小学生の夏休み、算数でちょっと見ておきたいこと

夏休みになると、「この期間に何か勉強させた方がいいのかな」と考える保護者の方は多いと思います。
学校の授業が止まる時期ですし、普段よりも時間に余裕があります。復習をするにも、少し先の内容に触れるにも、夏休みはよい機会です。
ただ、小学生の算数については、気をつけておきたいことがあります。
それは、夏休みを「たくさん問題を解く期間」だけにしてしまうことです。
もちろん、計算練習は大事です。整数、小数、分数の計算が不安定なままだと、その先でどうしても苦労してしまいます。ここは大切にしていきたいところです。
ただ、算数で本当に大切なのは、計算だけではありません。
問題文を読んで、「何を聞かれているのかをつかむ」、「数量の関係を図や表に整理する」、「式が何を表しているのかを考える」、「答えが出たあとにそれが問題に合っているかを確かめる」といったことも重要です。
こうした部分は、テストの点数だけでは見えにくいところです。
「できているように見える」ことがある
たとえば、次のような問題があります。
340人の25%は何人ですか
この問題は、$340 \times 0.25$ と計算すれば答えが出ます。それで正解できる子も多いでしょう。もちろん、それはそれで大事なことです。計算できないより、できた方がいいのは間違いありません。
でも、そこで少し立ち止まって考えてみてほしいのです。
25%とは何でしょうか。340人の何を求めているのでしょうか。なぜ $0.25$ をかけるのでしょうか。
25%は、全体を100と見たときの25です。つまり、全体の4分の1です。そう考えると、340人の25%は、340人を4つに分けたうちの1つ分だと分かります。
やっている計算としては同じです。でも、見えているものが少し違います。
ただ小数に直してかけるだけではなく、「全体と部分の関係」として考えられているかどうか。私はここを大事にしたいなと思っています。
算数では、答えが合っていることと、意味が分かっていることが、必ずしも同じではありません。意味があいまいなまま正解していることもあります。
そして、その状態のまま進んでいくと、少し形が変わった問題で急に手が止まってしまうことがあります。割合、速さ、単位、文章題、このあたりでつまずく子の中には、計算力そのものよりも、数量の関係をつかむところで苦労している子が多いように感じます。
夏休みは、そこを見直しやすい時期
普段の学校の授業は、どうしても先へ進んでいきます。一つひとつの単元を、十分に立ち止まって考える時間は多くありません。
そのため、小学生のうちは「何となくできている」状態で進んでしまうことがあります。
計算ドリルはできるし、カラーテストもそこそこ取れているため、本人も「まあ大丈夫」と言っている。 そうなると、こちらも安心したくなりますよね。
ただ、算数には少し難しい部分があることも事実です。
「できているように見える」のに、実は考え方があまり育っていないことがあるのです。
たとえば速さの問題では、公式だけを覚えていてもなかなか安定しません。
時速12kmは、1時間に12km進むという意味です。これが正しく理解できていれば、20分は1時間の3分の1なので、進む距離も12kmの3分の1、つまり4kmだと考えられます。
しかし、$12000\times\dfrac{20}{60}$ などと計算し始める生徒もかなりいます。もちろん、答えとしては間違っていません。ただ、速さを比としてとらえられているのか、それとも公式に数字を当てはめているだけなのかは、きちんと確認しないといけません。
単位をそろえて計算することも大切です。ただ、その前に「時間が3分の1になれば、進む距離も3分の1になる」という見方があるかどうか。ここに、理解の差が出やすいように感じます。
図形でも同じです。面積の公式を覚えていても、どこを底辺と見るのか、高さはどこにあるのかが見えていないと、同じ問題でも解きやすさが大きく変わります。公式を知っていることと、図の中で使えることは、少し違うのです。
とはいえ、毎回そこまでじっくり確認していると、学校の進度についていくのは大変です。
