第1回石川県総合模試を受験されたみなさん、お疲れ様でした!
第1回から受験する人は入試に対する意識が高い人が多く、必然的に上位校狙いの人が多くなるのではないかと思います。
そんな受験した皆さんの出来はどうだったでしょうか?
難しくて嫌になったという人もいれば、思ったほどではなかったなという人もいるでしょう。
受験勉強が本格的にスタートするのはこれからだと思うので、現時点での出来不出来はあまり気にしなくても大丈夫です。
それよりも、反省・自己分析をきちんとやって、夏休み以降の勉強に活かしていきましょう!
概観
問題全体のセットは大問数が7(うち小問数23)で、いつも通りの標準的なセットでした。
石川県の公立高校入試もほぼ同じ分量となります。問題数については入試で大幅な変更がない限り、このくらいが目安になります。
大問1の小問集合以外は、どの問題も思考力を要する問題ばかりとなっています。さらに、計算の過程を記述させる問題、証明などの説明を求められる問題が多いため、試験時間内に全ての問題を解き切るのはかなり難しい構成となっています。
そのため、全部解けなかったといって必要以上に気にしなくても大丈夫です。むしろ、全部解こうとするあまり雑な思考になってしまう方が問題です。
「問題を見たら瞬時に解き方を思いつけるようにしないとダメ」などという指導をする人もいますが、近年の入試問題はすぐに解き方を思いつけるような単純な問題は出題されなくなってきています。
とくに幾何分野の問題では試行錯誤の経験が大きくモノをいうため、最短距離で正解に辿り着くような勉強ばかりしていると、逆に対応できない問題が増えることなってしまいます。
また「問題集を繰り返しやって解き方を覚える」というような時代遅れの勉強法も通用しなくなってきていることも肝に銘じておきましょう。
大切なことは試験の対策ではなくちゃんと数学の勉強をすることです。正攻法で数学を学んでいれば、本番でもしっかりと得点できます。
とはいえ、せっかくの模試に無策で臨むのも無意味です。
時間配分であったり、問題の優先順位などをを考えて挑むことも現実には必要となります。毎回、しっかりと自分なりの目標設定をして受験するようにしましょう。
出題内容については、前半は方程式や関数などの計算を中心とした代数の問題、後半が作図を含む幾何の問題となっています。
各分野からバランスよく出題されており、難問・奇問のような問題はありません。入試標準レベルの良問が揃っています。
試験では時間が足りなくてできなかった問題については、復習の際に、まずは時間を気にせずに取り組んでみるといいでしょう。
復習をしっかりやれば相応の実力アップが期待できる問題ばかりなので、少なくとも試験後1週間以内には復習をやってしまいたいですね。
全体的な難易度 標準
問題の解説
ここからは問題の具体的な解説となります。問題用紙を準備してご覧ください。
大問1
内容 小問集合
難易度 易
基本的な計算力や知識を問う問題となります。この大問1はどの学力層の生徒も満点を狙いたいところです。とくに数学が苦手な人は、大問1の得点が重要となるので、できなかった部分については知識項目の確認から復習をやっておきましょう。
(1)は単純な計算問題なのですが、案外ミスする人が多く、満点をとっている人は思ったより少ない印象です。
計算が苦手な人は、丁寧にやるべき部分と暗算でサクッとクリアすべき部分を明確に分けていくといいでしょう。中学生を指導していてよく見かけるのは、途中式が多すぎるケースです。途中式が多いと丁寧に解いていると考える人もいるかもしれませんが、ほとんどの場合ただの無駄です。途中式を最小限に抑えるのが計算ミスを減らすコツです。そのためには暗算力を高めていきましょう。また、計算の工夫も常に考えてください。
なお、それ以前にそもそもの計算ルールが曖昧であるという人もいるので、そういう人は計算の規則を確認することから始めましょう。
(2)の整数の問題はよくあるタイプの問題です。約分して分母が消え、分子に自然数の2乗が残ることを考えます。約分の際、分子の因数が見えると簡単になるので、素因数分解をしておくと簡単になります。
$$\frac{5\times 5\times 5\times 7\times 2}{n}$$
となるので、分子に $5\times 5$ という2乗の形が残るように $n=5\times 7\times 2=70$ とすればOKです。
(3)は角度の問題でした。$l//m$ なので、同位角を利用して $x$ を移動すると図のようになります。
$$x+46+70=180$$
となるので、$x=56^\circ$ となります。
(4)は簡単な確率の問題でした。高校入試の確率の問題は基本的なものがほとんどです。できるだけ具体的に書き出して考える習慣を身につけておきましょう。
2つのサイコロの目の出方は $6\times 6=36$ 通りあります。このうち、目の和が10となるのは(大の目、小の目)と表したとき
$$(4,\ 6),\ (5,\ 5),\ (6,\ 4)$$
の3通りとなります。したがって、求める確率は $\displaystyle\frac{3}{36}=\frac{1}{12}$ となります。
(5)は資料の整理です。中央値はちょうど真ん中の値となります。人数をみると、20人なので9番目の人と10番目の人の平均が中央値となります。順に数えると9番目と10番目の人が所属するのは、56以上58未満の階級です。したがって、階級値は56と58の平均をとって、57となります。
