概観
問題全体のセットは大問数が7(うち小問数22)の標準的なセットでした。問題数・分量の大きな変化はありません。
内容的には、確率、関数、方程式、作図、平面図形、空間図形といずれも頻出項目からの出題でした。
どの問題も思考力を要する問題が多く、とくに後半の幾何分野の問題は、時間は考えていたら時間が足りなくなってしまったという人が多かったのではないかと思います。また、前半の代数分野の問題も計算の過程や考え方を記述させる問題が多いため、ふだん答えを出すだけで終わってしまっているような人はどう記述したらいいか困ったかもしれません。
普段から、きちんと論理的に考え、いろいろと書き出して考えるような勉強が必要となってきます。
なお、時間的に全問を解き切るのは非常に難しいため、全部解けなかったからといって不安になる必要はありません。
当然、点数についても定期テストとは全く性質の異なるテストなので、点数が低いからと言って、それだけでダメだと決めつけないでください。近年の成績を見ていると、90点台を取るような生徒は稀で、最高点でも80点台ということが増えてきています。
指導者の中には時間内に解けるように「問題を見た瞬間に解き方を思いつけるようにしないとダメ」などと言って、典型問題を繰り返し解くように指導する人もいますが、近年の入試問題はすぐに解き方を思いつけるような単純な問題はほとんど出題されなくなってきています。また、そのような勉強方法を続けていると、逆に思考停止に陥ってしまい、少し目先を変えられただけで出来なくなってしまうといった残念なことになりかねません。そうした勉強が通用したのは私が現役だった頃の遠い昔の話です。
いちばん大切なことは試験の対策ではなく、ふつうに数学の勉強をすることです。ふつうに数学を学んでいれば、本番でどのような問題が出題されても、きちんと対応できます。このことは忘れないようにしてくださいね!
なお、模試の問題はどれもよく練られた良問が揃っています。復習をしっかりやれば相応の実力アップが期待できる問題ばかりなので、少なくとも試験後1週間以内には復習をやってしまいたいですね。この記事も是非参考にしてみてください。
全体的な難易度 やや易
問題の解説
ここからは問題の具体的な解説となります。問題用紙を準備してご覧ください。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
大問1は基本的な計算力や知識を問う問題です。ここはどの学力層の生徒も満点を狙いたいところです。とくに数学が苦手だという人は、大問1の得点が大きく影響するので、できなかった部分については知識項目の確認からやり直しましょう。
(1)は単純な計算問題なのですが、案外ミスする人が多く、満点をとっている人は思ったより少ない印象です。
とくにオの $\displaystyle \frac{x+y}{2}+\frac{x-3y}{5}$ などの計算を
$$\frac{x+y}{2}+\frac{x-3y}{5}=5(x+y)+2(x-3y)$$
などどデタラメな計算をする人が一定数います。等号の意味をよく考えてください。
計算が苦手な人は、暗算力を高めて出来るだけ計算をしないように工夫することを常に意識して練習してください。途中式が多いことを丁寧に解いていると勘違いしている人がいますが、ほとんどの場合ただの無駄です。途中式を最小限に抑えるのが計算ミスを減らすコツです。
なお、計算の工夫以前に基本的な計算ルールが曖昧であるという人もいるので、そういう人は計算の規則を確認することから勉強しなおしましょう。
(2)は単純な1次方程式の問題でした。$12x+7=7x-13$ の両辺に $-7x$ と $-7$ を加えて
$$5x=-20\Longleftrightarrow x=-4$$
とすぐに解けますね。
(3)は反比例の関係にあるものを選べという問題でした。反比例とは、2つの変数 $x$、$y$ について、積 $xy$ が一定となるような関係です。これはイが $xy=520$ であることからすぐに分かるでしょう。
(4)は多角形の内角と外角の問題です。内角の和が $1260^\circ$ なので、$\displaystyle \frac{1260}{180}=7$ となるので、正9角形であることが分かります。外角の大きさは、$\displaystyle \frac{360}{9}=40$ となるので、$40^\circ$ となります。
(5)は度数分布表を用いた資料の問題でした。度数が最も多い階級の相対度数ということなので、度数が $9$ の $840〜880$ の階級が該当します。相対度数なので、$\displaystyle \frac{9}{20}=0.45$ となります。
大問2
内容 確率
