比の計算から見えた問題点

塾長
総合模試や高校入試関連の記事にたくさんアクセスがあるなと思ったら、昨日は第3回石川県総合模試が実施されたようです。今回は塾として受験していないため解説などはありませんが、せっかくなので、中学数学について何か書いておこうかなと思います。

夏期講習の授業の際に、$2:3=x:18$ のような比の計算が出てきたのですが、そのときに「どうやって計算しているか」ということを生徒に聞いてみました。

大半の生徒が、次のような計算をすると答えました。

$3x=36$ したがって、$x=12$

こうした比の計算方法は、以前から「面倒なことするなあ」と感じていました。

実際、$3x=36$ などと余計な計算を挟むことで、逆に計算ミスが増えてしまうことになりかねません。

そもそも、$3x=36$ なんて面倒なことをしなくても、比の概念が分かっていれば、$x=12$ は1秒で分かるはずなのです。

なぜ、こんな面倒なことをやってしまうのか不思議に思っていたのですが、実は、問題集などのポイントや解説の部分に「比例式は外項の積=内項の積」「$a:b=c:d$ ならば $ad=bc$」のようなことが書いてあることがほとんどなのです。

そして、上記の方法で比例式が解けることが例題で示されており、その後に類題がたくさんあって、例題と同じ方法でやるような構成になっています。

もちろん、$a:b=c:d$ ならば $ad=bc$ という事実自体は何も間違っていないので、このように解いても問題はありません。

ただ、大切なのは「こうやって解いても問題ない」というだけであって、「こうやって解かないとダメ」あるいは「こうやって解くもの」というわけではないということです。

にもかかわらず、大半の生徒が $2:3=x:18$ をこの方法で解いているというのは、ちょっと怖いなと感じます。

塾長
数学を指導する身としては、見た瞬間に $x=12$ が出てきてほしいですし、それが出来ないのであれば、比の概念がしっかりと理解できていないのではないかと思ってしまうのです。

また、$\displaystyle\frac{2}{3}=\frac{x}{18}$ となっていたとしても、比の概念が理解できていれば、見た瞬間に$x=12$ と分かります。

しかし、多くの生徒が $2:3=x:18$ の場合と同じように $3x=36$ という式を経由して計算します。

そして、この際も「斜めにかけてイコールでつなぐ」などという謎の呪文にしたがって解いている生徒がかなりの割合で存在します。

さらに恐ろしいのは、$2:3=x:18$ と $\displaystyle\frac{2}{3}=\frac{x}{18}$ が「全く別のモノ」として見えている生徒が少なくないということです。

塾長
仮に、$3x=36$ という面倒な計算を経由するとしても、どちらも同じ式を経由することになるのだから、$2:3=x:18$ と $\displaystyle\frac{2}{3}=\frac{x}{18}$ は同じである、みたいな考え方さえも失われているわけです。

こうした傾向は、以前は高校生にとくに多く見られたのですが、最近では中学生でも顕著に目立つようになってきました。

比の概念を理解することが最優先であるはずなのに、「正解を求める方法」を最優先してしまう結果なのではないかと考えます。

その結果として、正解は出せるが概念は理解していないという歪な状況が発生してしまうのです。

こうした背景には、「数学は何かしら解き方というものがあって、それを用いて解くもの」という誤った認識があるように思います。

とくに私が気にしているのは、その認識が指導者側に蔓延しているのではないかということです。

そのため、解き方を覚えるために問題集を何回も繰り返させる・課題を大量に与える、といった苦行を中高生に課すことになっているのではないかと思います。

そうなると、一部の優秀な学生以外は、勉強している割には成績が伸びない・理解が深まらないという苦しい状況が続いてしまいます。

数学で苦労する人が多いのは、そもそも「数学というものに対して誤った認識を持っている」「数学とは違う何かをさせられている」という可能性が大きいように思います。

一方で「とりあえず入試をクリアできれば何でもいい」という人にとっては、正解を求めることに特化した方が望む結果が得られるかもしれません。

塾長
それはそういう価値観であり、否定はしません。ただ、個人的には、せっかく勉強するのであれば、表面をなでるだけではなく、その奥行きなども感じて楽しんでもらいたいなあと思うわけです。

いずれにしても、解き方を覚えてそれを用いるというだけで高得点が取れるほど浅いものではないことは確かです。

たかが比の計算で大げさな、と思われるかもしれませんが、こうした小さな積み重ねが、最終的な数学力を決めることになります。

何となくやってしまっていることについて、一度、じっくりと考えてみてもいいかもしれませんね。

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