【数学が伸びない本当の理由】「分かったふり」をやめるところから始まる数学の勉強

数年前から高校生の途中入塾については慎重になってきており、当塾としてどこまでサポートできるかをしっかりとお伝えしないといけないケースが増えてきています。
中学生から継続して通塾している生徒と、高校生になってから入塾を検討される生徒との差が年々大きくなり、その差を埋めるための時間がかなり必要となるケースが増えてきた(最悪の場合、埋めようがない状況になっている)というのが1つの要因です。
この「差」は、もちろん学力的なものもありますが、それ以上に数学に対する考え方というか、学び方の差がかなり大きくなってきています。
いまは、分からない問題があれば、ネットで検索すればすぐに解説が手に入ります。AIに聞けば、別解まで示してくれる時代です。
しかし、それでも数学ができるようになる生徒と、なかなか変わらない生徒がいます。その差は、決して情報量の差ではないと考えています。
今日は、そのあたりについて、これまで散発的に書いてきた記事の内容をまとめてみたいと思います。
「問題集を何周もしたのに伸びない」という相談が多い
問題集を何周もしているのですが、なかなか成績が上がらなくて……
- チャートを何周もしています
- サクシードを繰り返し解いています
- 学校のワークは何度もやっています
こうした勉強を日々積み重ねていても、定期テストや模試で思うように点が取れないといった相談が少なくありません。そして、こうした相談は開塾当初に比べてかなり増えたように感じます。
そのくらい、いまは「問題集を繰り返しやる」という勉強法が広く受け入れられているのかもしれません。
しかし、実際に指導をしていると、そういう方法で成績が伸びるのは非常に限定的であることが分かります。
繰り返しそのものが悪いわけではない
まず最初に言っておきたいことは、反復練習そのものが悪いわけではない、ということです。
ここは誤解のないように、最初に確認しておきたいところです。
計算の正確さや、基本操作の定着、典型問題への反応速度を上げるためには、一定の反復が必要となります。
しかし、理解していないことをただ繰り返しても理解が深まることはない、という当たり前のことは共有しておきたい部分です。
反復で身につくのは「理解」ではなく「手順記憶」になりがち
同じ問題を何度も解けば、「この形ならこうする」という手順は覚えられるでしょう。
しかし、それは必ずしも数学を理解したということにはなりません。
このような問いに答えられないのであれば、本当の意味で理解しているとは言えません。
単に手順の再現をひたすら練習しているだけ、ということになります。
問題を解けるようになったことで、自分は問題を理解したと思いがちですが、実際には問題を解く手順を覚えたという段階で止まっている人がたくさんいるのです。
「量をこなせば質があがる」という言葉への違和感
ネットを検索すると、大量の問題を解いたり、問題集を周回する効果として、「量をこなせば質が上がる」といった言葉があります。
実際にそうしたことを主張している指導者もたくさんいます。
しかし、数学においてこれはかなり危険な考え方です。
質を意識して量をこなせば、当然ながら質は高まります。しかし、質を考えずに量をこなしても、雑な習慣や思考を強化するだけです。
こうした雑なものを積み重ねたとしても、一定のレベルを超えると、途端に対応できなくなります。
とくに定期テストでは点が取れるのに、模試になると点が取れないタイプの人は、こうした傾向が強いようです。
本当に必要なのは「自分は分かっていない」ことを認めること
数学の成績が伸びる生徒には、ある共通点があります。
それは、どこかのタイミングで「ああ、自分は分かっていなかったんだな」と素直に認めることです。
私自身も、かつては「分かっているつもり」で問題を解いていた時期(高校受験期)がありました。
しかし、本当は問題の構造を見ていたわけではなく、ただ表面的な手順をなぞっていただけだったのだと思います。
無意識のまま、解き方を覚えてそれを当てはめる解法暗記型の勉強になっていて、大事なことはあまり理解できていなかったわけです。
それでも、中学校の頃は成績が良かったので、数学が得意だと思い込んでいました。
そのまま、高校数学に突入して色々な壁にぶつかるわけですが、そこで素直に「あ、自分が間違っていたな」と認めることができませんでした。
プライドが邪魔をする
かつての自分もそうでしたが、とくに進学校の生徒ほど「自分は本来できる側だ」という意識が残っていることがあります。
中学までは上位だったし、テストではかなり良い点を取っていたんです!
