でした。
まず、取り出し方が全部で何通りになるか数えましょう。
(A、B)、(A、C)、(A、D)、(A、E)、(A、F)
(B、C)、(B、D)、(B、E)、(B、F)
(C、D)、(C、E)、(C、F)
(D、E)、(D、F)
(E、F)
の15通りとなります。このうち、和が60となるのは、50(A)と10(D、E、F)を取り出す3通りと、30(B、C)を2つ取り出す1通りなので、求める確率は
$$\frac{4}{15}$$
となります。
大問3(復習おすすめNo.2)
内容 関数
難易度 標準
今回の関数はダイヤグラムの問題でした。P地点からQ地点までの3600mをボートで移動する問題でした。少し問題文の読み取りに時間がかかった人がいたかもしれません。ん?となる部分があったのも確かです。
これより、釣りをしている間は、ボートは川の流れと同じ速さで下流に流される。また、川の流れの速さは一定である。
という文章と共に、下のようなグラフが与えられていました。文章と照らし合わせたら、あとはグラフを見ながら考えましょう。
(1)は川の流れの速さを求める問題です。これはグラフのどこに該当するか分かったでしょうか。10分後から50分後までの間のグラフが該当します。この間、1800mから600mまでの1200mを40分で進むことになるので、分速は30mということになります。
(2)はボートの静水時での速さを求める問題でした。これは、ちょっと難しく感じた人がいたかもしれません。大事なことは、川を下るときも上るときも、川の水は一定の速さで流れ続けているということです。下流に向かう場合には、川の流れの速さがプラスされ、逆に上流に向かう場合は川の流れの速さに逆らって上ることになります。中学受験の問題によく出題される問題です。
川を下るときは、3600mから1800mまでの1800mを10分で進むので、分速180mで進んでいます。また、川を上るときは600mから3000mまでの2400mを20分で上っています(わかりやすい点をとっています)。したがって、分速120mで進んでいます。
川の流れは分速30mなので、ボートの速さは分速150mとなることが確認できます。
わかりにくい場合は、ボートの速さを $x$ とした場合、$x+30=180$、$x-30=120$ として考えてみましょう。
(3)は、Bさんが、AさんがP地点を出発するのと同時にQ地点を出発して、ボートに乗ってPまで進んだという設定です。ボートの速さはAさんもBさんも同じです。グラフにかくと以下のようになります。
AさんとBさんが出会うのは、グラフの交点となる部分です。Aさんは釣りをしているところなので、(1)で求めた分速30m(ちょうど1マスの対角線となります)で下っているため、グラフの傾きは $-30$ となります。また、$y$ 切片は $(10,\ 1800)$ から1マス戻って考えればいいので、2100となり、
$$y=-30x+2100$$
となります。Bさんのグラフは分速120mなので、そのまま $y=120x$ となります。あとは、これらの式から $y$ を消去して
$$120x=-30x+2100$$
を解いて、$x=14$ となります。
これでも良いですが、せっかくなので図形的な考察もしてみましょう。
グラフから、図の点について A$(0,\ 2100)$、B$(30,\ 3600)$、C$(30,\ 1200)$ がすぐに分かるので、$\mathrm{AO:BC}=2100:2400$ となります。三角形の相似が見え、相似比は $7:8$ です。
したがって、$\displaystyle 30\times \frac{7}{7+8}=14$ と求めることができます。
大問4
内容 方程式
難易度 易
方程式も非常に簡単で、教科書の例題レベルでした。
「ある自然数を2乗してから3倍するところを、誤って3倍してから2乗したため、計算結果が150大きくなった」というものです。はじめの自然数を求めればOKなので、これを $N$ とします。
$$3N^2+150=(3N)^2$$
となるので、整理して
$$N^2=25$$
$N$ は自然数なので、$N=5$ となります。
大問5
内容 作図
難易度 易
作図は難しめの問題が続いていましたが、今回は非常に易しい問題でした。円周角をよく理解していればすぐに作図できたのではないかと思います。
点 $\mathrm{P}$ は $\mathrm{BC}$ 上にあり、かつ、$\angle\mathrm{APD}=90^\circ$ を満たします。
$\angle\mathrm{APD}=90^\circ$ からすぐに $\mathrm{AD}$ に対する円周角がイメージできればOKです。$\mathrm{AD}$ が円の直径となることも当然の事実として押さえておきたいところです。
あとは、$\mathrm{AD}$ の中点 $\mathrm{O}$ をとり、$\mathrm{O}$ を中心とする円を作図して、$\mathrm{BC}$ との交点を求めればOKです。
大問6(復習おすすめNo.1)
内容 平面図形
難易度 標準
平面図形も円周角を題材にした問題でした。作図の問題と被る内容もあったので、正直、作図は別の問題で良かったのではないかと思いますが、まあ、見ていきましょう。
