いったい何を学んでいるんだろう

10月10日といえば「体育の日」なんていう昭和のおじさんですよ、やっほー! 今日も高校数学の「え?」というネタを書いてみようかなと思います。
前回、判別式に関する「実は分かってないのでは?」みたいな話を書きました。
今日は「まあ、それは何も分かっていないよね」という話です笑。
ネタになってくれるのは円順列です。
$n$ 個の異なるものを円形に並べて相互の順序だけを問題にするとき,その1つ1つの並べ方(または並べたもの)を $n$ 個のものの円順列という。
という話なのですが、これについては $(n-1)!$ という公式を使って問題を解いている生徒が大半です。
そこで、この公式はどうやって出てくるのかということを聞いてみると、きちんと答えられる生徒が非常に少なくてがっかりします。
中には「$n$ 個のものの円順列の数は $(n-1)!$ である」と覚えてしまっている人もいます。
それでも問題が解けてしまうので理解できていると思い込んでしまう人がいるのも仕方ないことではありますが。
数学を教えていると、こうした実は分かってないという状況にある生徒を多数見かけることになります。
そこをしっかりと見極めて、おかしな方向に進まないように軌道修正するのが指導者の本来の役割のはずなのですが、最近は、さらにおかしな方向に進めようとするレベルの低い指導者が増えたように思います。
せっかく能力がある生徒が、そういう指導で潰されてしまっているのを見ると、本当にやり切れない気持ちになります。
というわけで、この公式をきちんと考えてみましょう。
数学を学ぶ上で注意してほしいのですが、公式を覚えてそれを当てはめて使うことに慣れてしまうと、以後の勉強がまったく数学の勉強にならなくなってしまいます。便利だからといって安易に結果だけを覚えないようにしてください。
話を戻します。
この円順列の考え方は次のようなものです。
具体例としてA、B、C、D、E、F、G、Hを円形に並べる場合の並べ方の総数を考えてみましょう。
最初に、下図のように各場所に1〜8までの番号を割り当てます。

そして、この1〜8にA、B、C、D、E、F、G、Hを並べていくことを考えましょう。
このように考えると円形になってはいるものの、8個のものを1列に並べる順列と同じになります。
1〜8の場所を円形ではなく、一直線に並べても同じ話になります。
この順列の総数は、$8!$ となります。
しかし、円順列では回転しても同じと見なせるものは1通りとするのが重要なポイントです。
つまり下のパターンは全部同じものであると見なせます。

最初に数えた $8!$ の数え方は、これらを別々にカウントしています。
例えば、上2つの場合はふつうの順列として考えると
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| A | B | C | D | E | F | G | H |
| H | A | B | C | D | E | F | G |
となるので、異なるものとしてカウントしています。ところが、上の図のように円順列では同じものとなります。
このように回転して一致するものが、8通りずつ重複して数えられていることになります。
したがって、8で割ってあげることで重複を解消して1とカウントすることができます。
$$\frac{8!}{8}$$
これが円順列の基本的な考え方になります。
1つの並び方に対して、同じと考えられるものが何個出てくるかがポイントです。上の図からも分かるように使う文字の総数分(座席の数)だけ同じものが出てきます。したがって、一般に円順列は次のように考えられるのです。
円形であることを無視して、$n$ 個のものを並べかえる順列の総数は $n!$ ある。それらの中から1つの並びを代表として取り上げる。その代表とした並び方を回転して同じと考えられるものが $n$ 通りある。このように、$n!$ の中には、1通りの並び方が $n$ 回重複して数えられているので、実際の円順列の総数は、$\displaystyle \frac{n!}{n}$ となる。
さらに
$$\frac{8!}{8}=\frac{8\cdot7\cdot6\cdot5\cdot4\cdot3\cdot2\cdot1}{8}$$
となるので、結局は $7!$ と計算できることになります。すなわち
$$\frac{n!}{n}=(n-1)!$$
となり、いわゆる円順列の公式が得られます。
ここまでの話が、しっかりと自分で導けるようになっていれば、理解できていると考えても大丈夫でしょう。
「円順列は $(n-1)!$ を使って解く!」くらいの理解度とは大きな隔たりがあることを知ってくださいね。
さらに、この $(n-1)!$ について考えてみます。
下図のようにAを固定してしまいます(これで文字を1つ使ってしまいます)。

空席は1〜7であり、ここに残りの文字を入れる方法は、先に使った文字を1つ除いて、$n-1$ 個を並びかえる場合の数となるので、$(n-1)!$ 通りとなります、先ほどと同じ結果が得られたことに着目してください。
考え方の違いは、回転させるかさせないかという部分です。最初の考え方は、実に素直な考え方で「まず順列を考えて、回転させて同じになるものをそこから除外しよう」というものです。
2つ目の考え方は、「どうせ回転しても同じになるのだから同じになるものの代表を1個だけ考えればよい」というものです。
どちらが正しいというわけではありませんが、場合の数や確率の根底にある原則を考えれば、やはり重複分を解消するという考え方は無視できません。両方を正しく理解した上で、使いやすい方を選択できるようになれば理解も深まるでしょう。
というわけで、単に $(n-1)!$ という公式を用いて問題を解きまくったとしても、上のような理解に到達することはとても難しいのではないかと思います。
それにもかかわらず、ただひたすら問題集を繰り返している人をたくさん見かけます。本当にそれで数学の勉強になっているのか、一度疑ってみて欲しいなあと思います。













