塾長
テストの採点をしていると、細かな問題点というか「あ、この生徒はここのところ理解していないな」なんていうことが見えてきます。解答に不自然なところが出てきたり、一貫性がなかったり、ちゃんと考えて解いたとは思えないような突飛な部分があったりと、ケースはさまざまです。今回は、採点をやっているときに気になった話をしようかなと思います。

高校数学では方程式が実数解をもつかどうかという問題が非常によく出題されます。大学受験でも1つの大きなテーマです。

高校1年生であれば、1次方程式や2次方程式が実数解をもつかどうかという基本的な問題を扱うことになります。また、高校2年生以降では、3次以上の高次方程式が実数解をもつかどうか、あるいは、三角比や対数を含んだ方程式が実数解をもつかどうか、さらには、実数解の個数が◯個となる条件は? といったより高度な問題を扱っていくことになります。

この「方程式が実数解をもつかどうか」の基本的な考察については、高校1年生で大部分を扱うことになります。この範囲の理解が浅いまま進んでしまうと、その後の内容にも悪影響を及ぼし、数学が壊滅的な成績になってしまうことになりかねません。

とくに判別式に対する理解度が浅い高校生が多く、むやみに判別式を用いてトンデモない答案を作っている人をよく見かけます。

トップ校で上位の生徒であっても以下のような答案を作ってしまう生徒がいるのです。

$x^2+(a+bi)x+i=0$ が実数解をもつための条件を求めよ。ただし、$a$、$b$ は実数、$i$ は虚数単位とする。
判別式を $D$ とすると、
\begin{align*}
D&=(a+bi)^2-4i\\
&=(a^2-b^2)+2(ab-2)i\geqq0
\end{align*}
より、$a^2-b^2\geqq0$ かつ $ab=2$(以下省略)

ちゃんと理解している人にとっては、「おお、やっちまったなあ!」という感じの答案です。残念ながら0点です。

教科書で扱う判別式 $D$ というのは、実数係数の2次方程式においてのみ意味を持ちます(一部例外はありますが)。上の問題は実数係数の方程式ではないので、そもそも判別式を使うこと自体がマズいですね。

「なんでこんなことになるんだろう」と以前は思っていたのですが、原因は見えてきています。

この手の問題では、ポイントとして問題集に赤字で

2次方程式が実数解をもつ $\Longleftrightarrow D\geqq 0$

という感じのことが書いてあるわけです。もちろん、そういう場合もあるのでこの表記が完全にNGというわけではありません。しかし、実際に勉強をしている生徒を見ていると、こうしたポイントの表記が、理解を浅いところで止めてしまう要因の1つであるように思います。

まず、この手の問題集を中心に勉強している生徒の大半は「教科書をまともに読んでいない」ということです。テストの問題を解けるようにすることが第一になってしまっているため、手っ取り早く解ける方法の方が重要なのです。

そうすると、上記のような呪文が非常に有効となります。実際に、ある程度のレベルまでであれば、呪文を覚えているだけでも、テストで得点することが可能です。

ただし、呪文を覚えているだけの人は前後の繋がりなどが欠落しているため、繰り返しているうちに「実数解は $D\geqq0$」あたりまで精度が落ちてしまうようです。その結果、上のようなとんでもない答案を作り出してしまうことになるわけです。

しっかりと前後の繋がりが分かっていれば、こうしたあり得ないミスは起こらないはずです。

そもそもこの判別式は、突然降って湧いてきたものではありません。

実数係数の2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ (当然 $a\neq 0$ です)の解は

$\displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$

であることを中学生で学びました。

この実数係数の2次方程式の解が実数になるかどうかは、根号内の $b^2-4ac$ の符号で決まります。そこで、この部分だけを取り出して名前をつけたものが「判別式」(記号では $D$)というものでした。根号内が負となると実数ではなくなってしまうため、2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ が実数解をもつためには、$b^2-4ac\geqq 0$ すなわち $D\geqq 0$ でなければならないという話です。

なお、この解の公式は複素数係数の2次方程式でも有効であることを数学IIで学びます。

しかし、先に述べたように判別式については実数係数の場合でしか使えません。そもそも根号内が虚数となってしまえば当然実数ではないし、正だの負だのを考えること自体が無意味です。

たったこれだけの話なのですが、すっかり抜けてしまっている、もしくは、そもそもそんな話すら知らないという生徒がたくさんいます。

こんな大事な話を授業で触れていないわけはないでしょうし、それ以前に教科書にもしっかりと記述されています。

しかし、多くの高校生にとって、このようなどうでもいいことを勉強するのは数学の勉強ではないと認識されているようです。

塾長
「どうでもいいこと」ではなくて、それこそが数学の勉強なんですが、この話はなかなか(全然)伝わらないですね・・・

最近の中高生を見ていると、どのレベルの問題集をどのくらいのペースでやるか、あるいは何周するかといったことの方が大事になっているように見えます。塾生を見ていても、教科書を読んでいる生徒はほとんどいません(教科書を読めと何度伝えてもダメです)。

たいていの高校生が、学校で配布された某出版社の問題集(さあ苦しいぞ!みたいな名前のやつ)をやることが数学の勉強の中心になってしまっています。

まあ、これも時代といえば時代なのかもしれませんが。

でも、そんなのに負けるのも嫌です(笑)

きちんと理解するということに関しては、やっぱり徹底的に伝えていきたいなあと思いますね!

塾長
話が長くなってきたので今回はここまでとしておきます。
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