中高生の皆さんは春休みの真っ只中という人がほとんどだと思います。
例によって課題がたくさん出されていることと思います。
コツコツと片付ける人もいれば、そんなものは知らんと無かったことにする人もいるでしょう(笑)
とくに高校1年生のみなさんは「数学は本当に大変です」なんて言われて、不安になりながら勉強を進めている人もいるかもしれませんね。
一方で、「ま〜た因数分解かよ」みたいに思って課題も適当にやっている人もいるかもしれません。私はこれでした、はっはっは。
人によっては「この時期に差をつける!」みたいに鼻息荒くやっている人もいるでしょう。
確かに、入学前に大きな差がついてしまうのは過去の生徒たちを見ていても否めない事実だなあと思います。
ただし、それは「スタートダッシュを決めて先取りすれば有利」といったような単純な話ではありません。
どちらかといえば、高校の数学の学び方という話の方が大きな差になっているように思います。
高校受験の勉強では、きっと多くの人が問題集を中心とした演習主体の勉強だったと思うのですが(これが結構な問題だと思っているのですが)、それと同じノリで高校数学に突入してしまうと、危険な方向に突っ走ってしまう人がたくさん出てきます。
試験の点数を取るということだけを考えるのであれば、この方法でもある程度までは何とかなります。が、ある一定のレベルを超えてくるとどうにもならない状況に陥ってしまいます。
早い人は、このどうにもならない状況が高校1年生の夏休み前にやってきます。遅い人は高校2年生の中頃になってやってくることもあり、こうなるとほぼ手遅れとなってしまいます。しかも、後者のタイプには中学生の頃に比較的数学が得意だった(点数的に)という生徒が多くいます。
そんなわけで、準備講座でも最初の入りを大切にすることに全力を注いでいます。
しかし、その悪い習慣に拍車をかけるように、春休みの課題では「因数分解あたりの問題までは自分でやってきてね」という課題が目立ちます。
高校数学の入りに失敗する人がここで量産されているように思うのですが、私の時代からこの悪い伝統は何も変わらないですね。
というわけで、今日は「たすきがけ」の話を軽くしておきたいと思います。
因数分解の最初の山場として「たすきがけ」を用いた因数分解というのが登場します。
例えば、$6x^2-5x-6$ を因数分解せよ、といった問題です。
\begin{align*}
(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd
\end{align*}
この因数分解において、$a$、$b$、$c$、$d$を見つけるために以下のような図で考える方法です。
具体的に、先ほどの $6x^2-5x-6$ で考えると、次のようになります。
これを、苦労しながら習得している生徒がいるのですが、話を聞いてみるとあまり深く考えずに因数分解をしていることがわかります。
このタイプはたすきがけでしか因数分解できないと思っている生徒もいて、結構ガックリするものです。
さらには「この図をかかないと減点ですか?」なんていう質問も出てきたりして、暗い気持ちになってしまいます。
そもそも、因数分解は展開の逆なわけで、展開を復元するようなつもりでやっていればわざわざ上のような図をかかなくてもいいことがわかります。
基本的に、私の頭の中では以下のようなことが起こっています。
$$(\qquad\qquad)(\qquad\qquad)=6x^2-5x-6$$
と考えて、まずは $x^2$ がどうやったらできるかを考えます。これには2パターンあって
$(x\qquad)(6x\qquad)$ or $(2x\qquad)(3x\qquad)$
が考えられます。
そして、定数項が6であることから(符号は一旦無視しておきます)
$(x\quad1)\boldsymbol{(6x\quad6)}$
$(x\quad2)\boldsymbol{(6x\quad3)}$
$(x\quad3)\boldsymbol{(6x\quad2)}$
$(x\quad6)(6x\quad1)$
$(2x\quad1)\boldsymbol{(3x\quad6)}$
$\boldsymbol{(2x\quad2)(3x\quad3)}$
$(2x\quad3)(3x\quad2)$
$\boldsymbol{(2x\quad6)}(3x\quad1)$
というパターンが候補となります。しかし、太字にした部分は定数でくくり出しができてしまうのでダメです。
というわけで、結局のところは
$(x\quad6)(6x\quad1)$ か $(2x\quad3)(3x\quad2)$ かのいずれかしかありません。
あとは $-5x$ が出てくるものを考えると $(x\quad6)(6x\quad1)$ の方はあり得ないので、$(2x\quad3)(3x\quad2)$ の符号を調節して
$$6x^2-5x-6=(2x-3)(3x+2)$$
と因数分解できます。これを頭の中で暗算してやっているというのが実際のところです。
とくにこの時期の高校1年生には「これはたすき掛けという方法を使って解けばいいのだな」といったような思考に陥らないでほしいなと思います。
「この問題はこの方法で解く」といった話が通用するのはごくごく初歩の段階だけですし、それは数学の勉強の表面をなでているだけで、あまり理解が深まっていないということを認識してくれるといいなあと考えています。
それよりも、どうしてこの方法で因数分解できるのか、もっと簡単にはできないだろうか、といったことを突き詰めて考えてみてほしいと思います。