2025年度石川県公立高校入試の数学を解いてみた

随分と時間が経ってしまい今更感漂いますが、2025年度入試の解説記事です。過去問演習などの際にお読みいただければと思っています。
概観
問題数や出題分野については大きな変化ありませんでした。
出題内容は大問順に、小問集合、確率、関数、方程式、作図、平面図形、空間図形という内容でした。
問題文が長めのものが増えたというのが2025の特徴です。パッと見では面倒な問題が増えたなあという感じですが、解いてみると意外とあっさりした内容でした。
残念ながら特筆するような面白い問題もありませんでした。
問題文の長文化は全国的なトレンドなので、今後もある程度長めの問題文が出てくると思っておいた方が良さそうですね。
全体的な難易度標準
各問題の概要
ここからは各大問ごとの内容を見ていきます。
大問1・小問集合
難易度易
前半は、学校のワークなどにもよく出てくる計算問題ばかりでした。ここは、しっかりとミスなく終わらせたいところです。計算の工夫をつねに意識し、暗算力を高めることが大切です。
(1)で正答率が低くなるのはエとオなので、計算規則をよく理解しておく必要があります。とくに根号の入った計算は、いろいろな問題をやっておくと良いでしょう。
今年の問題では、オの $\displaystyle 3\sqrt{2}-8\sqrt{5}\times \frac{1}{\sqrt{10}}$ の計算を取り上げたいと思います。とくに $\displaystyle 8\sqrt{5}\times \frac{1}{\sqrt{10}}$ の計算をどうするが1つのポイントです。
まず、$\displaystyle 8\sqrt{5}\times \frac{1}{\sqrt{5}\times \sqrt{2}}$ ように見て $\displaystyle \frac{8}{\sqrt{2}}$ です。あとは有理化も暗算で $4\sqrt{2}$ とできれば完璧でしょう。
途中式をごちゃごちゃ書く方が計算ミスしやすいので、できるだけ暗算で処理する練習をしましょう!
(2)の2次方程式は、単純に解の公式を利用するだけの問題でした。
(3)も根号についての基本的な問題でした。$8<\sqrt{n}<8.2$ をすぐに $\sqrt{64}<\sqrt{n}<\sqrt{67.24}$ とできればOKです。
(4)は最近ではあまり出題されることのない演算の問題でした。$a\ast b=ab-4b+5$ という $\ast$ の演算規則を考えます。$3\ast(2x)=4$ となる $x$ を求める問題ですが、基本的に代入して計算するだけの問題です。
こうしたあまり見かけない問題になると手が止まってしまう人が多いように感じます。解き方に頼る勉強をしていると、試行錯誤して考えるという数学では当たり前のことができなくなってしまうので気をつけましょう。
(5)は箱ヒゲ図の問題でした。この問題は案外時間がかかる人がいるかもしれませんが、消去法で考えていくとサクッと解けます。というか、順番に考えれば勝手にエが消去されずに残って正解となります。
エについてちゃんと考えようとすると結構面倒です!
大問2・確率
難易度標準
これは見た瞬間に嫌になるタイプの問題でした。問題文がとても長いため、飛ばしたという人もいたのではないでしょうか。
しかも、これだけ問題文が長いにも関わらず、実際に問題を解くために必要な部分はほんの一部という見掛け倒しでした。
個人的には、こういう問題は出題しないで欲しいと思っています。「迷宮トンネル」だの「お助けカード」だのどうでもいい名称が非常に煩わしく感じました。
問題としては3人がサイコロを振って、出た目の数に応じてコマを動かす「すごろく」の問題でした。
(1)はA、B、Cの3人が投げる順番が何通りあるかという問題でした。これくらいは全部書き出しましょう。
A-B-C | B-A-C | C-A-B |
A-C-B | B-C-A | C-A-B |
の全部で6通りとなります。
(2)が非常に面倒な問題でした。まず、求めるものをよく確認しましょう。
AさんとBさんのそれぞれのコマが③のマスに止まる確率
を考えればOKです。
次に規則を確認します。①〜④の迷宮トンネルをぐるぐるするそうです。
Aさんはお助けカードXを使うので、出た目の数に1を足した数だけコマを進めることになります。Bさんはお助けカードYを使うので、2回続けて投げ出た目の合計の数だけコマを進めることになります。
では、Aさんの確率を考えましょう。
まずサイコロを1回ふるので、全部で6通りの目の出方があります。①からぐるぐるして③に止まるためには、3マス進むか、1周して7マス進むかのいずれかです。これは、2の目が出て $+1$ 3となる場合と、6の目が出て $+1$ して7となる場合の2通りが考えられます。したがって、Aさんの確率は
$$\frac{2}{6}=\frac{12}{36}$$
となります。次にBさんの確率を考えましょう。
サイコロを2つふるので、全部で36通りの目の出方があります。①からぐるぐるして③に止まるためには、3マス進むか、1周して7マス進むか、2周して11マス進むかのいずれかです。これは、以下の10通りがあります。
3マス | (1,2) | (2,1) | ||||
7マス | (1,6) | (6,1) | (2,5) | (5,2) | (3,4) | (4,3) |
11マス | (5,6) | (6,5) |
よって、B3の確率は
$$\frac{10}{36}$$
以上から、Aさんの方がBさんより大きくなります。
大問3・関数
難易度標準
大問3は関数と図形の融合問題でした。頻出分野なので、手を出しやすかったと思いますが、(3)がやや面倒な問題となっていました。
(1)は図のように $y=ax^2$ と $y=-x^2$ のグラフおよび点Aの座標 $(-3,\ 5)$ が与えられていました。

