【え?それも暗記してるの?】シグマ記号に見る考え方のアレコレ

塾長
休校期間中にオンラインで授業を進めていた高校では、例年よりもさらに早く授業が進んでいるようです。個人的にはあまり好ましく思わない状況ですが、オンラインでの授業は対面で行う講義形式の授業に比べて進み方が早くなりがちです。このことは自分でも実際にやってみて強く実感しました。そういうこともあって、授業についていけない人も増えているのではないかと思います。

高校2年生の中には、学校の授業ですでに数列が終わってしまったという生徒がいました。ちょっと進み方が早すぎるように思いますが、どうなんでしょうか。生徒がきちんと理解できているのであれば問題はありませんが、質問の応対をしていると、基本的なところからすでに曖昧な感じになっています。休校期間中にオンラインでの授業がどんどん進んだようですが、どうもそれが「一方通行」で終わっているような気がしないでもありません。

数列に対する理解度

数列の単元は「なんとなく難しい感」があるのですが、実際にやっていることは、案外小学生レベルのことが多かったりします。ただ、表記の仕方が記号や文字を中心としたものとなるために、「なんとなく難しい感」があるだけです。この記号に関する問題は以前の記事でも書きました。

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このシグマ記号については、高2生のみならず高3生の入試対策でもいろいろな問題が登場しますが、理解の仕方に偏りがあったり、単なる数式として暗記している人もいたりとかなり理解度にバラツキがあります。率直に言うと

ちゃんと理解している人が少ない

ということです。

というわけで、今回の記事は、塾の授業でどんなことを教えているのかをチラッと紹介してみます。

シグマ記号を例に

単純な話からスタートしてみましょう。

$$\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$$

という「公式」があります。これをそのまま丸暗記している人もいます。そういうタイプの人は

$$\sum_{k=1}^{n-1}k$$

などとなると、急に手が止まってしまいます。

あるいは、これさえも $\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}k=\frac{1}{2}n(n-1)$ と暗記している人がいて、そういう人は、先ほどの $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$ と基本的には同じものだという感覚がなかったりします。

こういうのは当たり前の話で、$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$ と結果をただ丸暗記してしまうと、この式がどのようにして出来上がっているかを理解することはできません。

シグマ記号は何を表したものか

実際には、自然数を順に並べた数列の初項から第 $n$ 項までの和

$$1+2+3+\cdots\cdots+(n-1)+n$$

を記号で $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k$ と表記することもできるよ!ということにすぎず、記号の意味は「$k$ に1から順に $n$ まで自然数を放り込んでいったものをすべて足し合わせたもの」ということなのです。

シグマ記号とイメージ

さらに詳しく内容を考えていくと、この自然数の和

$$1+2+3+\cdots\cdots+(n-1)+n$$

は初項 $1$、交差 $1$ の等差数列の和となっています。

$1$ から $n$ までの自然数を足していくと下の図の白い階段の面積と考えることができます。

※白の各長方形の幅は1で、高さには各自然数が対応します。

そして、これを反転させた灰色の階段を作って重ね合わせると上のような長方形がキレイに出来上がります。

このとき、長方形のたての長さは $1+n$ となっています。そして、横の長さは $1$ が $n$ 個分あるので $n$ です。

したがって、この長方形の面積は $n(1+n)$ と表せます。そして、長方形の面積は白い階段を2つ重ねてあるので、これを2で割って

$$\frac{n(n+1)}{2}$$

となります。これで最初の「公式」が得られました。こうしたイメージでもいいですし、あるいは下のような表で考えてもいいでしょう。

1から $n$123$n-1$$n$
$n$ から1$n$$n-1$$n-2$21
$n+1$$n+1$$n+1$$n+1$$n+1$

$1$ から $n$ までの列とそれをひっくり返した $n$ から $1$ の列を作って、それらを縦に加えると、すべて $n+1$ となります。あとは、$n+1$ が $n$ 個あるので、$n(n+1)$ となり、これを2で割ると

$$\frac{n(n+1)}{2}$$

となります。何にしても「この式がどうやってできているか」が分かればOKです。

基礎から応用へ

$\displaystyle \frac{n(n+1)}{2}$ がどういうふうに成り立っているかが分かったら、応用も難しくはないです。

たとえば $\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}k$ の場合は

$$1+2+3+\cdots+(n-2)+(n-1)$$

となります。これを同じようにイメージで捉えてみると

とほとんど同じものとして考えることができるでしょう。この結果は

$$\frac{1}{2}n(n-1)$$

となります。頑張って暗記するようなものでもないですし、基本的には最初に出てきた $\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$ とほとんど何も変わりません。

このような捉え方ができていれば $\displaystyle \sum_{k=3}^{n+1}k$ なども難しく考えることなく計算できます。

さらに、形式的な部分に目を向けると $\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}k=\frac{1}{2}n(n-1)$ という結果から、これは $\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$ という式において $n$ をすべて $n-1$ に入れ替えたものとなることも分かります。

理解していれば難しくない

数学の勉強にも覚えなくてはいけないことはもちろんあります。しかし、今回の記事で見たように、何でもかんでも丸暗記していると応用はできません。しかし、正しく理解をしていれば、難しいことをあれこれ考えなくても自分で何とかできることが増えていきます。私が中高生に身につけてもらいたいのは、こういう能力です。

試験勉強ばかりに夢中になって、見たことがないような問題を見たら「あ、これは捨て問だ!」なんて言って考えることを放棄するような生徒にはなってもらいたくないなあと思っています。

  • 難しいことや分からないものに積極的にチャレンジする
  • 間違っていることを丁寧に検証して対策を考える
  • 分かっていること・知っていることで何とかできないか考えてみる

こういったことを自然にできるような生徒を育てたいと常々思っています。

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