(1)は周の長さを求める問題でした。面倒なので単位は省略します。図のように、$\mathrm{AO}$ と $\mathrm{AB}$ を直径とする2つの円があります。
図において、$\mathrm{AO=10}$ としたときの色付き部分の周の長さを求めよというものです。大きい半円の円弧の長さと小さい半円の円弧の長さと10を加えれば求まります。
$$10\pi+5\pi+10=15\pi+10$$
と計算すれば良いでしょう。
(2)は $\mathrm{OB}$ 上に点 $\mathrm{C}$ をとって、点 $\mathrm{C}$ を通る線分 $\mathrm{AB}$ の垂線と円 $\mathrm{O}$ との2つの交点を $\mathrm{D}$、$\mathrm{E}$ とします。そして、以下のように点と点を結びます。
このとき、$\triangle\mathrm{AOF}\sim \triangle\mathrm{EBC}$ を証明する問題です。
相似の証明なので、やはり二角相等を狙っていくのが基本です。そして、これでもか!と円が主張しているので円周角を見ていくのが良いでしょう。
大きい円の弧 $\mathrm{DB}$ に対する円周角は等しいので、
$$\angle\mathrm{OAF}=\angle\mathrm{BEC}$$
が言えます。また、小さい円についても直径に対する円周角を考えると $\angle\mathrm{AFO}=90^\circ$ が言えます。
さらに、仮定から $\angle\mathrm{ECB}=90^\circ$ も言えるので、これによって $\triangle\mathrm{AOF}\sim \triangle\mathrm{EBC}$ であることが示せます。
(3)は少し考えないといけませんが、決して難しい問題ではありませんでした。
(2)の図にさらに、線分 $\mathrm{OD}$ を加えます。そして、$\mathrm{OC=5}$、円 $\mathrm{O}$ の半径が $13$ という条件が加わります。このとき、$\triangle\mathrm{ODF}$ の面積を求めよという問題でした。
パッと見て、$\triangle\mathrm{OCD}$ に三平方の定理を用いて
$$\mathrm{CD}=\sqrt{13^2-5-2}=\sqrt{144}=12$$
を求められることに気づくと思います。
次に、重要な役割をするのが円の弦となります。$\mathrm{AD}$ も $\mathrm{DE}$ も円の弦になっており、さらにその弦に垂線が下ろされていることに注意しましょう。円の弦に垂線を下ろすと、弦は垂線で二等分され、さらに合同な2つの三角形が出来上がります。つまり、$\triangle\mathrm{AOF}\equiv\triangle\mathrm{ODF}$ であることを良く理解しておきましょう。
このとき、$\triangle\mathrm{AOD}$ の面積は底辺を $\mathrm{AO}$、高さを $\mathrm{DC}$ として
$$\frac{1}{2}\times 13\times 12$$
で求められます。さらに、その面積を半分にしたものが $\triangle\mathrm{ODF}$ の面積であるため
$$\frac{1}{4}\times 13\times 12=39$$
と求められます。
また、少々面倒ですが、(2)で証明した相似を利用するのではないかという視点で眺めてみると別の方法も見えてきます。
(2)の相似を使うことを考えると、$\triangle\mathrm{AOF}$ や $\triangle\mathrm{EBC}$ まわりで分かることがないかを考えたいところです。
$\triangle\mathrm{AOF}\equiv\triangle\mathrm{ODF}$ なので、この問題では $\triangle\mathrm{AOF}$ の面積を求めれば良いということになります。これで(2)を利用できそうな感じがしてきました。あとは、線分の長さから比を求めていけば良いでしょう。
ここで、与えられた条件から $\triangle\mathrm{OCD}$ に三平方の定理を用いると
$$\mathrm{CD}=\sqrt{13^2-5-2}=\sqrt{144}=12$$
となります。さらに、弦 $\mathrm{DE}$ が点 $\mathrm{C}$ によって二等分されているので $\mathrm{CE}=12$ となります。
また、$\mathrm{BC}=13-5=8$ となります。
このとき、$\triangle\mathrm{EBC}$ の面積は
$$\frac{1}{2}\times 8\times 12=48$$
となることを押さえましょう。また、$\triangle\mathrm{EBC}$ に三平方の定理を用いると
$$\mathrm{EB}=\sqrt{12^2+8^2}=\sqrt{208}$$
となります。したがって、$\triangle\mathrm{AOF}$ と $\triangle\mathrm{EBC}$ の相似比は
$$\mathrm{AO:EB}=13:\sqrt{208}$$