ここから $a$ の値を求める問題でしたが、これは代入するだけなので問題なくできた人がほとんどでしょう。
$5=a\times (-3)^2$ より、$\displaystyle a=\frac{5}{9}$ となります。
(2)は $a=2$ のとき、下図のような $x$ 座標が $-4$ である点 $\mathrm{B}$ が与えられていました。さらに $\mathrm{B}$ から $x$ 軸に平行な直線を引いてグラフと交わる点を $\mathrm{C}$、また $\mathrm{C}$ から $y$ 軸に平行な直線を引いてグラフと交わる点を $\mathrm{D}$ としたとき、直線 $\mathrm{BD}$ の式を求める問題でした。

やるべきことは、$\mathrm{B}$、$\mathrm{C}$、$\mathrm{D}$ の座標を求めていくことです。$\mathrm{B}$ は $y=2x^2$ 上の点なので、$(-4,\ 32)$ となります。$\mathrm{C}$ は $\mathrm{B}$ と $y$ 軸に関して対称な点となるので、$(4,\ 32)$ です。また、$\mathrm{D}$ は $y=-x^2$ 上の点となり、$x$ 座標は $\mathrm{C}$ と同じ $4$ となるので、$(4,\ -16)$ となります。
このとき、直線 $\mathrm{BD}$ の傾きは $\mathrm{BD}=8$、$\mathrm{CD}=48$ に注意して
$$-\frac{48}{8}=-6$$
となります。傾きが $-6$ で$\mathrm{D}(4,\ -16)$ を通ることから $-6\times 4+8=-16$ を考えて
$$y=-6x+8$$
が求める直線です。
$y=ax+b$ とおいて・・・みたいな考えたも良いですが、傾きや $y$ 切片を暗算で求められるようにしておくと良いですよ!
(3)は $\displaystyle a=\frac{1}{2}$ のとき平行四辺形 $\mathrm{EFGH}$ の $\mathrm{G}$ の座標を求める問題でした。定番の問題ですが、手こずった人も多かったのではないかと思います。
$\mathrm{E}$、$\mathrm{F}$ の $x$ 座標はそれぞれ $2$、$-1$ と与えられています。

まずは $\mathrm{E}$、$\mathrm{F}$ の座標を求めましょう。どちらも $\displaystyle y=\frac{1}{2}x^2$ 上の点なので、$\mathrm{E}(2,\ 2)$、$\displaystyle \mathrm{F}\left(-1,\ \frac{1}{2}\right)$ となります。
このとき、下図のような $\mathrm{F}$、$\mathrm{L}$、$\mathrm{E}$(直角三角形)を考えます。

$\mathrm{FL}$ は$\mathrm{F}$ と $\mathrm{E}$ との $x$ 座標の差なので $2-(-1)=3$ となります。また、$\mathrm{EL}$ は $y$ 座標の差となるので、$\displaystyle 2-\frac{1}{2}=\frac{3}{2}$ となります。
平行四辺形であることから、 $\mathrm{G}$、$\mathrm{M}$、$\mathrm{H}$ でも同様に考えて、$\mathrm{GM}=3$、$\displaystyle\mathrm{HM}=\frac{3}{2}$ となります。
いま、$\mathrm{G}(p,\ -p^2)$ とおくと、$\displaystyle\mathrm{H}\left(p+3,\ -p^2+\frac{3}{2}\right)$ となります。このとき、$\displaystyle\mathrm{H}\left(p+3,\ -p^2+\frac{3}{2}\right)$ も $y=-x^2$ 上の点となるので
$$-p^2+\frac{3}{2}=-(p+3)^2$$
2次方程式に見えますが、展開して整理すれば $p^2$ は消えます。
これを解くと、$\displaystyle-\frac{7}{4}$ となります。したがって
$$\mathrm{G}\left(-\frac{7}{4},\ \frac{49}{16}\right)$$
大問4・方程式
難易度易
からあげ300個を3個入りと5個入りに分けて販売する問題でした。3個入りは1セット150円、5個入りは1セット200円での販売です。残り30分で、5個入りはすべて売り切れ、3個入りが10セット残ったので、これを20%引きで売り捌いたようです。売上は13500円だそう。
3個入りを $x$ セット、5個入りを $y$ セット売ったことにすると、たこ焼きの個数について $3x+5y=300$ となります。また、売上については
$$150(x-10)+1200+200y=13500$$
となります。これを連立して解けば、$x=60$、$y=24$ が得られます。
大問5・作図
難易度標準
作図は難しい問題が出る年度もありますが、今年度は程良い難易度の問題だったのではないかと思います。

