第7回石川県総合模試の結果が返却されました。数学の平均点が37.9とかなり低い数値となっています。
得点分布を見ても30点前後に偏っているのがわかります。
実際に成績上位者を見ても、72点でも上位100人に収まってしまうレベルです。総合模試の数学は平均的な受験生から見ると難しい試験であるため平均点が低くなる傾向にありますが、今年はここまでの平均点の推移が以下のようになっています。とくに第3回以降は平均点が45点を下回っています。
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回 |
46.7 | 49.5 | 40.4 | 42.1 | 44.5 | 38.5 | 37.9 |
これに比べると、金沢市統一テストの方は第1回が58点とやや高めの平均でしたが、第2回が51点となっており、中学生全体から見ると適切な難易度だったように思われます。ただし、全体の得点分布が不明なので正確には判断できません。いずれにしても、前回の統一テストの記事で指摘したように
という状況には変わりありません。これに関しては、いわゆる世間一般で言われる数学の勉強法なるものに重大な欠陥があると言わざるを得ないわけです。
おそらく、数学の問題が苦手な生徒の場合「簡単な(易しい)問題」がたくさん取り上げられた問題集などを、それこそ覚えるまで繰り返しやるという勉強をやっている人が多いのではないでしょうか。そして、ある程度解けるようになってきたら問題集のレベルを上げて同じことを繰り返す、というような勉強をしている人が多いように思います。
こうした乱暴な方法でもずっとやっていける人はいいのですが、ほとんどの人はどこかで限界を迎えます。そして、限界を迎えたときには「すでに手遅れ」という状況になっているのです。
こうしたタイプの人については、以下のような兆候があれば危険信号だと思っておくといいかもしれません。
- 知らない問題に対してフリーズする
- 勉強量が多い割に点数が伸び悩んでいる
上記の2つの事柄は一見すると別々の問題のように思えますが、数学が苦手な生徒の指導を重ねてきて、根っこの部分は同じではないだろうかと思うようになりました。
知らない問題に対してフリーズする生徒の多くが解けない問題を前にして
ということを言います。しかし、問題を見た瞬間に解き方が分かるのであれば、その問題に取り組む意味はあまりありません。むしろ解き方が分からないからこそ考える価値があるわけです。
さらに言えば、「解き方」という「決まった方法」のようなものがあると信じている人が多いのですが、正直なところそんなものはありません。
「そんなこと言ったって『解法』っていうのがあるじゃないか!」という人もいますが、定石とか解法なんていうものは「うまくいくかもしれないね」程度のもので、絶対的なものではありません。
解き方というのは最初から存在しているわけではなく、あれこれと考えていくうちに定まってくるものです。そのため、知らない!とか見たことない!といって何もしなければ、当然何も見えてこないのです。
だから、知らない問題と出会ったら、まずは「あ〜でもないこ〜でもない」といろいろ手を動かしながら考えるわけです。ここが一番大事なところです。
ところが、「最初から解き方を教えられてその解き方にしたがって解く」という訓練を繰り返してきた生徒の場合、自分であれこれと考えるという経験が乏しいため、どうしても手が止まってしまう人が多くなります。
結局、たくさん問題をやって解き方を覚える、というのは一見すると実力がつくように思えますが、点数は多少上がったとしても数学の能力はほとんど何も身についていない場合がほとんどです。そのため、思考力を試されるような問題では文字通り「手が出ない」ことになる生徒が増えるのです。勉強量が多いのに成績が頭打ちになっているような人も、こうした可能性を考えてみる必要があると思います。
そして「こうした数学に対する取り組み方の問題が露見するのにはタイムラグがある」というのがまた恐ろしいところです。高校生になって数学ができなくなってしまう人の多くは、中学校の数学に問題を抱えていますし、中学校の数学が苦手な人は小学校の算数に問題を抱えているということがしばしばあるのです。
何でもいいから点数が欲しいという受験生や保護者の方の気持ちはよく分かりますが、本当にそれでいいのかどうか、きちんと考えてみて欲しいなあと思います。