夏期講習期間は演習がメインということもあり、生徒が問題を解くところを観察する機会がかなりたくさんありました。
実際に解いているところを観察すると、いろいろな発見があって面白いです。
普段の授業中もそうなのですが、数学では、とくに次の部分をよく観察するようにしています。
ここを見れば、その生徒が順調に伸びていくかどうかがある程度は分かります。
- 手が全く動かずに思考停止している生徒
- あれこれ書き出して、糸口を探そうとする生徒
- 参考書などを開いていろいろ確認する生徒
- ヒントを待っている生徒
大体が上記のような感じになるのですが、この中で順調に伸びていくだろうなというのは、2番目のタイプだけです。
手が動かない生徒や、ヒントを待っているタイプは言わずもがなですね。
また、参考書を開いて確認する生徒も伸びそうな感じがするかもしれませんが、数学の場合は、このタイプの生徒で伸びるタイプは経験上あまりいないように思います。調べるよりも、その場で自力で解決する能力の方が遥かに重要なのです。
解けない問題と書きましたが、入試において「解けない問題」が出題されることはありません(もちろん、出題ミスなどで解けない場合は除きます)。
実際には「解けない」のではなく「どう解いていくか」が見えにくい問題という表現の方がいいでしょう。
あるいは「受験生の多くが知らない問題」でもいいかもしれません。
いずれにしても、手がかりが上手に隠されていたり、普段とはちょっと違う角度から情報が提示されていたり、そんなタイプの問題です。
そして、入試においては、こうした問題が合否を左右する問題となり得ます。
では、その隠された手がかりや、違う角度から提示された情報を、見えやすいものにするにはどうしたらいいのでしょうか。
これには、実際に具体的なものを書き出してみるというのがいちばん有効なのです。
そうして、いくつかの具体的な情報にしてみたら、今度はそれらの中に規則性などがないかを観察していきます。
もし、何らかの規則があるようであれば、次にそれを抽象化してみます。
そうしたことをやっていくうちに、「あ、なんだ、こういうことか!」みたいなブレイクスルーに到達するでしょう。
このような作業を地道に繰り返し習慣化させてきたタイプの人は、成績が高いところで安定する傾向が強いです。
もちろん、知っている問題であればそれを解く手がかりが見えにくかったとしても、解答のフォーマットが先に頭の中にあるので、簡単に探し出すことができます。
そのため、中には「知らない問題を極力減らせばよい」と考える人もいます。
フォーカスゴールドなどのいわゆる網羅系の問題集で解法を暗記するというのは、そうした考え方が根底にあるのでしょう。
しかし、記憶できる分量には限界があります。また、そうした網羅系にありがちな定型問題ばかりをやっていると、その枠に囚われすぎて、かえって柔軟な発想を妨げることにもなりかねません。
暗記を否定する気はありませんが、それだけで乗り切れるほど数学は甘いものでありません。
また、高得点を取りたいというであれば、問題を様々な角度から眺める力が必要不可欠です。
そのためには、普段から具体的なものを書き出して考えてみることを習慣化しておくべきだと思います。
鮮やかで効率的な方法だけを拾い集めるだけでは見えてこない世界もあるのです。
そういうことを肝に銘じて勉強に取り組んでほしいですね。