高校生は現在、学年末テストの真っ最中という人が多いのではないかと思います。
人によっては、テスト前に「傍用問題集を3周しろ」なんていう人もいます。そうした周回トレーニングが学校の課題になっているところさえあります。問題集を繰り返すことが全くの無意味であるとは言いませんが、個人的には、多くの高校生にとってこれはあまり効果のない勉強になっているように思います。
というわけで、今回は方程式の問題を取り上げます。内容的には数学IIの序盤で扱うものです。
考え方その1
初歩の段階では、言われたことをそのまま考えてみるとこが大切です。いきなり上手い方法でやろうとするのではなく、こうした地道な考え方を確認することは大切です。
$x=2-i$が解であるということですから、まず、そのまま方程式に代入しましょう。
$$(2-i)^3+a(2-i)^2+b(2-i)-5=0$$
少々面倒ですが、計算して整理すると以下のようになります。虚数単位$i$を含むので、実部と虚部に分けて整理します。
$$(3a+2b-3)-i(4a+b+11)=0$$
$3a+2b-3$、$4a+b+11$はともに実数ですから、複素数の相等によって
$$\begin{cases}3a+2b-3=0\\4a+b+11=0\end{cases}$$
これを解くと、$a=-5$、$b=9$となります。
このとき、もとの方程式は$x^3-5x^2+9x-5=0$となります。
係数を見ると$x=1$が解になると予想できます。実際に代入すると等式が成り立つので、$x=1$は解の1つです。
したがって、$x-1$を因数に持ちます。因数分解すれば
$$(x-1)(x^2-4x+5)=0$$
$x^2-4x+5=$を解くと
\begin{align*}
x^2-4x+5=0&\Longleftrightarrow (x-2)^2=-1\\
&\Longleftrightarrow x-2=\pm i\\
&\Longleftrightarrow x=2\pm i
\end{align*}
したがって、求める他の2解は、$x=1$、$x=2+i$となります。
考え方その2
実数係数であることに着目すると、$2-i$が解であるとき共役複素数$2+i$も解となるので、$x^3+ax^2+bx-5=0$は因数に
$$\{x-(2+i)\}\{x-(2-i)\}=x^2-4x+5$$
を含みます。
したがって、$x^3+ax^2+bx-5$は
$$x^3+ax^2+bx-5=(x^2-4x+5)(x-1)$$
と因数分解されます。
このとき、
と聞かれる事が多いのですが、左辺の$x^3$の係数と定数項および右辺の因数$x^2-4x+5$を見れば、残りの因数は$x-1$でなければならないことが分かります。こうした疑問を持つことは非常に大切ですが、この時点でそういう質問が出るということは高1の数学の勉強が上手くいっていないんだなと感じます。
ちょっと話が逸れました。もとに戻しましょう。
因数分解によって、求める他の2解は$x=2+i$と$x=1$であることがわかりますね。$a$、$b$を求める必要もありませんでした。
考え方その3
単に他の2解を求めるだけであれば
と私は考えます。もちろん、答案にこう書くわけではありませんが、問題を見て10秒もかからず答えは出ます。
これは考え方その2の必要な部分だけをサッと計算しただけです。
考え方その2でやったことを、よくよく考えてみると、実際に必要な部分はこれだけということになります。
気をつけたいこと
今回は3つの考え方(実質2つですが)を取り上げましたが、こういう問題こそ反復練習では気をつけたいものです。
例えば、問題集の解答にどれか1つしか解答が採用されていなかった場合、高校生の多くはその答案を何度もなぞることになります。
そして、別の考え方があるという可能性や、ちょっとした計算の工夫などが捨て置かれてしまうのが大半なのです。これでは理解は深まりません。
「他の問題で違う考え方を扱っているじゃないか」という人もいますが、そうなると、本来は全く同じ内容の問題なのに、表面的な解法が違うということから生徒には「別の問題」として認識される危険性が生まれます。ポイントを1つ押さえておけば十分なものを、いくつにも細分化してそれぞれを個別に覚えるといった不毛な勉強に突っ走る生徒が増えていくのです。
繰り返しやるのであれば、1回目とは違う方法を考えてみたり、普段はやらない方法を試してみたり、そういうこともやってみてほしいなあと思います。
もちろん、テストのために解答の再現性を高めるというのであれば、完璧になるまで繰り返しても良いとは思いますが、それは果たして数学の勉強なのでしょうか?