第1回石川県総合模試を受験されたみなさん、お疲れ様でした。受けてみた感想はどうだったでしょうか?
難しすぎて絶望したという人もいれば、思ったより難しくなかったという人もいたかもしれません。現状の学力は人それぞれですから、「現時点での成績」というのはあまり気にしなくてもOKです。大切なのは、模試を受けたらすぐに自己分析をして日々の勉強にフィードバックしていくということです。
模試というのは、入試本番でしっかりと実力を発揮するために受験するものですから、模試のための勉強にならないように気をつけたいところです。
概観
問題のセットは大問数7、小問数23でいつも通りの標準的なセットでした。
大問1以外は思考力を要する問題が多く、また計算の過程を記述させる問題や証明などの説明を求められる問題が含まれており、50分という試験時間を考えると、時間的にはかなり厳しい試験問題となります。そのため、全部解けなかったからといって必要以上に気にすることはありません。だからと言って、無策で試験に臨むのも意味がないため、時間配分をどうするか、どの問題を優先するか、といったことを考えて試験に臨むことが必要となります。
出題内容については、前半は方程式や関数などの計算を中心とした代数の問題、後半が幾何の問題とバランスよく作られています。難問・奇問の類はほとんどなく、入試標準レベルの良い問題が揃っていると思います。本番で時間が足りなかった問題などは、家に帰ってたっぷりと時間をとって取り組んでみるといいでしょう。復習を徹底すれば相応の実力アップが期待できるので、できればその日のうちに復習をやるのが理想です。少なくとも1週間以内には復習をやってしまいたいですね。
全体的な難易度 標準
各問題の概要
ここからは大問ごとの内容を細かく見ていきます。解説をつけておくので復習の際の参考にでもしてください。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
基本的な計算力や知識を問う問題となります。この大問1は満点を狙っていきたいところです。
とくに最初の(1)の計算問題で、計算ミスをしてしまう人が例年たくさんいます。そういったミスをすべて「計算ミス」として片付けてしまうのはちょっと乱暴なので、自分の癖をよく知り、対策を考えていきましょう。個人的には、途中式が多過ぎると感じる中学生が多いので、暗算力を高める練習をしてみるといいでしょう。また、そもそもの計算ルールが曖昧であるという人も多いので、きちんとした計算の規則を確認してください。
(2)の連立方程式は解を求めるだけなら難しくありませんね。この問題は加減法で解いた人が多いと思いますが、あえて代入法でやってみるのも練習になります。
$$\begin{cases}2x+3y=-4\\5x-6y=17\end{cases}$$
の第1式を $3y=-4-2x$ と変形して第2式へ代入すると
$$5x-2(-4-2x)=17$$
となります。これを整理して $9x=9$ となり $x=1$ が求まります。どちらの方法でも計算できるように練習しておくといいでしょう。
(3)は角度の問題でした。$l//m$ なので同位角や錯角の利用を考えていきましょう。$x$ を求めるには色をつけた $\triangle\mathrm{ABC}$ に着目するのがもっともオーソドックスな考え方だと思います。このとき、$\angle\mathrm{ABD}$ は $82^\circ$ となるので、$\angle\mathrm{ABC}$ の方は $180^\circ-82^\circ=98^\circ$ となります。さらに三角形の外角を考えると、$x+98^\circ=130^\circ$ となるため $x=32^\circ$ となります。
(4)は確率の問題です。2つのサイコロを投げる問題では表を利用すると考えやすいことが多いのですが、こういう話をすると
などと言い出すおかしな指導者もいるので要注意です。これは目的と手段が入れ替わってしまう典型的な例です。もちろん、面倒な問題であれば表を書くと一目瞭然となります。
こんな感じですね。でも、この問題でわざわざ表を作ろうという人はあまりいないと思います。だって、書き出せばすぐに終わりますからね。出た目の数の和が $5$ になるのは (大、小) とした場合に
$$(1,\ 4),\ (2,\ 3),\ (3,\ 2),\ (4,\ 1)$$
の4つしかありません。全体は $6\times 6=36$ 通りなので、求める確率は $\displaystyle \frac{4}{36}=\frac{1}{9}$ ですね。