難易度 易
大問2は確率の問題でした。図形との融合ですが、非常に易しい問題なので確実に得点したい問題です。
こんな感じの図が与えられています。一辺が3cmの正方形の辺上にそれぞれ三等分する点が打ってあります。大きいサイコロの目を $a$、小さいサイコロの目を $b$ として、点PはAから矢印の向きに $a$ cm、点QはCから矢印の向きに $b$ cm動きます。
(1)は $a=2$、$b=1$ の場合の三角形APQの面積を求める問題です。これは、もう図を描けば一発でしょう。
こんな感じになるので、
$$\frac{1}{2}\times 2\times 3=3\ (\mathrm{cm}^2)$$
となります。
(2)は三角形APQが $AP=AQ$ の二等辺三角形になる確率を求める問題です。これもいくつか図を描いてみます。
こんな感じでみていくと、該当するのは
$$(a,b)=(1,5),\ (2,4),\ (3,3),\ (4,2),\ (5,1)$$
の5通りであることがわかります。大小2つのサイコロの目の出方は $6\times 6=36$ 通りなので、求める確率は
$$\frac{5}{36}$$
です。
大問3
内容 関数
難易度 標準
大問3は関数の問題でした。昨年の第4回にも似たようなタイプの問題がありましたが、今回はもっとシンプルで易しい問題です。(3)がやや面倒ですが(1)、(2)は易しい問題でした。上位校狙いの人は完答を狙いましょう。
まずはこんなグラフが与えられています。AさんがP地点から4500m離れたQ地点まで一定の速さで向かい、Q地点で15分間休んだあと、一定の速さでP地点までもどった、というものです。図はAさんがP地点を出発してから $x$ 分後の、P地点からの距離を $y$ mとして、$x$ と $y$ の関係を表したグラフとなります。
(1)はAさんがP地点からQ地点まで向かう速さ(分速)を求める問題です。これは上のグラフで、最初の直線の部分 $(0\leqq x\leqq 30)$ を考えればOKです。30分で4500mを進んでいるので、分速は150m/秒ということになります。
(2)は上のグラフにおける、$45\leqq x\leqq 90$ のときの直線の式を求める問題です。まずは傾きですが、$45$ 分で $-4500$ m進むことになるので、$-100x$ となります。そして、点 $(90,\ 0)$ を通ることから、$y$ 切片は $9000$ となります。したがって
$$y=-100x+9000$$
ですね。これくらいであれば、計算せずに求められるようになっておきたいところです。
(3)は、ちょっと難易度が上がります。
という問題です。せっかくなので、グラフを利用しながら考えましょう。
Bさんは最初、Q地点から毎分100mの速さでP地点に向かっています。何事もなければ45分でP地点に着いていたはずです(点線)。このときの直線の式は $y=-100x+4500$ とすぐに分かりますね。そして、20分後にどこにいるかを計算すると、
$$y=-100\times 20+4500=2500$$
となり、P地点から2500mのところにいることが分かります。このとき、Aさんのグラフの式は(1)から $y=150x$ とすぐに分かるので
$$y=150\times 20=3000$$
となり、すでにAさんとBさんはすれ違っていることが分かります。
次に、Bさんは折り返してQ地点まで分速80mまで戻ることになります。Q地点まで戻る距離は2000mなので、$2000\div 80=25$ となり25分かかることが分かります。つまり、スタートから45分で再度Q地点に戻ることが分かります。ここまでの動きをグラフにすると上図の赤線のようになります。
1回目に出会ったときの時間は、$y=150x$ と $y=-100x+4500$ から $y$ を消去して
$$150x=-100x+4500\Longleftrightarrow 250x=4500$$
となるため、$x=18$ となります。したがって、1回目に出会ってから2回目に出会うまでの時間は
$$45-18=27$$
となります。やや、面倒な問題ですがグラフを利用することで視覚的に捉えやすくなるでしょう。
ちなみに、最初に出会った時間を求める場合に、速度の比を考えて $\displaystyle 30\times \frac{3}{5}$ と計算した人もいるでしょう。それでも当然OKです。
大問4
内容 方程式
難易度 易
大問4は方程式の文章題でした。
トイレットペーパー1個と交換できる重さとして、段ボール12kg、雑誌15kgという表が与えられていました。
ある回収日に段ボールと雑誌合わせて399kgであり、ちょうどトイレットペーパー30個に交換できたという問題です。
