分からない問題は、最も簡単な場合から考えてみる

算数の問題を前にして、何をすればよいのか分からず、手が止まってしまう生徒は少なくありません。
難しい計算や、まだ習っていない知識が必要なわけではないのに、最初から答えにつながる式を作ろうとして、止まってしまっていることがあります。
例えば、次の問題を考えてみましょう。
6人が、ほかの人と1回ずつ握手をします。握手は全部で何回行われるでしょうか。
塾でこのような問題を扱うと、いきなり6人の場合を式で表そうとして、手が止まる子をよく見かけます。
どんな掛け算をすればよいのか、割り算は必要なのか、などと考えているうちに、式が見つからず、その先へ進めなくなってしまいます。
そんなときは、いちばん簡単な場合まで戻ってみるのがいいでしょう。
まず、2人の場合から調べてみる
2人なら、握手は1回です。
3人になると、新しく加わった1人が、それまでの2人と握手をするので、2回増えます。したがって、握手は全部で$1+2=3$回です。
4人なら、さらに1人が加わり、それまでの3人と握手をするので、3回増えます。
このように人数を1人ずつ増やしていくと、次のようになります。
- 2人なら、$1$ 回
- 3人なら、$1+2=3$ 回
- 4人なら、$1+2+3=6$ 回
- 5人なら、$1+2+3+4=10$ 回
- 6人なら、$1+2+3+4+5=15$ 回
答えは15回です。
ここでは、思いつきで小さな数を試しているわけではありません。人数が最も少ない場合から始めて、1人増えると握手が何回増えるのかを調べています。2人、3人、4人と順に考えたからこそ、人数と握手の回数の関係が見えてきます。
すぐに式を作れなくても大丈夫
算数や数学では、きれいな式を使って短く解く方法が注目されがちです。子どもたちの中にも、最初から式で表せなければ解いたことにならないと思いこんでいる子がいます。
もちろん、式は大切です。先ほどの握手の問題も、人数を $n$ 人とすれば、握手の回数は $\dfrac{n(n-1)}{2}$ 回と表せます。ただ、この式を書き写したり、覚えたりするだけでは、なぜ2で割るのか、どこからこの式が出てきたのかはよく分かりません。
最初に2人、3人、4人の場合を調べていれば、1人が自分以外の全員と握手をすることや、同じ2人の握手を重ねて数えてはいけないことが分かります。
一般的な式は、こうして具体的に調べたことを、あとから簡潔にまとめたものでもあります。
最も簡単な場合から考えるのは、難しい問題を避けるためではありません。何が変わり、何が変わらないのかを、自分の目で確かめるためです。
高校数学でも、同じところで手が止まります
高校生を教えていても、使えそうな公式がすぐに見つからないと、そこで止まってしまう場面をよく見かけます。
数列の問題で、記号に具体的な数字を入れて書き出せば、すでに学んだ等差数列だと分かる問題があります。それでも、公式を探すことに意識が向いていて、目の前に並んだ数と、これまでに学んだ内容が結びつかないという生徒がいます。
以前、場合の数の問題を扱った記事でも、整数の組を一つずつ書き出して数えたところ、生徒から「ただ全部数えただけではないか」と言われた話を書きました。今回の握手の問題と同じように、すぐに公式へ向かうのではなく、まず自分で確かめられるところから始めることが大切であることの例です。
小学生の問題であっても、高校数学であっても、分かるところまで戻って調べることは変わりません。
公式を先回りして覚えるより、まず自分で確かめられることをやってみる。
この習慣は、その先の数学でも必要になります。
算数LABOでは、どこからなら考えられるかを一緒に探します
算数LABOでも、生徒が問題を見て止まっているときに、すぐ解き方を説明することはしません。
握手の問題であれば、「2人だけなら何回かな」「3人になったら、何が増えるかな」などと問いかけていきます。
- 10個の場合が難しければ、1個や2個の場合を考える。
- 大きな数が扱いにくければ、自分で確かめられる数まで小さくしてみる。
そうやって、まず何をすればよいのかを一緒に探します。
ただ「自分で考えてみてね」と任せるだけでは、何も始められないことがあります。
最初の一歩は示しながら、その先は子ども自身に調べてもらいます。何度か繰り返すうちに、こちらから言われなくても、簡単な場合を自分で作れるようになっていきます。
一方、すでに公式を知っていて、すぐに正解できる子には、「なぜその式になるのか」まで確かめてもらいます。公式を使えることと、数え方と式のつながりを理解していることは、同じではないからです。
「もっと簡単な場合ならどうなる?」と聞いてみる
ご家庭で子どもが問題を前に止まっていたら、すぐに解き方を教える前に、「もっと簡単な場合ならどうなる?」と聞いてみてください。
「1個だけなら」「人数を減らしたら」「小さい数に変えたら」と考えることで、自分にも調べられることが見つかるかもしれません。答えへ誘導するのではなく、どこからなら考え始められるかを一緒に探す問いかけです。
分からないときには、自分で確かめられるところまで戻り、最も簡単な場合から考えてみる。算数LABOでは、この始め方を身につけることを大切にしています。


