というわけで、今日はそんな確率の話をちょっとだけ。
確率の考え方自体はものすごくシンプルなのですが、シンプルであるがゆえに勘違いが起こりやすいのかもしれません。
そして、いろいろな生徒を観察してきて感じるのは、うまく数える方法ばかりに気を取られていて、大切な部分が疎かになっている人が多いということです。
では、確率がどんなものか、まずは定義から見てみましょう。
この定義を読めば「なんだ、そんなことか」と思う人が多いようです。とくに、$\displaystyle\frac{n}{N}$ の形ばかりを見ている人は $N$ と $n$ を数えて $\displaystyle\frac{n}{N}$ にすりゃいいのね!みたいな乱暴な解釈をしていたりします。あるいは、「まあ割合みたいなもんっしょ!」みたいな大雑把な把握だけで終わる人もいます。
自分に都合の良いものだけを見て、理解できないものや難しい事柄を「なかったこと」にしたり「見なかったこと」にするのは絶対にダメです。
では、定義を確かめるために、次の問題を考えてみましょう。
よくある問題ですね。
(1) 表が2枚のパターン
(2) 表と裏が1枚ずつのパターン
(3) 裏が2枚のパターン
よって、求める確率は $\displaystyle\frac{1}{3}$ である。
こんなトンデモ答案をテストで書いたら、残念ながら0点になってしまいます。
分かっている人からすれば「んなアホな間違いしないでしょ!」と思うかもしれませんが、このレベルの間違いが案外多いのです。
大事なのは「同様に確からしい」かどうかということです。定義にもあるように、「起こり得る場合が $N$ 通りあり,その $N$ 通りがどの場合も同様に確からしく起こるとする」とありますので、これが保証されない場合は確率を考えても意味がないということです。
「同様に確からしく起こる」というのは、$N$ 通りがすべて等しい確率で起こるということです。
もう少し具体的に考えてみます。
いま、区別のつかないコインを2枚投げることになりますが、これを区別がつくように片方に印をつけておきます。
そうして、コイン1とコイン2の裏表を(コイン1、コイン2)というふうに分けて考えてみましょう。
(表、表)、(表、裏)、(裏、表)、(裏、裏)
となり、全部で4通りになります。これを、先ほどの分け方と照らし合わせてみると
(1) 表が2枚のパターンは(表、表)の1通り
(2) 表と裏が1枚ずつのパターンは(表、裏)(裏、表)の2通り
(3) 裏が2枚のパターンは(裏、裏)の1通り
となります。こうやってみると、この3パターンがどれも同じ確率で起こると考えるのはマズイなと気づく人が多いでしょう。
実際には、4通りあるうちの2通りとなり、求める確率は $\displaystyle\frac{1}{2}$ となります。
これでは納得がいかないという人は、次の問題を考えてみてください。
球をとり出すとき
(1) 赤球をとり出す
(2) 白球をとり出す
の2パターンがあるから、求める確率は $\displaystyle\frac{1}{2}$ としたらダメなことはすぐに分かると思います。
この確率が $\displaystyle\frac{1}{1000}$ となることが納得いかないという人は少ないように思います。
こうやって考えていくと、確率をどのように考えなくてはならないか(どう数えるべきか)ということが見えてきます。
そして「同様に確からしい」ということがいかに大切かが分かってきます。
あれ?本当に分かっているのかな? と不安になった人は、教科書に戻って1つ1つ確認してみるといいでしょう。