判別式から見えてくるアレコレ

塾長
ここ数日で、一気に秋になりました。最高気温が20℃しかなく、寒いのが苦手な塾長はすでに活力を失いつつあります、むぅ。

最近、中学生向けの記事ばかりだったので、たまには高校数学のネタを扱おうかなと思います。

先日まで高校生の月例テストの採点をじっくりとやっていました。

採点業務はかなり大変なのですが、理解度の差であったり、生徒の抱えている問題点などがが見えてきて楽しいです。

今回は頻出の問題である「2次方程式の解の配置」の問題のことを書こうかなと思います。

以下のような問題を考えましょう。

方程式 $x^2-2ax+2a^2-5=0$($a$は実数の定数)が、1より大きい2つの実数解をもつための $a$ の値の範囲を求めよ。

こういう解がどのあたりにあるかというのを考える場合、グラフを利用して視覚的に考察する方法と、解と係数の関係から計算に徹して考える方法があります。

グラフを用いると、計算だけでなく「目で見て解く」という方法が加わります。

問題によっては計算でサクッと終わるものもありますが、やはり、目で見ながら考えられるというのは大きなメリットです。

とくに数学 I の段階ではこうした方法にしっかりと馴染んでおくことが重要です。

さて、問題の状況をグラフで表すとどのような感じになるでしょうか。

まず、方程式 $x^2-2ax+2a^2-5=0$ の解は、2つのグラフ $y=x^2-2ax+2a^2-5$ と $y=0$($x$ 軸)との交点となります。

ここでは $f(x)=x^2-2ax+2a^2-5$ としておきます。

条件を満たすグラフは、下図のような形が想定されます。

塾長
1より大きいところに2つ適当な点を取って、その2点を通る下に凸の放物線をあれこれかいてみましょう!

こうしたグラフの概形を特徴付けるものとして、

  • $x$ 軸との交点の個数
  • 軸の位置
  • $f(1)$ の符号

を考えていくのが基本です。なお、凸方向については「下に凸」であることがすでに分かっています。

上のグラフにおいては、$x$ 軸との交点の個数は1または2となります。

「2つの実数解」という場合には重解も含みます。重解を含まない場合には「異なる2つの実数解」などのように表されます。気をつけましょう。

また、軸 $x=a$ の位置は $1<a$ であればOKです。

そして、$f(1)$ の符号については、$f(1)>0$ となればOKです。何も考えずに等号をつけている人がいますが、そうするとグラフが下のようになってしまい、「1より大きな2つの実数解」という条件に反します。

塾長
解けるかどうかよりも、いろいろなグラフをかいてみて条件に適するかどうかを確認するという経験がいちばん大事なのです。

そして、問題なのは、これら3つの条件を考える際に無駄なことをやっている生徒が結構な割合でいるということです。

軸を考える際に、ほとんどの生徒が平方完成して

$$f(x)=(x-a)^2+a^2-5$$

としています。

そして、$x$ 軸との交点の個数を考えるときに、わざわざ「判別式 $D/4=a^2-(2a^2-5)\geqq0$」としている人がいます。

もちろん何も間違っていないので減点されることはありませんが、採点する側としては「理解してない可能性があるな」と思ってしまいます。

塾長
そういう場合のために別の問題を用意しています、ふふふ、用意周到!

$x$ 軸との交点の個数は、放物線の頂点の $y$ 座標の符号を考えて処理することもできます。

$x$ 軸との交点が2つの場合は、グラフは以下のようになります。

したがって、判別式 $D>0$ と同じものとして $a^2-5<0$ として考えることができます。

また、$x$ 軸との交点が1つの場合は、グラフは以下のようになります。

したがって、$D=0$ と $a^2-5=0$ が対応することになります。

同様に、$x$ 軸との交点が存在しない場合は、グラフは以下のようになります。

これも、$D<0$ と $a^2-5>0$ が対応することになります。

つまり、この問題でも平方完成しているのであれば $D\geqq 0$ の代わりに $a^2-5\leqq0$ とした方が不要な計算を回避できます。

実際に、どちらで計算しても同じ $-\sqrt{5}\leqq a\leqq \sqrt{5}$ が得られます。

あとは、軸の $1<a$ と、$f(1)=2a^2-2a-4>0$ つまり $(a+1)(a-2)<0$ を解いた $a<-1$、$2<a$ と合わせて

$$2<a\leqq \sqrt{5}$$

となります。

こういう問題を採点して思うのは、とにかく

「実数解をもつ」$=$「判別式 $D\geqq0$」
「重解をもつ」$=$「判別式 $D=0$」

のような短絡的な解法暗記に走らないことが大切であるということです。

判別式 $D\geqq0$ は実数解をもつこと示す1つ方法に過ぎないわけで、他にもいろいろな方法が考えられます。それらを結びつけておくことが大切です。何でもかんでも1対1で対応させていると視野が狭くなり、問題が解けなくなる原因となります。

また、上記の枠内のような覚え方をしていると、どんどん数学とは違う何かの勉強に突っ走っていくことになります。

塾長
残念ながら上位校でもこんな感じで勉強してしまっている生徒が増えてきています。結構数学は危機的状況にあることを知ってもらいたいですね。

びっくりしますが、「3次方程式 $x^3-2x+k=0$ が重解をもつときの $k$ の値を求めよ」という問題でいきなり「判別式 $D=0$ より $1-k=0$」などと書いてしまう生徒や、「$x$ の方程式 $(1+i)x^2+(k+i)x+3+3ki=0$ が実数解をもつときの $k$ の値を求めよ」なんていう問題であっても「判別式 $D\geqq 0$ である」などと書く生徒がいるのです。

そして、そういう高校生が上位校の生徒の中にもかなり存在するというのが悲しいところです。話を盛っているわけでも煽っているわけでもありません。長年、高校生を指導してきて実感していることです。正直、笑えないレベルになってきています。

教科書に沿って定義の確認や定理の証明をきちんとやっていれば、こんな雑な理解にはならないはずです。

しかし、大事なところをすっ飛ばして、いきなり問題集に手を出す生徒が増えました。そうした短絡的な解法の暗記に走る生徒が増えた1つの原因かもしれません。

当塾ではきちんと定義や定理の確認をやりつつ問題をやるようにしています。あるいは、問題の中で1つ1つ確認をしながら解説をしています。

塾長
数学をちゃんと理解したいなあという高校生(中学生も!)、お待ちしています! 数学は、ちゃんと勉強するととても面白いですよ!

というわけで塾生募集中です!

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