上図において、$\angle\mathrm{ADC}=80^\circ$
- 点Pは平行四辺形ABCDの内部にある
- $\angle\mathrm{PDC}=40^\circ$
- $\angle\mathrm{BPE}=90^\circ$
まず、$\angle\mathrm{PDC}=40^\circ$ については $\angle\mathrm{ADC}=80^\circ$ の角の二等分線が怪しいと思って欲しいところです。
$\angle\mathrm{BPE}=90^\circ$ をどう考えるかがこの問題のポイントになります。$90^\circ$ はいろいろなものと繋がりを持ちますが、ここでは円周角の定理との繋がりを考えられたらOKです。
$\mathrm{BE}$ を直径とする円を作図すると、$\angle\mathrm{BPE}=90^\circ$ が成り立ちます。
あとは、これらの図形の交点を求めれば良いでしょう。
円周角と $90^\circ$ の繋がりはかなり大事です。
大問6・平面図形
難易度標準
大問6は円を中心とした平面図形の問題でした。(3)が少し難しめでしたが、どれも入試問題集などで扱われている典型的な問題でした。
与えられた図では、$\mathrm{AB=AC}$ が成立しています。また、$\mathrm{AC}$ と $\mathrm{BD}$ の交点が $\mathrm{E}$ となります。
(1)は下図のような角度が与えられており、$\angle\mathrm{AEB}$ の大きさを求める問題でした。

$\mathrm{AB=AC}$ から $\triangle\mathrm{ABC}$ が二等辺三角形になることに着目すると、$\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{ACB}=40^\circ$ となります。このとき、
$$\angle\mathrm{CBE}+\angle\mathrm{BCE}=\angle\mathrm{AEB}$$
となるので、$\angle\mathrm{AEB}=13^\circ+40^\circ=53^\circ$ となります。
(2)は定番の証明問題でした。三角形の合同なので比較的見えやすかったのではないかと思います。

条件、$\stackrel{\Large\frown}{\mathrm{AD}}=\stackrel{\Large\frown}{\mathrm{DC}}$ と $\mathrm{AB//CF}$も押さえておきましょう。
証明するのは $\triangle\mathrm{ABE}\equiv \triangle\mathrm{CAF}$ です。
- 仮定より$\mathrm{AB=AC}$
- 円周角の定理より、$\angle\mathrm{AEB}=\angle\mathrm{CFA}$
- $\mathrm{AB//CF}$ より $\angle\mathrm{BAE}=\angle\mathrm{ACF}$
したがって、$\triangle\mathrm{ABE}\equiv \triangle\mathrm{CAF}$ が言えます。
(3)は $\mathrm{AE}=4$、$\mathrm{EC}=1$、$\displaystyle\mathrm{CD}=\frac{5}{3}$ であるときの線分 $\mathrm{BC}$ の長さを求める問題です。(単位は省略します)

条件を書き込むと上図のようになります。$\mathrm{AC=AB}$ はここでも成り立っているので、$\mathrm{AB}=5$ が分かります。
また、$\triangle\mathrm{ABE}\sim \triangle\mathrm{DCE}$ となることも押さえておきましょう。これは円周角の定理からすぐに示せます。
$\triangle\mathrm{ABE}\sim \triangle\mathrm{DCE}$ において、相似比は
$$\mathrm{AB:DC}=5:\frac{5}{3}=3:1$$
したがって、${BE}=3$ であり、このとき $\mathrm{AB}=5$、$\mathrm{AE}=4$、$\mathrm{BE}=3$ であることから、$\angle\mathrm{AEB}=90^\circ$ となります。
したがって、$\triangle\mathrm{BCE}$ において三平方の定理を用いると
$$\mathrm{BC}=\sqrt{3^3+1^2}=\sqrt{10}$$
となります。
大問7・空間図形
難易度標準
大問7は直方体をベースとした問題でした。(3)などは空間図形らしい問題でなので、こういうタイプの問題をきちんと解けるように準備をしておきたいところです。
(1)はごく基本的な展開図の組み立ての問題です。これについては解説不要でしょう。
(2)は下図のように直方体を切り取ってできる立体を考える問題です。辺 $\mathrm{BC}$、$\mathrm{FG}$ の中点をそれぞれ $\mathrm{K}$、$\mathrm{L}$ とします。また、条件としては $\mathrm{AB}=2\sqrt{6}$、$\mathrm{AD}=2\sqrt{3}$、$\mathrm{AE}=3$ が与えられます。このとき、四角錐 $\mathrm{E-DHLK}$ の体積を求めよ、という問題でした。