(5)は中央値の問題です。中央値はデータを大きい順に並べたときの真ん中の値ですが、今回は20人のデータのため、10番目と11番目の値の平均をとったものとなります。これがわかっていれば、大きい方(小さい方からでも同じ)から10番目と11番目の値を見ればOKです。大きい方から10番目は5冊、11番目は4冊となるので、平均をとって4.5冊が答えとなります。ほぼ計算不要の問題ですね。
大問2(復習おすすめNo.1)
内容 規則性
難易度 易
高校入試の問題の中でも、塾長が個人的に好きなのが規則性の問題です。というのも、状況を観察・分析し一定の規則を見つけるという大事な考え方がつまっているからです。ある意味ではいちばん数学的な問題かもしれません。
さて、規則性の問題で大事なことは、具体例をいくつか作ってみるという姿勢です。その具体例を観察・分析しながら、どういう規則が隠れているのかを見つけていきましょう。
(1)については、1、2、3、4という数が繰り返し出てくるので周期に着目しましょう。14枚並べると、$4\times 3+2$ となるため、1、2、3、4が3回と1、2が並ぶことになるので、1は4枚あることがわかります。
(2)がこの問題の本質です。カードを並べたときの周の長さが $116 \mathrm{cm}$ ということですが、周の長さはどのように変化していくかを実際にいくつか書き出して考えてみましょう。
まずは1枚だけ並べたときの周の長さは下図から $16\mathrm{cm}$ とすぐにわかります。
小細工なしで計算すると、1枚の周の長さから、消える $3\mathrm{cm}$ の部分を引いて、次に増える部分の長さ $2+3+5+3=13(\mathrm{cm})$ を加えます。そうすると
$$16-3+13=26(\mathrm{cm})$$
次に3枚並べた場合も作ってみましょう。
これも2枚並べたときの状態から、消える $3\mathrm{cm}$ の部分を引いて、次に増える部分の長さ $2+3+5+3=13(\mathrm{cm})$ を加えれば求まります。
$$26-3+13=36(\mathrm{cm})$$
ここで、大半の人が「あれ? これはもしかして・・・」と思うはずです。では、その「もしかして」を念のため、4枚並べた場合でも確認してみましょう。
予想通り、3枚並べた状態から消える $3\mathrm{cm}$ の部分を引いて、次に増える部分の長さ $2+3+5+3=13(\mathrm{cm})$ を加えれば求まることが確認できますね。つまり
$$36-3+13=46(\mathrm{cm})$$
さて、これを数式で表すことを考えてみましょう。以下のようなイメージを持っておきましょう。
カードの枚数 | 周の長さ |
$1$ | $16$ |
$2$ | $26$ |
$3$ | $36$ |
$4$ | $46$ |
$n$ | ?? |
カードが $1$ 枚増えるごとに、周の長さは10ずつ増えていきます。これって、アレです。いわゆる1次関数的なアレです。 なので、$n$ のときはどうなるか、1次関数を求める場合と同じ感覚でやってみるといいでしょう。傾きが10で・・・とやってみると $n$ 枚並べたときの周の長さは
$$10n+6$$
となります。したがって、$116=10n+6$ から $n=11$ となります。あとは、11枚並べたときの数の和を求めればいいのですが、せっかくなので(1)で考えたことを利用しましょう。1、2、3、4(これらの和は10です)が2回繰り返されて、さらに1、2、3が並ぶので
$$10\times 2+6=26$$
となります。
大問3(復習おすすめNo.3)
内容 関数
難易度 標準
大問3は関数の問題でした。この時期の関数の問題は2次関数が未習のため、比較的易しい問題が多いのですが、今回は(2)、(3)の面積問題で手こずった人も多かったのではないかと思います。関数の問題なのですが、面積は図形の話なので関数云々の前にまずは図形的にどう捉えるかをよく考えることが大切です。
(1)はグラフの定義域と値域の問題です。中学数学では $x$ の変域、$y$ の変域という言い方をしますが、一般的に関数においては $x$ の変域を定義域、$y$ の変域を値域というので、これは覚えておくといいでしょう。
定義域と値域はグラフをもとに考えれば簡単です。指定された定義域でグラフを切り取ったとき、$y$ がどこからどこまでの値をとるかという話なので、実際に切ってみます。下図のような感じになります。
値域は $3\leqq y \leqq 12$ であることが一目瞭然ですね。
(2)は面積の問題です。四角形 $\mathrm{ACBD}$ の面積を求める問題ですが、とにかく「面積を求める」ということに徹して考えましょう。余計なあれこれは必要になったら考えればOKです。
