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放物線の問題から考える危険な高校受験指導

放物線の問題から考える危険な高校受験指導
塾長

今日も涼しいかな〜なんて希望を持って外へ出たのですが、気温は29℃とまだまだ厳しい残暑が続いているようです。それでも、朝晩は爽やかになって過ごしやすくなってきています。早起きして午前中に仕事を片付けるなんていう理想的なこともできる時期です(するとは言っていない)。

昨日は、中学3年生の授業で放物線と直線のからむ図形問題に入りました。

放物線と直線の問題は高校入試でも頻出の問題なので、問題集などでもたくさん解いたという人もいるでしょう。

そして、例年、どこで学んだか分からない謎の公式たちが出てくる分野でもあります(笑)

以前も記事で扱っていますね。

今回は、放物線と直線でつくられる三角形の面積についてのお話です。

上の図における $\triangle\mathrm{POQ}$ の面積を求めよという問題です。直線の式は $y=mx+n$ であるということにしておきます。

このとき、問題集によっては何の断りもなく

謎の公式

$\displaystyle \triangle\mathrm{POQ}=\frac{1}{2}\times n\times (b-a)$

と書いてあったりします。この公式自体は正しいものなので、丸暗記して使えば

数学難民

うお〜簡単に面積が求まるぜ!!こりゃスゲ〜!!

と狂喜乱舞させる効果はあります。しかもかなり絶大な効果です。

さらに言えば、こういう「簡単な方法」をたくさん教えてくれる先生を、生徒は「いい先生」と評価する傾向があります。そうすると、先生の方も「おお、生徒のウケがいいぞ!そんでもって成績も上がったぞ!」となって、もっといろいろな解法を教えてあげよう!ということになります。

私も塾講師のアルバイトを始めた当初は、こうした甘い罠にかかりそうになることがしばしばありました。もちろん、講師としての評価(あるいは塾としての評価)は生徒の成績や合格実績で判断されることが多いため、とにかく生徒の点数を上げる方法をどんどん伝えていこうとなる気持ちは分かります。しかし、それが生徒の思考を停止させていることに気付いていない危険な講師がたくさんいることも指摘しておきます。

このように、面倒なことを考えることもなく一発で答えが求まる方法には、教える側にも教わる側にも麻薬的な効果があるのです。そして、これが数学難民への入り口であることを知りもせず、「こういう方法もっと教えてくれよ〜」という生徒が増えていくのです。

しかし、数学というのは勉強が進むにつれて、より抽象的な理解が必要となります。意味もわからずにただ答えが求まる方法を追い求めていた生徒が、高校生の半ばあたりで脱落してしまう背景には、こういう指導が大きく関わっていることを是非知っておいてもらいたいですね。

では、実際にはどういう風にしてこの公式を理解しておくかというと・・・

一般的な参考書などでは、$\triangle\mathrm{POQ}$ を $\triangle\mathrm{POR}$ と $\triangle\mathrm{QOR} $ の2つの三角形に分割して考える方法がよく取り上げられています。

$\triangle\mathrm{POR}$ の面積は、上の図で $\mathrm{OR}$ を底辺、$\mathrm{PA}$ を高さと見て

$$\frac{1}{2}\times n\times (-a)$$

として求められます。$\mathrm{OR}$ は直線 $y=mx+n$ の $y$ 切片から $\mathrm{OR}=n$ です。また、$\mathrm{PA}$ は点 $\mathrm{P}$ の $x$ 座標の絶対値を考えて $-a$ となることも確認しておきましょう。

同様にして、$\triangle\mathrm{QOR}$ の面積は

$$\frac{1}{2}\times n\times b$$

となりますね。したがって、この2つの面積を足して

$$\frac{1}{2}\times n\times (-a)+\frac{1}{2}\times n\times b$$

共通因数をくくり出して整理すると

$$\frac{1}{2}\times n\times (-a+b)$$

となり、最初の謎の公式と同じ式が登場します。これが公式の正体です。少なくとも、こうした考え方から公式が導かれていることは理解しておかなくてはなりません。そして、もう一歩踏み込んで考えてみることでより視覚的なイメージと結び付けて公式を理解できます。

塾長

こんな程度では私は満足しませんよ(笑)

2つの三角形に分割して考える際に、三角形の面積がどうやって求まるかという原点に戻って考えてみます。

たとえば、$\triangle\mathrm{POR}$ の面積は図の斜線部になりますが、これが色付き部分の長方形の面積を半分にしたものであることは、三角形の面積が分かっている人なら当たり前のこととして理解できるはずです(理解できない人は黄色信号です!)。

同様に考えると、$\triangle\mathrm{QOR}$ の面積は図の色付きの長方形の面積の半分ということになります。

結局のところ、最初に見た謎の公式はこの上記2つの図をあわせて、以下のような長方形を考え、それを半分にすることで $\triangle\mathrm{POQ}$ の面積を求めているということなのです。

こうした部分まで、きちんと理解して公式を使っているのであれば何の問題もありません。しかし、公式をただ記号的に丸暗記して、そこに値を当てはめているというだけの人は、近い将来、数学が分からなくなってしまう可能性が非常に高いと言えるでしょう。

事実、この公式を使いこなしている生徒に聞いてみても、長方形のイメージと結びついている生徒は1人もいませんでした(恐ろしい)。

点数を追いかけること自体が悪いとは思いませんが、そればかりになって肝心の「数学の理解」が深まっていなければ、いずれ限界を迎えてしまいます。そうなる前に、まずは正しく理解するということを大切にしてほしいなあと思うのです。

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