前回、判別式に関する「実は分かってないのでは?」みたいな話を書きました。
今日は「まあ、それは何も分かっていないよね」という話です笑。
ネタになってくれるのは円順列です。
という話なのですが、これについては $(n-1)!$ という公式を使って問題を解いている生徒が大半です。
そこで、この公式はどうやって出てくるのかということを聞いてみると、きちんと答えられる生徒が非常に少なくてがっかりします。
中には「$n$ 個のものの円順列の数は $(n-1)!$ である」と覚えてしまっている人もいます。
それでも問題が解けてしまうので理解できていると思い込んでしまう人がいるのも仕方ないことではありますが。
数学を教えていると、こうした実は分かってないという状況にある生徒を多数見かけることになります。
というわけで、この公式をきちんと考えてみましょう。
数学を学ぶ上で注意してほしいのですが、公式を覚えてそれを当てはめて使うことに慣れてしまうと、以後の勉強がまったく数学の勉強にならなくなってしまいます。便利だからといって安易に結果だけを覚えないようにしてください。
話を戻します。
この円順列の考え方は次のようなものです。
具体例としてA、B、C、D、E、F、G、Hを円形に並べる場合の並べ方の総数を考えてみましょう。
最初に、下図のように各場所に1〜8までの番号を割り当てます。
そして、この1〜8にA、B、C、D、E、F、G、Hを並べていくことを考えましょう。
このように考えると円形になってはいるものの、8個のものを1列に並べる順列と同じになります。
この順列の総数は、$8!$ となります。
しかし、円順列では回転しても同じと見なせるものは1通りとするのが重要なポイントです。
つまり下のパターンは全部同じものであると見なせます。
最初に数えた $8!$ の数え方は、これらを別々にカウントしています。
例えば、上2つの場合はふつうの順列として考えると
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
A | B | C | D | E | F | G | H |
H | A | B | C | D | E | F | G |
となるので、異なるものとしてカウントしています。ところが、上の図のように円順列では同じものとなります。
このように回転して一致するものが、8通りずつ重複して数えられていることになります。
したがって、8で割ってあげることで重複を解消して1とカウントすることができます。
$$\frac{8!}{8}$$
これが円順列の基本的な考え方になります。
1つの並び方に対して、同じと考えられるものが何個出てくるかがポイントです。上の図からも分かるように使う文字の総数分(座席の数)だけ同じものが出てきます。したがって、一般に円順列は次のように考えられるのです。
さらに
$$\frac{8!}{8}=\frac{8\cdot7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}{8}$$
となるので、結局は $7!$ と計算できることになります。すなわち
$$\frac{n!}{n}=(n-1)!$$
となり、いわゆる円順列の公式が得られます。
ここまでの話が、しっかりと自分で導けるようになっていれば、理解できていると考えても大丈夫でしょう。
さらに、この $(n-1)!$ について考えてみます。
下図のようにAを固定してしまいます(これで文字を1つ使ってしまいます)。
空席は1〜7であり、ここに残りの文字を入れる方法は、先に使った文字を1つ除いて、$n-1$ 個を並びかえる場合の数となるので、$(n-1)!$ 通りとなります、先ほどと同じ結果が得られたことに着目してください。
考え方の違いは、回転させるかさせないかという部分です。最初の考え方は、実に素直な考え方で「まず順列を考えて、回転させて同じになるものをそこから除外しよう」というものです。
2つ目の考え方は、「どうせ回転しても同じになるのだから同じになるものの代表を1個だけ考えればよい」というものです。
どちらが正しいというわけではありませんが、場合の数や確率の根底にある原則を考えれば、やはり重複分を解消するという考え方は無視できません。両方を正しく理解した上で、使いやすい方を選択できるようになれば理解も深まるでしょう。
というわけで、単に $(n-1)!$ という公式を用いて問題を解きまくったとしても、上のような理解に到達することはとても難しいのではないかと思います。