そうしたプライドが、高校数学でつまずいても、自分の考え方や勉強法そのものを疑うことを難しくさせてしまいます。
- 何とかしなければ、という思いから勉強量を増やす
- とにかく繰り返し解いて、解き方を覚えようとする
しかし、そこに「理屈」がすっぽりと抜けていると、その場では何とかなっても、時間が経てば結局ゼロに戻ってしまいます。
私自身、そんな勉強を繰り返していた時期がありました。
だからこそ、数学を立て直すためには、単に勉強量を増やすだけでは不十分だと考えるのです。
もちろん、量を増やすことで一時的に点数が上がることはあります。定期テストの範囲が限られていれば、覚えた手順をそのまま使える場面もあるでしょう。
しかし、それでは根本的な解決にはなりません。
大切なのは、「もっとやること」ではなく、「何を見て、何を考え、何を問い直すのか」を変えることです。
つまり、数学(あるいは問題)に対する向き合い方そのものを変える必要があります。
数学を立て直すには、量よりもまず「問い方」を変える
至誠塾では、ただ大量に問題を解かせることは重視していません。
もちろん、最初にも述べたように必要な演習量というものはあります。一定の反復は必要です。
しかし、それ以上に大切なのは、問題に向き合うときの「問い方」です。
授業の中では、単に解法を説明して終わるのではなく、
といったことを確認します。生徒によっては、これが面倒に感じられることもあるでしょう。
- 手っ取り早く点が取れる方法を知りたい
- テストに出る形だけ練習したい
- とりあえず解答を教えて欲しい
そう思う気持ちも分かります。
しかし、そこを急いでしまうと、結局はまた同じところに戻ってきます。
- 解き方を覚えたはずなのに、少し形が変わると解けない。
- 解説を読めば分かるのに、自分では方針が立てられない。
- 定期テストでは何とかなっても、模試では点が取れない。
そうした状態から抜け出すには、問題の見方そのものを変える必要があります。
そして、その見方を変える第一歩は、「自分は何を分かっていなかったのか」を問い直すことです。
だからこそ、良き師と良き友が必要になる
ただ、自分が分かっていないということを認めるのは簡単ではありません。
「分かっているつもり」になっている部分ほど、自分では気づきにくいものです。
だからこそ、そこを的確に指摘してくれる人が必要です。
「なぜそう考えるのかを、言葉にできますか?」
そうやって問い返されることで、初めて自分の理解不足に気づくことがあります。
もちろん、それは気持ちのよい経験ではありません。プライドが傷つくこともあるでしょう。
しかし、数学に対する姿勢が本当に変わり始めるのは、多くの場合そこからです。
いまは、ネットやAIによって、解説や答えはいくらでも手に入ります。
だからこそ逆説的に、誰と学ぶのか、どのような場で学ぶのかが、これまで以上に大切になっていると感じます。
本当に難しいのは、自分の分かっていなさを直視し、考え方そのものを変えていくことです。
そのためには、耳ざわりのよいことだけではなく、必要なときに厳しく問い返してくれる良き師の存在が大切になります。
また、同じように悩みながらも、目の前の問題に粘り強く向き合う友の存在も心強いものです。
至誠塾は、分かったふりをやめ、自分の理解の甘さに向き合い、数学の見方そのものを鍛えていく場所でありたいと考えています。
高校生になってからこの学び方を立て直すには、どうしても時間がかかります。
だからこそ、中学生のうちから、ただ解き方を覚えるのではなく、「なぜそう考えるのか」を大切にしてほしいと考えています。
そして高校生であっても、本気で数学を立て直したいのであれば、まずは問題集を何周するかではなく、「自分は何を分かっていなかったのか」と問い直すところから始めてほしいと思います。


