【金沢の進学校に通う人へ】膨大な数学の課題に見切りをつけて、本質的な力をつける3つのヒント

今日で冬期講習の全日程が終了し、明日から通常営業に戻ります。
今年も冬期講習前に、高校生の方からの問い合わせが多くありました。
昨年も同時期にたくさんのご相談をいただいたのですが、金沢市内の進学校(泉丘高校、二水高校、金大附属高校など)に通う高校生の皆さん、そしてその保護者の皆さまの抱えていらっしゃる悩みは、以下のような内容がほとんどでした。
学校から課される膨大な課題(チャート式、Focus Gold、4STEP等)に追われ、「自分の勉強時間がない」と嘆いていませんか?
多くの生徒が、提出期限に間に合わせるために、
ただ何となく問題を解き、
できない問題はとりあえず解説を読み、
赤ペンで答えを写す
そんな負のループに陥ってしまっています。こうしたことを続けていても、何の力もつかないことは明白です。
課題をただこなすことは「勉強」ではありません。それは時間を浪費するだけの「作業」です。
今回は、毎年寄せられる、こうしたご相談に対するいくつかのヒントを書いてみたいと思います。
なぜ、「課題をこなす」だけでは数学ができるようにならないのか
多くの高校生は、「量をこなせば、そのうち身につくだろう」という非常に楽観的な期待を持っているように思います。しかし、数学という学問において、その考えは間違っていると言わざるを得ません。理由は大きく分けて2つあります。
根本が解決されない
大量に課された課題について、1つ1つ丁寧に考えて解いていては時間が全く足りません。解けなかった問題について、「やったことない問題だから仕方ない」くらいにしか考えない人がたくさんいます。
あるいは「単に計算ミスしただけ」「公式を忘れていた」などと片付けてしまいがちです。
しかし、解けない原因は本当にそこなのでしょうか?
実際には解けない原因は以下のようなものが大半です。
・定義を理解していない
・論理的な思考ができない
(例えば、$x^2 + (a-3)x + a > 0$ がすべての実数 $x$ に対して成りたつとはどういうことか?など)
こうした「本質的な理解の欠落」を放置したまま、たくさんの問題を解いても、同じ場所で躓く可能性が高いでしょう。また「よく分からないけどこうしておけばいいのか」程度の理解で通り過ぎてしまえば、時間が経てばすべて忘れてしまいます。このような勉強を続けていても、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなものです。
悪い癖が強化される
「とりあえず判別式」「とりあえず微分」といった、条件反射的な解法の適用を繰り返せば繰り返すほど、脳は「深く考えないこと」を学習します。
ある程度のレベルまでは「覚えて解く」ということが有効であっても、それが大学入試のレベルになると通用しなくなります。必要とされるのは、具体例を作って規則を探ったり、一般化して考える能力など、より高度で抽象的なものを取り扱う能力です。
しかし、こうした能力は、ただ大量の問題を解いたからといって強化されるものではありません。むしろ「解法暗記」の側面だけが強化され、知らない問題について、あれこれ試して考えるということができなくなっていきます
量をこなすことで、「応用ができない頭」を作ってしまっている状態です。
具体例(確率の問題)を1つ(面倒な人は読み飛ばしてください)
確率における「区別」の話をしておきましょう。「思考停止の代償」を、数学Aの確率を例をもとに見ていきましょう。
そもそもなぜ区別をするのか
問題集には「区別できないものも区別して扱う」などと問題のポイントに書いてあります。
なぜ区別できないものも区別して扱うかについては、同様に確からしいかどうかが大きく関係します。
しかし、このような文言が書かれていると、大半の高校生は「確率では全部区別して解けばOK」などという思考に陥ってしまいます。
しかし、本当に数学ができる生徒は、区別するしないよりも「同様に確からしいかどうか」を考えています。
例えば次のような問題を考えてみましょう。
赤カード3枚、白カード2枚があります。これらを一列に並べるとき、両端が赤カードになる確率は?