まず、四角形の面積を求める場合、縦 $\times$ 横のような計算を考える人が多いと思います。しかし、この計算方法は特殊な四角形でないと使えません。今回のように正確な形がわからない場合には慎重に考える必要があります。これ以外の方法として、よく使われるのが三角形に分割するという方法です。多角形の最小単位は三角形であるため、これを利用して考えるというのは非常にシンプルな考え方です。
四角形を三角形に分割する場合は対角線で分割するのがふつうでしょう。そこで、下図のように $\mathrm{CD}$ で2つの三角形に割って考えてみます。$\mathrm{AB}$ で2分割してもいいのですが、$\mathrm{AB}$ の長さが簡単には求まらないので $\mathrm{CD}$ で分割していきましょう。$\mathrm{C}$ の $y$ 座標は $5$、$\mathrm{D}$ の $y$ 座標は $-7$ なので $\mathrm{CD}$ の長さは $12$ となります。
このとき、$\triangle\mathrm{ACD}$ の高さは $\mathrm{A}$ の $x$ 座標となるので $4$ です。したがって、
$$\triangle\mathrm{ACD}=\frac{1}{2}\times 12\times 4=24$$
となります。同様に $\triangle\mathrm{BCD}$ の高さは $\mathrm{B}$ の$x$ 座標の絶対値となるので $6$ です。よって
$$\triangle\mathrm{BCD}=\frac{1}{2}\times 12\times 6=36$$
となります。あとは、これを合わせて $24+36=60$ となります。
(3)も再び面積の問題になりますが、大切なのは、$\triangle\mathrm{ABD}$ と $\triangle\mathrm{CBD}$ の面積が等しくなるということです。
このとき、注意したいのが $\triangle\mathrm{ABD}$ と $\triangle\mathrm{CBD}$ に共通する辺 $\mathrm{BD}$ です。この辺 $\mathrm{BD}$ を底辺と考えると、$\triangle\mathrm{ABD}$ と $\triangle\mathrm{CBD}$ の面積が等しくなるためには「高さ」が等しい三角形となればいいわけです。ここに気づけば、底辺 $\mathrm{BD}$ と並行かつ $\mathrm{A}$ を通る直線を考えていけばいいという発想になるでしょう(下図参照)。なってください(笑)
(3)では、$\mathrm{D}(0,\ -3)$、$\mathrm{B}(-6,\ 2)$ となっているので直線 $\mathrm{BD}$ の傾きは $\displaystyle -\frac{1}{6}$ となります。したがって、傾き $\displaystyle -\frac{1}{6}$ で $\mathrm{A}(4,\ 3)$ を通る直線の方程式を求めると
$$y=-\frac{1}{6}x+\frac{11}{3}$$
となります。$\mathrm{C}$ の座標は $y$ 切片から $\displaystyle \left(0,\ \frac{11}{3}\right)$ となります。
大問4
内容 方程式
難易度 易
今回の方程式の問題は非常に易しい問題でした。文章を丁寧に読んで、関係を把握すれば「ほぼ解けた」状態になったのではないでしょうか。
A組の得点は50点で、そのうち3点シュートが2本(つまり6点分)で、残りは2点シュートであった(つまり44点分は2点シュートの得点)ということで、このとき、2点シュートの本数は22本だとすぐに分かります。これが(1)の答えですね。
(2)は少し複雑になりますが、これも「つまりどういうことか」を考えながら読んでいきましょう。A組は11点差でB組に勝ち(つまりB組は39点だった)、B組のシュートのうち1/6が3点シュートで残りは2点シュートだった(つまり2点シュートは5/6)ということです。
したがって、B組が成功させたシュートの本数を $x$ 本とすると
$$3\times \frac{1}{6}x+2\times \frac{5}{6}x=36$$
これを解けば、$x=18$ が得られます。
大問5
内容 作図
難易度 易
今回の作図の問題はとても基本的な問題でした。作図の問題では、条件を適切に把握できたかどうかがカギとなります。ここでも「つまりどういうことか」を考えていけば難しくはないでしょう。
与えられた条件は、$\angle\mathrm{ACP}=\angle\mathrm{BCP}$ と $\angle\mathrm{APC}=90^\circ$ の2つです。まず、$\angle\mathrm{ACP}=\angle\mathrm{BCP}$ については、Pが $\angle\mathrm{ACB}$ の二等分線上の点であることが把握できればOKです。また、 $\angle\mathrm{APC}=90^\circ$ については、$\mathrm{A}$ から $\mathrm{CP}$ の垂線を引けばOKです。この2つの直線の交点が求める点となります。
