模範解答と違うのでダメ?

塾長
10月もいよいよ終わりが見えてきました。今年も夏が終わってからあっという間に時間が過ぎていきます。歳をとると本当に1年が短く感じますね〜。

集団授業をやっていてよかったなと思うのは、生徒たちのいろいろな考え方を共有できるということです。先日も中3生の授業で証明問題をやっていたのですが、いろいろなアイデアが得られそれぞれが自分にない着眼点を楽しんでいました。

数学の勉強をするときに「問題を解いて解答を確認する」という流れになっている人が多いと思いますが、解答の確認はなかなか自分でできるものではありません。模範解答と違うからバツにしてしまう生徒もいますが、確認してみたら何も間違っていないということもよくあります。せっかくの正しいアイデアをバツにして捨ててしまうのもどうなのかな?と思いますよね。

模範解答というのは、ほとんどの場合、最短距離で効率よく解いてあります。もちろん、より良い方法を検討することは意味があることなのですが、最短距離の解法だけが価値があるというわけではありません。寄り道をしたり、当たり前のことを確認したりということも時には必要となります。そうした試行錯誤をする中でよりよい方法が見えてくるものです。

この試行錯誤の経験がない人は、少し高いレベルの数学になると挫折してしまう傾向が強いように思います。高校数学で躓いてしまう人の多くは、中学生の間にやっていた勉強法が「問題集を繰り返しやってできない問題は解き方を覚える」という方法であることが多いのも頷けます。

塾長
全面的に悪いというわけではないのですが、やはり手続きの獲得ばかりになってしまうので、そこは十分に注意すべき点です。

また、逆に模範解答がイモくさいというケースも少なからずあります。今回はそういうケースの1つで、生徒の見立ての方が鮮やかでした。

図のように、円 $\mathrm{O}$ における長さの等しい2つの弦 $\mathrm{AB}$、$\mathrm{CD}$ が交わらないとき、その延長の交点を $\mathrm{P}$ とすると、$\mathrm{PA=PC}$ が成り立つことを証明せよ。

まずは、模範解答として以下のような証明が与えられていました。

$\mathrm{O}$ から $\mathrm{AB}$、$\mathrm{CD}$ に垂線を下ろし、それぞれの交点を図のように $\mathrm{H}$、$\mathrm{I}$ とする。
このとき、$\mathrm{AH=HB}$、$\mathrm{CI=ID}$
$\triangle\mathrm{OHA}$ と $\triangle\mathrm{OIC}$ において
$\mathrm{AB=CD}$ であるから、$\mathrm{AH=CI}$
$\angle\mathrm{OHA}=\angle\mathrm{OIC}=90^\circ$
$\mathrm{OA=OC}$
したがって、$\triangle\mathrm{OHA}\equiv\triangle\mathrm{OIC}$
ゆえに、$\mathrm{AH=CI}\ \cdots(1)$
次に、$\triangle\mathrm{OHP}$ と $\triangle\mathrm{OIP}$ において
$\angle\mathrm{OHP}=\angle\mathrm{OIP}=90^\circ$
$\triangle\mathrm{OHA}\equiv\triangle\mathrm{OIC}$ より $\mathrm{OH=OI}$
また $\mathrm{OP=OP}$
したがって、$\triangle\mathrm{OHP}\equiv\triangle\mathrm{OIP}$
ゆえに、$\mathrm{HP=IP}\ \cdots(2)$
(1)、(2)から、$\mathrm{PA=PC}$

これはこれで、円と弦の部分の復習になるので教育的価値はありますが、少し回りくどく感じます。

とある生徒の見立ては「$\mathrm{PA=PC}$ なら二等辺三角形になることを示せばいい」というもの。

つまり、$\triangle\mathrm{APC}$ で $\angle\mathrm{ACP}=\angle\mathrm{CAP}$ を言えばOKという話です。

$\mathrm{AB=CD}$より $\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{AB}}=\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{CD}}$
このとき、
$\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{AD}}=\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{AB}}+\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{BD}}$
$\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{CB}}=\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{CD}}+\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{BD}}$
であるから、$\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{AD}}=\stackrel{\huge\frown}{\mathrm{CB}}$
ゆえに、$\angle\mathrm{ACP}=\angle\mathrm{CAP}$
したがって、$\triangle\mathrm{APC}$ は二等辺三角形であるから、$\mathrm{PA=PC}$

円周角の定理は学習済みなので、こちらの方がシンプルですね。

「$\mathrm{PA=PC}$ なら二等辺三角形になることを示せばいい」という見立てができるようになっているところに成長を感じました。

このように、模範解答が常にベストであるというわけではないことも頭に入れておきたいところです。また、模範解答と違うからダメというわけではなく、単に方針の違いという可能性も十分にあります。

数学の問題を解く方法は1つとは限りません。できれば、いろいろなアイデアを試してみて欲しいなあと思います。

塾長
入試に向けてあまり時間がない場合には「間違っていたら解き方を覚える」という突貫工事もいいかもしれませんが、そこには少なからず危険も潜んでいることは認識しておきたいですね。
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