段ボールを $x$ kgとすると、雑誌は $399-x$ kg であり、与えられた条件から
$$\frac{x}{12}+\frac{399-x}{15}=30$$
となります。分母を払えば $5x+4(399-x)=1800$ となり、$x=204$ となります。
したがって、段ボール204kg、雑誌195kgと分かります。
大問5
内容 作図
難易度 標準
大問5は作図の問題でした。
作図の問題といっても、ベースになるのは図形の知識なので、まずは与えられた条件がどのような点を表すかをよく考えることから始めましょう。
今回は以下の図と2つの条件が与えられていました。
- $\angle\mathrm{BAP}=\angle\mathrm{CAP}$
- 点 $\mathrm{P}$ は、2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ を通る円の中心となる。
ということで、まずは最初の条件です。これはすぐに角の二等分線を作図することが分かるでしょう。
問題は2つ目の条件です。「点 $\mathrm{P}$ は、2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ を通る円の中心となる」ということは、「2点 $\mathrm{A}$、$\mathrm{B}$ は点 $\mathrm{P}$ を中心とする円周上の点である」ということです。
円周上の異なる2点を結ぶと弦ができます。この弦の垂直二等分線上に円の中心がくることは図形の知識として必ず押さえておきたいところです。
以上のことを押さえておけば、$\angle\mathrm{BAC}$ の二等分線(下図赤線)と、線分 $\mathrm{AB}$ の垂直二等分線(下図青線)をそれぞれ作図し、それらの交点が求める点 $\mathrm{P}$ となることが分かります。
大問6
内容 平面図形
難易度 易
大問6は平面図形の問題でした。ぱっと見では面倒な感じに見えますが、解いてみると案外簡単な問題であることが分かります。
ここ最近の平面図形の問題の中では、計算量も少なく考え方もスッキリとしているので、図形が得意な人はかなり易しく感じたのではないでしょうか。
(1)は下図が与えられています。
条件として、$\angle\mathrm{ABD}=74^\circ$、$\angle\mathrm{DAC}=43^\circ$、$\mathrm{AB=AD}$ が与えられます。とくに $\mathrm{AB=AD}$ に注意すると、下図のようになります。
したがって、$\angle\mathrm{ACD}$ の大きさは
$$74^\circ-43^\circ=31^\circ$$
となります。
(2)は新しい下の図が与えられます。
ということで、与えられた条件から、まずは $\mathrm{BC=ED}$ が直接利用できます。
次に、$\mathrm{AB}//\mathrm{FE}$ と $\mathrm{AC}//\mathrm{FD}$ から錯覚に着目して、
$$\angle\mathrm{ABC}=\angle\mathrm{FED}\qquad\angle\mathrm{ACB}=\angle\mathrm{FDE}$$
が言えます。
以上から、一辺とその両端の角がそれぞれ等しいことが言えたので
$$\triangle\mathrm{ABC}\equiv\triangle\mathrm{FED}$$
が証明できました。
(3)は定番の面積の問題です。まずは、(2)の図にさらに手が加えられます。(2)で証明した $\triangle\mathrm{ABC}\equiv\triangle\mathrm{FED}$ も当然成り立ちます。
$\triangle\mathrm{ABC}=35\mathrm{cm^2}$、四角形 $\mathrm{ADFC=42cm^2}$ のとき、$\triangle\mathrm{BFE}$ の面積を求めよという問題です。
$$35+(35-21)=49$$
とすぐに答えが求められるくらいに、簡単な問題でした。
一応、細かく見ておくと
上図のように、A、Fからそれぞれ垂線を下ろし、垂線の足をH、Iとすると、(2)の結果から $\mathrm{AH=FI}$ となります。
このとき、$\triangle\mathrm{ABC}$ と $\triangle\mathrm{FBC}$ は底辺と高さが等しい三角形となるので、同じ面積($35\mathrm{cm^2}$)となります。
