今年は新型コロナの影響で、夏休みやその前後のスケジュールが学校や地域でバラバラになっています。例年であれば、だいたい6月終わりから定期テスト期間に突入します。この定期テスト前後の期間は、入塾の問い合わせや学習相談のメールをいただく機会が増えるのですが、今日はその辺りのことをちょっとだけ掘り下げてみようかな〜と思います。
試験対策=勉強になっている人の特徴
塾で指導していると、定期テストや各種試験のための対策をすることが勉強だと考えている人が思った以上に多いなあと実感します。
そういう人に共通する特徴をざっと思い返してみると、だいたい以下のような感じになります。
- 試験の時期が近づかないと勉強しない
- 試験後の復習はほとんどゼロ
- 問題集などがなければ何をしていいか分からない
- 点数が取れる科目ばかり勉強する・点数が取れない科目は苦手科目だと思い込む
当然のことですが、試験対策を勉強だと思っている人は、試験がなければ勉強をすることはほぼありません。
勉強のスタイルは、試験の直前期にテストに出る部分を中心に詰め込む感じで、試験が終われば大半のことは忘れてしまうという人がほとんどです。
また「テストに出る・出ない」ということに関しては非常に敏感で「これってテストに出ますか?」というのが常套句になっている人もいます。そして、テストに出ない内容はほぼやりません。
こういうスタイルの人にとって、勉強の成果は点数や合否といったもので測られることが多く、成果が出ないと「嫌だな」とか「面白くないな」とか「面倒だな」というネガティヴな感情を持ってしまう人がほとんどです。
ここまでを読んで
と思った人は多いと思います。そのくらい「試験対策=勉強」というスタイルになっている人が多いのです。ただし、このことは「試験で点数を取る」というごく狭い範囲に限っていえば正しい方法かもしれません。しかし、それが「勉強のすべて」であるかのように思い込んでしまうのは非常に危険ではないかと私は思います。
定期テストの対策の罠
定期テストは基本的に学校で配布されるワーク・問題集などからほぼ同じ問題が出題されます。程度の差はあれ、中学校でも高校でもだいたいそうです。
なので、それらの問題集を繰り返しやって解き方を覚えてしまえば高得点を取ることが可能です。「問題集○周」という話が出てくるのもこのあたりからだと思います。
塾もいろいろで、中には学校ごとの定期テストの過去問をストックしているような塾もあるようです。そして、それらを先生が分析し、対策問題などを作って試験直前期に対策講座のようなものをやる塾もあります。そうやって、下駄を履かせる指導を行なっているわけです。
いわゆる
という、歪んだ状況です。人によっては点数が取れるのだから素晴らしいサービスだと思う人もいるでしょう。しかし、個人的には「間違った情熱だなあ」と思います。
このような指導の中では、基本的に生徒のやることが「与えれた問題を解くという作業」に特化されていきます。ザックリとした言い方にすれば「受け身」の姿勢を作ってしまうということです。「これさえやっておけば点数が取れる」というものを与えられ続けると、「自分は何をすべきか」という思考ができなくなっていきます。「どうしたらいいですか?」とか「何をやったらいいですか?」なんていうことを聞かれる機会が増えてきているのも、こういう指導の影響かもしれません。
いずれにしても、試験対策ばかりをやってきた生徒には
- 分からないものに対する理解したいという欲求
- 分からないものに対して自分の手や頭をフルに使って格闘しながら時間をかけて理解する
という勉強の大事な部分がごっそりと失われているような気がします。それが生徒本人が望んでそうなっているのであれば構いませんが、知らないうちにそういう方向へ導かれているとしたら、それは大きな問題ではないかと思うのです。
点数よりも大事にしてほしいこと
数学が得意な生徒を見ていると、ほとんどの生徒はテストの成績をあまり気にしていません。もちろん、点数が取れているということもあるかもしれませんが、そんなことよりも、テストが終わった後でできなかった問題をあれこれと時間をかけて考えている生徒が多いような気がします。「どこがわかっていないか」だとか「曖昧な部分はどこか」とか「勘違いしていないか」など、とにかく頭の中がクリアになるまで、とことん考え込む生徒が多いです。そして試験がない期間であっても、同じようにあれこれと考えています。
そのエネルギーの根源は何なんだろうね、という話をしてみると
という答えが返ってきます。やっぱり、勉強の根っこにあるのはそういうことだと思います。
それがいちばん大切なことです。もっといろいろ知りたいなあという素朴な欲求を大事にしてもらいたいと思います。
テストの点数が悪いからというだけで、その科目を嫌いになったりするのはもったいないです。点数が悪かろうが、時間がかかろうが、そんなことは関係のないことです。数学はテストで点数が取れる人たちだけのものではありません。点数のことばかりではなく、もっともっと大切なことに目を向けて欲しいなあと思います。