素直に、底面積を $\mathrm{DHLK}$ として計算しようとするとかなり大変です。こういう場合には、底面をとり直したり、分割したり、より大きな立体から不要な部分を削ることを考えましょう。
ここでは、まず三角柱 $\mathrm{ADK-EHL}$ を取り出し、そこから三角錐 $A-DKE$ を削りとっていきましょう。下図を見ると明らかでしょう。

まず、三角柱 $\mathrm{ADK-EHL}$ の体積ですが、これは立方体の体積の半分となるので
$$\frac{1}{2}\times 2\sqrt{6}\times 2\sqrt{3}\times 3=18\sqrt{2}$$
です。
半分になる理由はすぐに分かりますか? こうした基礎的な理解が大切ですよ!
三角錐 $A-DKE$ は底面を三角形 $\mathrm{ADE}$ と見ると、高さが $2\sqrt{6}$ となります。よって、
$$\frac{1}{3}\times \frac{1}{2}\times2\sqrt{3}\times 3\times 2\sqrt{6}=6\sqrt{2}$$
以上から、求める立体の体積は
$$18\sqrt{2}-6\sqrt{2}=12\sqrt{2}$$
となります。
(3)は円錐の中に直方体がおさまっている問題でした。問題文も長く、ここは本番でも解かなかったという人が多かった問題だと思われます。数学が得意な人であれば、思ったほど大変な問題ではないので、しっかりと解き切れたのではないでしょうか。
図の作成が難しかったのでちょっと線の種類など変わっています。

ここから、上の円錐部分を切り取って下図のような図を考えます。

切り口の円周上を動く点 $\mathrm{P}$ について、$\triangle\mathrm{PMN}$ の面積が最大となるときの面積を求めよという問題でした。
まずは、面積が最大となるときの $\mathrm{P}$ の位置ですが、立体を真上から見た図で考えると良いでしょう。下図のように $\mathrm{MN}$ に対する $\mathrm{P}$ の位置が見えてきます。この三角形の面積を求めればOKです。

必要なものは大きい円の直径と点線の長さです。大きい円の直径をすぐに求めることはできないので、まずは小さい円の直径から考えていきます。
こ小さい方の円の直径は、下図における対角線 $\mathrm{BD}$ の長さと一致します。

したがって、三平方の定理を用いることで
$$\mathrm{BD}=\sqrt{(2\sqrt{3})^2+(2\sqrt{6})^2}=6$$
となります。
大きい方の円の直径については、相似から考えていきましょう。下図のように円錐を真横から見た図を考えていきましょう。

このとき、大きい三角形と小さい三角形の相似比は $8:5$ となるので、求める大きい円の直径(すなわち大きい三角形の底辺)は
$$6\times \frac{8}{5}=\frac{48}{5}$$
となります。これが $\mathrm{MN}$ の長さと等しくなります。
最後に求めるのは、$\mathrm{P}$ から $\mathrm{MN}$ に下ろした垂線の長さです。これも、図を用いて考えましょう。

ここでも三平方の定理から、$3\sqrt{2}$ がすぐに分かります。よって、求める面積は
$$\frac{1}{2}\times \frac{48}{5}\times 3\sqrt{2}=\frac{72}{5}\sqrt{2}$$
となります。
1つ1つのパートは難しくないのですが、あっちに行ったりこっちに行ったりが大変な問題でした。
解いてみての感想
昨年の解説は入試の翌日に動画でアップしたのですが、今年はあまり魅力的な問題がないこともあって、なかなか作業が進みませんでした。
解いてみてのいちばんの感想は「つまらない問題が多かった」ということです。
こうして解説記事を書きながら細部を点検してみましたが、数年前までのような魅力的な問題がなくなってしまったなあと残念な気持ちになりました。
もちろん、入試問題としては良問だと思いますが、石川県の数学の「おお、ここを出してきたか」といった嬉しさがありませんでした。
中学生の学力の低下が進行する中で、こうした典型的な問題に落ち着いてしまうのは仕方がないことかもしれませんが、将来的なことを考えると、こんなレベルでいいのだろうかと思わずにはいられません。意欲のある受験生には、「このくらい満点余裕ですよ!」と言ってもらいたいところです。
そんなわけで、今年も数学の指導にはより力を入れていかなければならないなと実感しました。
みんな、至誠塾で数学やろうよ!
そんな気持ちになりました笑