【ルートA:「すべて区別」する場合】
「確率は区別するのが基本!」と、全てのカードに名前($R_1$、$R_2$、$R_3$、$W_1$、$W_2$)をつけて考えます。
- 全事象:異なる5枚の順列なので、$5! = 120$ 通り。
- 該当する事象:
- 両端の赤の選び方:${}_3\mathrm{P}_2 = 6$ 通り。
- 残り3枚(真ん中)の並べ方:$3! = 6$ 通り。
- よって、$6 \times 6 = 36$ 通り。
- 確率: $\dfrac{36}{120} = \dfrac{3}{10}$。
これはこれで基本に忠実です。カード1枚ずつを考えれば、同様に確からしいことは確実に保証されます。
【ルートB:構造を見抜いて「区別しない」場合】
深く理解している生徒であれば次のように考えるでしょう。
「$R_1 R_2 W_1 W_2 R_3$ という並びも、$R_2 R_1 W_2 W_1 R_3$ という並びも、色の並びとしては同じ『赤赤白白赤』だ。そして、どの色のパターンも、背後にある『区別した並び』の数は同じ($3! \times 2!$ 通りずつ)だ」
このことを見抜けば、カードを区別せずに「場所選び」だけで勝負できます。実際に解いてみましょう。
- 全事象:5箇所のうち、白が入る2箇所を選ぶだけなので、${}_5\mathrm{C}_2 = 10$ 通り。
- 該当する事象:両端は赤で確定。残る真ん中の3箇所のうち、白が入る2箇所を選ぶので、${}_3\mathrm{C}_2 = 3$ 通り。
- 確率: $\dfrac{3}{10}$。
どちらが良いという話ではありませんが、全事象の数が大きな問題になると「全部区別する」と計算が大変になることが増えます。そこで、ルートBのような、同様に確からしさを保証しつつ、区別をしないで計算する考え方も大切になってくるのです。
問題数だけこなしている生徒が、ルートBのような考え方を自然と獲得することは可能でしょうか?
少なくとも私はこれまでの指導の中で見たことがありません。
「区別」は目的ではなく手段である
この例から何を学ぶべきでしょうか。
- 基本は、区別しないと同様に確からしいことが保証されないから、必ず区別する。
- ただし、同じものを含む順列のように、どう並べても対称性がある場合に限り、区別しない方が計算が圧倒的に楽になる。
「区別するか、しないか」を丸暗記するのではなく、「区別しないことで、対称性(同様に確からしさ)が崩れないか?」
と常に考えること、これこそが数学的な思考力ではないでしょうか。
定義やルールの「意味」を理解せず、ただ量をこなすだけでは、数学的な思考力を獲得するのは非常に難しいのではないでしょうか。
もう少し、日々の学習に「余裕」が必要であると私は考えます。
余裕があると遊ぶ人がいる!という人もいますが、進学校の高校生でそんな状態では、どうしたって難しいのではないでしょうか?
やるべき「3つの改革」
では、課題に追われる日々の中で、具体的にどうすればいいのでしょうか。
以下の3点を参考にしてください。
「完了」ではなく「発見」を目的にする
課題を終わらせることをゴールにしないでください。「なぜ自分はこの問題で詰まったのか?」という自分の弱点を発見することをゴールに設定してください。10問解いて何も気づかないより、1問解いて「ベクトルの一次独立の定義が怪しかった」などと気づく方が、遥かに価値があります。
「どう解くか」より「なぜそうするか」を言語化する
解答を見て「こうやれば解けるのか」で終わらせないこと。「なぜ、ここで判別式を使う必要があったのか?」「なぜ、ここで範囲を区切る必要があったのか?」その理由を自分の言葉で説明できるまで、徹底的に考えることが大切です。
やらなくていい問題はやらない
既に理解している問題を、作業として繰り返す必要はありません。また、解説を読んでも全く理解が及ばない難問に何時間も使うのもあまり意味がありません。「今の自分に必要な問題」を選別し、それ以外は勇気を持ってスキップする(学校の先生に相談すると良いですよ!)ことも大切です。
とくに、3つ目が重要です。一律で課題が出される学校がほとんどでしょうが、「本当に時間がない」あるいは「きちんと理解したい」というのであれば、担当の先生に相談するのがいちばんです。
きちんとした指導者であればいくらでも相談に乗ってくれるでしょう。また、定期テストを通してあなたの実力や課題も把握しているはずです。じっくり取り組むべき課題と、そうでない課題を選別してもらうと良いでしょう。数学を何とかしたいという気持ちがあれば、きっと力を貸してもらえるはずです。
私にも経験がありますが、「もっと頑張れ」とか「この程度はやってもらわないと」などと突き放してくる人もいるかもしれません。そうした指導者は信頼しなくていいです。別の指導者に当たってください。
最後に
金沢の進学校に通う皆さんは、真面目で努力家です。だからこそ、「課題をこなさなければ」という責任感に押しつぶされ、本来の目的である「理解」を犠牲にしてしまっている現状が、私は残念でなりません。
立ち止まる勇気も大切です。闇雲に走り続けることだけが努力ではありません。「正しい地図」を持って歩き出すことも、立派な努力ではないかと考えます。
「量はやっているのに、なぜか成績が上がらない」
そう感じているなら、一度立ち止まって、自分の勉強の「質」を見直してみませんか?