となります。したがって、体積比は $13^2:208$ となります。したがって、$\triangle\mathrm{AOF}$ すなわち $\triangle\mathrm{ODF}$ の面積は
$$48\times \frac{169}{208}=39$$
となります。
大問7(復習おすすめNo.3)
内容 空間図形
難易度 易
今年度の空間図形はずっと易しい問題が続いており、出題者の「敬遠せずに解いて欲しい」という気持ちを感じます笑
なお、与えられた図は作図するのが大変だったので省略します、申し訳ありません。
(1)は円錐の断面を考える問題でした。これは迷わず正解しなければならない問題です。
(2)もよくある問題です。最短距離なので、直線で結べばOKですが、空間のまま考えるのは難しいので展開図を利用して平面の話に持ち込みましょう。
三角錐の側面の展開図はおうぎ形となります。底面の半径が $4$ なので、円周の長さは $8\pi$ となります。これが、おうぎ形の弧の長さとなります。母線の長さは展開したおうぎ形の半径となるので直径は当然 $32$ であり、$32\times \frac{1}{4}=8$ となることから、中心角が $90^\circ$ となることが分かります。
したがって、図の直角二等辺三角形の斜辺の長さが求める最短距離となります。直角二等辺三角形の辺の比(三平方の定理からすぐに導けます)を用いると
$$16\sqrt{2}$$
がすぐに分かるでしょう。
(3)は円錐と円錐に内接する球の問題でした。これは断面から考えていくのが良いでしょう。
球の半径が $\sqrt{15}$、円錐の高さが $5\sqrt{15}$ とあるので、断面図を描くと以下のようになります。
球の体積は半径が与えられているので、すぐに
$$\frac{4}{3}\pi (\sqrt{15})^3=20\sqrt{15}\pi$$
と分かります。また、上の図において対称性に気をつけると $\triangle\mathrm{CEB}\sim \triangle\mathrm{CDI}$ が分かるでしょう。
このとき、$\mathrm{CI}=4\sqrt{15}$ であり( $\mathrm{EI}$ も半径なので $\sqrt{15}$ です!)、$\triangle\mathrm{CDI}$ に三平方の定理を用いると
\begin{align*}
\mathrm{CD}&=\sqrt{\mathrm{CI}^2-\mathrm{DI}^2}\\
&=\sqrt{225}=15
\end{align*}
したがって、$\triangle\mathrm{CEB}\sim \triangle\mathrm{CDI}$ から $\mathrm{CD:CE=DI:EB}$ が成り立つので、
$$15:5\sqrt{15}=\sqrt{15}:\mathrm{EB}$$
よって、$\mathrm{EB}=5$ となります。
ということは、円錐の体積は
$$\frac{1}{3}\times 5\times 5\times \pi\times 5\sqrt{15}=\frac{125\sqrt{15}}{3}\pi$$
となります。したがって、求める体積比は
$$\frac{125\sqrt{15}}{3}\pi:20\sqrt{15}\pi=125:60=25:12$$
となります。
今回は、考え方を工夫する問題というよりも計算力を試される問題でした。根号が入る計算になると正答率が下がるため、こういう問題にもしっかりと取り組んでおきたいところです。
まとめ
というわけで、最終回の数学も比較的易しい問題で構成されていました。100点の人もそれなりにいるのではないかと思います。
総合模試は来年度以降もこのまま易化傾向が続いていきそうな感じがしますね。平均点が30点台になってしまうと、中位層の成績の判断が難しくなるため、どうしても問題を易しくしなければいけません。問題を難しくすると、上位層は別として中位層から下は団子状態になり、正確な学力の把握が難しくなります。
そういうこともあって、今年度はかなり易しい問題が増えましたが、それでも平均点が上がらず、中学生の数学力の低下がかなり進行していることが明らかになりました。当然、この状況は高校生の数学力の低下にもつながっています。
こうした背景には、おかしな指導と間違った勉強法が蔓延していることが影響していると考えています。
入試においても、「後半の図形は捨てて、いかに前半で取るかが大事!」などという指導者がいますが、受験戦略としては正しくとも(個人的にまったく正しいとは思いませんが)、本当に十分な学力が身につくとは思えません。進学後に大変な思いをするのは指導を受けた生徒です。
こんなことを書いていると、ただの愚痴になってしまうのでやめましょう笑
大切なことは、残された時間の中で学力を伸ばしていくこと、そして、もう一度自分の将来について考えてみることです。
自分はどうしたいのか、そのためにどういう選択をするのか、私立入試の結果も踏まえてじっくりと考えてみてください。
自分で考えて納得できる状況で入試本番を迎えるのがベストです。もちろん、最後まで勉強を続けるのは当然ですが。
みなさんが、晴れやかな気持ちで志望校を受験できることを願っております。