先日の高校1年生の授業では絶対値を含んだ方程式や不等式の問題をかなりネチネチやりました(笑)
高校数学は展開や因数分解からスタートするわけですが、スタートからおかしな方向に向かって進んでいく人もいます。本人はおかしな方向に進んでいることに気づいていなかったりするんですが。
で、そうするとだいたい絶対値のあたりから「???」となる人が増えてきます。みなさんはどうですか?
絶対値のあたりからおかしくなってくるので「絶対値を理解しないとダメだ!」と思う人が多いのではないかと・・・
ところが、毎年いろいろやってみると、実は絶対値の部分が理解できていないという人はそれほど多くありません。
\begin{align*}
|\,x\,|=\begin{cases}x&(x\geqq 0)\\-x&(x\leqq 0)\end{cases}
\end{align*}
という定義は分かっているし、$|\,3\,|=3$ や $|-3\,|=3$ もきちんとできています。
また、この定義を数直線上で捉えてみればそれが原点からの距離を表すという視覚的な理解も持っています。(このあたりが理解できないという人は、教科書に戻って丁寧に読んでいけば分かるはず!)
そうした確認をネチっこくした後で(笑)たとえば $|\,x\,|=3$ などをやってもらうと全員がシュババっと $x=\pm 3$ と解いてくれます。
また、$|\,x\,|>3$ だとか $|\,x\,|<3$ などもシュバババババっと解いてくれます。
最初の壁は、$|\,x\,|=-3$ や $|\,x\,|>-3$ や $|\,x\,|<-3$ などでしょう。
これについても、$|\,3\,|$ や $|\,-3\,|$ や $|\,0\,|$ などいろいろな数を試してみると「絶対値が負の値になることはない」という性質を理解してもらえます($|\,x\,|\geqq 0$ という説明だけで事足りる人とそうでない人がいるわけです)。
そうすると、先ほどの $|\,x\,|=-3$ や $|\,x\,|>-3$ や $|\,x\,|<-3$ についても不等式が理解できていれば「なんだ当たり前じゃないか」と腑に落ちるはずです。
$|\,x\,|=-3$ なんて等式や $|\,x\,|<-3$ なんて不等式は絶対に成り立たない(解なし)し、 $|\,x\,|>-3$ は $x$ が何であっても絶対成り立つ($x$ は任意の実数)わけです。
まずは、こうした具体的な数であれこれとやるというのをネチネチやるわけです(笑)
そして、そこから次のような問題をやってもらいます。
(1) $|\,x\,|=a$
(2) $|\,x\,|>a$
(3) $|\,x\,|<a$
具体的な数でやっているうちは正答率は高いわけですが、これが上記のような文字を含んだものになると正答率が著しく下がります。
つまり、原因は絶対値にあるのではなく文字の扱いにあるということなんです。たとえば、(1)なんかを何も考えずに $|\,x\,|=\pm a$ などとする人もたくさん出てきます。
このように、具体的な値の場合と文字の場合が完全に切り離されてしまっている人がたくさんいるわけです。$|\,x\,|=a$ が $|\,x\,|=3$ や $|\,x\,|=-3$ や $|\,x\,|=0$ などの場合をすべて含んでいるという認識がまったくなかったりするのです。
こうした具体例による確認をきちんとやってきた人は、文字で表されていてもスッと理解できるわけです。
しかし、高校生の現実を見ていると多くの人がそのレベルに達していません。そのため、具体的な数をあれこれと試してみるということを普段の勉強の中で「自分の手を使って」やる機会を意識的に作る必要があるのではないかと思います。
困ったことに参考書の中には、
などと具体的な作業の結果だけをまとめてあるものがあります。そうすると、生徒はこれを覚えようとするのです。
そうではなく、1つ1つ値を入れてみて確認していけば「当たり前の話」であって「覚えるものではない」ということが分かるはずなのです。
そうした理解する機会を放棄してしまっている人があまりにも多いんじゃないかな〜と思います。
入試対策に力を入れるのもいいですけど、足元が固まっていればもっとラクにできるのになあと思わざるを得ません。
というわけで、塾生にはこういう部分をネチネチと伝えていきたい塾長でした。