だからこそ、夏休みが良いタイミングになります。
新しいことをどんどん進める前に、今まで習った内容を少し丁寧に見直してみる。それだけでも、算数の状態はかなり見えやすくなります。
解き方を教える前に、考え方を聞いてみる
ご家庭で算数を見るとき、すぐに解き方を教える必要はありません。むしろ、最初は「どう考えたの?」と聞いてみるだけでも十分です。
この式は何を表しているのか。問題のどこを見てそう思ったのか。図にするとどうなるのか。答えは問題の内容に合っているのか。
こうしたことを、子ども自身が言葉にしようとすること自体が大切です。
もちろん、最初からうまく説明できるわけではありません。言葉に詰まることもありますし、何となく解いていたことに自分で気づくこともあります。
でも、それでいいのです。
うまく説明できないということは、そこにまだあいまいさが残っているということです。そこに気づけるだけでも、かなり大きな一歩だと思います。
算数が苦手な子ほど、答えを急いでしまう傾向があります。途中を飛ばして、何となく式を作り、丸がつけば安心する。もちろん、丸がつくこと自体は悪いことではありません。でも、それだけを続けていると、少し形が変わっただけで手が止まりやすくなります。
算数で育てたいのは、答えを出す力だけではありません。
どこを見ればよいのか。何を図にすればよいのか。どの関係を式にすればよいのか。自分の答えが問題に合っているのか。
そういう見方を、少しずつ育てていきたいのです。
この見方が育ってくると、難しい問題に出会ったときの反応が変わります。すぐに「分からない」で止まるのではなく、「まず何が分かっているのか見てみよう」「図にしてみよう」と考えられるようになっていきます。
ここは、小学生の算数ではかなり大切なところだと思います。
中学生になってから急に難しくなるわけではない
中学生になると、算数は数学に変わります。
文字式、方程式、関数、図形の証明。名前だけ見ると、小学校の算数とは別物のように感じるかもしれません。たしかに雰囲気は変わりますし、抽象度も上がります。
でも、急に別の教科になるわけではありません。
割合の感覚が弱いと、文字式の意味がつかみにくくなります。速さや単位の感覚が弱いと、文章題で式を立てるのが難しくなります。図形を見て考える習慣がないと、証明で何に注目すればよいのか分かりにくくなります。
中学生になって急に難しくなるというより、小学生のうちには見えにくかった部分が、あとになって表れてくる。そんなイメージです。
だから、小学生の夏休みにやっておきたいのは、ものすごく特別なことではありません。
今まで習ったことを使って、本当に考えられているか、式の意味を少しでも説明できるか、問題文を読んで何を求めるのかをつかめているか、図や表にして数量の関係を整理できるか、そういうところを、少し丁寧に見ておいてあげられるといいなと思います。
算数LABOで大切にしていること
至誠塾の算数LABOでは、計算練習だけを目的にはしていません。
もちろん、必要な計算力は身につけていきます。計算が不安定なままでよい、ということではなく、そこは大切にしています。
ただ、計算だけで算数ができるようになるわけでもありません。
問題を読む、考える、図にする、式にする、説明する、もう一度問題に戻って確かめる。
この往復を、小学生のうちに少しずつ経験しておいてほしいなと思っています。
割合の問題であれば、公式を覚える前に、全体と部分の関係を考えます。速さの問題であれば、距離、時間、速さの意味を確認します。図形の問題であれば、どこに注目すればよいのかを、図を見ながら考えます。
すぐに派手な成果が見える学習ではありません。
「これをやれば一気に点数アップ!」みたいな話でもありません。そういう分かりやすい話ではないのですが、算数や数学を長く学んでいくうえでは、とても大切な土台になると考えています。
小学生の算数は、急がなくていいところがあります。でも、そのままにしておくのは、少しもったいないところでもあります。
この夏休みが、算数との向き合い方を少し整える時間になればいいなと思っています。