大問6
内容 平面図形
難易度 標準
大問7(復習おすすめNo.2)
内容 空間図形
難易度 標準
空間図形は最初から捨てているという人もいるようで、入試まで結局1回も解かなかったという猛者もいました。しかし、幾何の問題は平面・空間にかかわらず中学数学では非常に重要な内容であるため「やらないことにしている」というのは少々いただけません。試験時間内には難しくても、復習の際にじっくりと考える価値がある問題です。今回も(3)の体積の問題など、非常に良い問題になっているので、ぜひ取り組んでみてくださいね。
(1)は定番の平面と直線の位置関係です。ねじれの位置・垂直・平行について確実に理解しておくことが大切です。今回は、垂直でした。AB、DC、EF、HGの4本が該当します。
(2)は表面積の問題でした。四角柱 $\mathrm{AEFM-DHGN}$ の表面積なので、1つ1つの面を計算していってもいいのですが、計算をラクにするために一度展開してみるのも1つの手です。
展開図はこのようになるので、一気に計算してしまいましょう。真ん中の長方形の部分を一気に計算すると
$$8\times(10+12+5+13)=320$$
そして、2つの台形の部分を計算すればOKですが、これは2つを組み合わせて長方形にして計算してしまいましょう。
$$12\times 15=180$$
したがって、求める表面積は $500\mathrm{cm}^2$ となります。
(3)は一見すると計算が大変そうな問題に見えますが、ちょっと工夫すると簡単な図形が見えてきます。
与えられた図はこのようなものですが、四面体 $\mathrm{PQRS}$ の体積を直接求めるのはかなり大変そうです。こういう場合には、まわりから少しずつ削り取っていくという考え方が有効ですが、なんだかそれも大変そうです。
そこで面で切断することで分かりやすい形が出てこないかを考えてみましょう。分かりやすいのは $\mathrm{PQ}$ または $\mathrm{RS}$ で直方体を真っ二つにする方法です。図のわかりやすやから、今回は $\mathrm{RS}$ で切断した図を考えてみましょう。
図のように三角形 $\mathrm{IRS}$ が現れます。これは $\mathrm{PI}$ をそのまま平行に $\mathrm{ER}$ までスライドさせてできる切断面を考えるといいでしょう。面での切断は直線を平行なままスライドさせることを意識してみて欲しいです。
さて、このとき、三角錐 $\mathrm{P-IRS}$ の体積は
$$\frac{1}{3}\times \left(\frac{1}{2}\times 8\times 10\right)\times 6=80$$
あとは、これが2つ合わさったものとなるので、求める体積は $160\mathrm{cm}^2$ となります。
まとめ
今回が初めての模試だったという人も多いかもしれません。普段とは違う環境の中で受験してみると、考えられないようなミスをしたりするものです。まだまだ本番まで時間はありますし、模試を受ける機会もあります。まずは、普段と同じくらいの実力を発揮するために、どのような準備をしておくべきか考えてみましょう。
また、時間的に厳しいテストなので焦ってボロボロになってしまったという人もいるでしょう。そういう人に気をつけて欲しいのは、スピードを求めるあまり「いい加減」な勉強に突っ走ってしまうことのないように、ということです。問題の解き方を覚えてそれに従って答えを出すという方法は、手っ取り早く点数を取るためには効果的かもしれません。あるいは、難しい問題は捨てて、確実に得点を拾える問題だけを練習するというのも受験対策としては有効かもしれません。しかし、この時期にやるべきことは「対策」ではなく、正しく数学を勉強するということだと思います。
今年も総合模試がスタートしましたが、回を追うごとに受験生・保護者のみさなんから「数学が思ったより伸びなくて」といった内容の相談メールをいただく機会が増えていきます。気づいたときには手遅れ、ということのないようにじっくりと1つ1つの問題に取り組んでほしいと思います。
また、現時点での偏差値や得点、志望校判定はあくまでも「参考程度」にとらえておきましょう。これから先、いくらでも成績は伸ばすことができます。目先の点数を追いかけるのではなく、入試当日にどのような問題がきても対処できるような準備をコツコツと続けていきましょう。そのためには、理解の線引きをきちんとやったり、当たり前に思っていることを再点検してみたりということに時間を使っていく方がいいと思います。