また、(2)の結果から、$\mathrm{AC=FD}$ かつ $\mathrm{AC//FD}$ であり四角形 $\mathrm{ADFC}$ は平行四辺形であることが分かります。さらに、$\triangle\mathrm{ABD}\equiv\triangle\mathrm{FEC}$ も言えます。
このとき、$\triangle\mathrm{ABD}$ の面積は$\triangle\mathrm{ABC}$ の面積から平行四辺形 $\mathrm{ADFC}$ の面積の半分を引いたものとなります。つまり、$35-21=14(\mathrm{cm^2})$ です。当然 $\triangle\mathrm{FEC}$ も同じ面積になるので、結局 $\triangle\mathrm{BFE}$ の面積は
$$\triangle\mathrm{BFE}=\triangle\mathrm{BFC}+\triangle\mathrm{FEC}=35+14=49$$
となります。
大問7
内容 空間図形
難易度 易
最後は空間図形の問題でした。空間図形も図を見て敬遠した人がいたかもしれませんが、正四角柱の非常に易しい問題でした。上位校狙いの人は満点を狙いたいくらいのレベルだったと思います。
(1)は定番のねじれの位置の問題です。
上の図でABとねじれの位置にあるのは、DH、CG、EH、FGです。これは問題ないでしょう。
(2)は次のような図が与えられます。(分かりやすくなるようにこちらで色をつけました)
$\mathrm{AB=6cm}$、$\mathrm{AE=9cm}$、$\mathrm{EI=FJ=2cm}$ となります。このときの五角錐D-EIJGH(色付き部分)の体積を求める問題です。
五角錐D-EIJGHというのが珍しいですが、これを直接求めるのは少し面倒です。そこで、四角錐D-EFGHの体積から三角錐D-IFJの体積を引いて求めると計算が簡単になります。
四角錐D-EFGHは、底面の四角形EFGHの面積が、$6\times 6=36$、高さが $9$ なので
$$\frac{1}{3}\times 36\times 9=108$$
三角錐D-IFJは、底面の三角形IFJの面積が、$\displaystyle \frac{1}{2}\times 4\times 2=4$、高さが $9$ なので
$$\frac{1}{3}\times 4\times 9=12$$
よって、求める五角錐D-EIJGHの体積は、$\mathrm{108-12=96cm^3}$ となります。
(3)はまた新しい図が与えられます。
ちょっとややこしいですが、高さが等しい正四角錐O-ABCDと正四角柱ABCD-EFGHを組み合わせた立体をつくります。OからEFGHにひいた垂線とEFGHの交点がO’となります。そして、OO’上に点Pをとって、正四角錐P-EFGHをつくります。OO’=12cmで、正四角錐P-EFGHがもとの立体の体積の$\displaystyle \frac{1}{8}$ となるときの線分PO’の長さを求める問題です。
大事なことは、どの立体も底面積が同じになるという事です。
まずは、正四角錐O-ABCDと正四角柱ABCD-EFGHから考えます。OO’=12cmであることから、それぞれ高さが6cmとなることが分かります。底面積を $a$ とすると、 正四角錐O-ABCDの体積は
$$\frac{1}{3}a\times 6=2a$$
また、正四角柱ABCD-EFGHの体積は $6a$ となるので、合わせて $8a$ となります。
したがって、正四角錐P-EFGHの体積が $a$ となるような高さを考えます。これは、もう計算しなくても $3$ と出るでしょう。
一応、高さを $x$ として計算をしておくと
$$\frac{1}{3}a\times x=a$$
よって、$x=3$ となります。
まとめ
というわけで、今回の総合模試は非常に平易な問題が多かったですね。第2回総合模試は毎年、難易度が抑えめになっているようですが、今回はそうした中でもかなり受験生のレベルに配慮した問題になっていたように思います。上位校狙いの人は80点程度は取っておきたい問題でした。
とくに図形の問題はどれも拍子抜けするような問題で、ちょっと簡単すぎたかもしれません。なお、2学期に入ると相似、円、三平方の定理など、入試でも頻出の図形内容がたくさん登場します。当然、模試の問題も難しくなっていくはずです。そのため、今回の出題内容でできなかった部分は早急に復習をしておくことが大切です。
結果が気になる人も多いと思いますが、この時期の成績は参考程度に考えておけば十分です。結果に一喜一憂するのではなく、現時点での理解度を把握し、今後の課題を考えるようにしましょう。
入試まで、まだまだ時間はたっぷりあります。1つずつ弱点部分を潰していきましょう!
頑張ろう、受験生!