大問2
内容 規則性
難易度 易
大問2は規則性の問題でした。大問2は、規則性の問題以外にも確率の問題や統計の問題が出されることもあるのでよく準備をしておきましょう。
規則性の問題も確率の問題と同様に具体的に書き出してみるということが重要です。
具体例を観察しながらそこに隠れている規則性を見出しそれを数式で表現する、という数学の基本的な考え方が凝縮されています。そういう意味でも、この規則性の問題は難易にかかわらずとても重要な問題となります。
今回は、次のような2つの図(花菱模様)が与えられていました。1段目に●が3つ並ぶ場合と、4つ並ぶ場合の2通りの図です。
(1)は1段目に9個並ぶとき、5段目に並ぶ●の個数を求める問題です。
2つの例を見れば、1段目と5段目の●の個数は等しくなることは一目瞭然です。不安があれば、もう2つほど具体例を作ってみましょう。1段目に●が5つ並ぶ場合と、6つ並ぶ場合です。
やはり1段目と5段目の●の個数は等しくなっています。したがって、答えは9個となります。
(2)が本題です。(1)で作った具体例を観察しながら、考えましょう。1段目の●の個数が3個、4個、5個、6個の場合を整理してみると、規則が見えてくるでしょう。(下表はスクロールします)
1段目の●の個数 | 3個 | 4個 | 5個 | 6個 | $n$ 個 |
2段目の●の個数 | 4個 | 5個 | 6個 | 7個 | $n+1$ 個 |
3段目の●の個数 | 5個 | 6個 | 7個 | 8個 | $n+2$ 個 |
4段面の●の個数 | 4個 | 5個 | 6個 | 7個 | $n+1$ 個 |
5段目の●の個数 | 3個 | 4個 | 5個 | 6個 | $n$ 個 |
図形の対称性から、4段目と5段目は1段目と2段目とそれぞれ等しい個数となります。
また、1段目から3段目までは●の個数は1個ずつ増えることが見えてきます。
これを一般化して1段目の●の個数が $n$ 個の場合を考えましょう。2段目は1個増えるので、$n+1$ 個、3段目は2個増えるので $n+2$ 個となります。たったのこれだけです。あとは、4段目、5段目に同じ個数が現れます。
したがって、1段目の●の個数が $n$ 個の場合、●の総数は
$$2n+2(n+1)+(n+2)=5n+4$$
となります。よって、●の総数が139個のときは
$$5n+7=139$$
これを解くと、$n=27$ となります。
大問3
内容 関数
難易度 標準
大問3は関数の問題でした。今回は $\displaystyle y=\frac{16}{x}$(ただし $x>0$)といういわゆる反比例の関係でした。
上図のようなグラフが与えられており、Aの $x$ 座標が1、Bの $x$ 座標はAの $x$ 座標より大きいというのが条件です。また、Aから $x$ 軸にひいた垂線と $x$ 軸との交点をC、Bから $y$ 軸にひいた垂線と $y$ 軸との交点がD、ACとDBの交点がEとなります。まずは、すぐにAの座標が分かります。$\displaystyle y=\frac{16}{x}$ に $x=1$ を代入して、$y=16$ となります。よって、A$(1,\ 16)$ となります。
(1)は、関数 $y=ax$ のグラフが点Aを通るときの $a$ の値を求める問題です。$y=16x$ とすぐに分かるでしょう。このくらいの問題であれば即答してほしいところです。ごちゃごちゃ計算してしまったという人は、もう少し関数やグラフについての理解を深めておきましょう。
(2)は四角形OCDEの面積が何と等しくなるかを考える問題です。関数というよりも図形の問題です。
まずは、四角形OCDEの面積を考えるために、もう1度図を見てみましょう。
四角形OCDEの面積は $\mathrm{OC\times DO}$ で求められます。$\mathrm{OC}$ は点 $\mathrm{A}$ の $x$ 座標と等しいので $1$ です。また、$\mathrm{DO}$ は点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標と等しくなります。点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標は具体的には分からないので、とりあえず $x$ 座標を $x=t$ として、$\displaystyle y=\frac{16}{t}$ と表しておきます。
さて、このとき四角形OCDEの面積は
$$1\times \frac{16}{t}=\frac{16}{t}$$
となります。つまり、四角形OCDEの面積は点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標と同じ値となることが分かりました。よって、答えはエです。
(3)も関数の問題というよりも図形の問題です。$\triangle\mathrm{AEB}$ と $\triangle\mathrm{ECB}$ の面積比が $5:1$ になるときの点 $\mathrm{B}$ の $x$ 座標を求める問題です。必要な部分だけ抜き出してくると下図のようになります。
このとき、$\triangle\mathrm{AEB}$ と $\triangle\mathrm{ECB}$ は底辺をそれぞれ $\mathrm{AE}$、$\mathrm{EC}$ とみるとともに高さが $\mathrm{EB}$ のいわゆる「高さの等しい三角形」となります。
三角形の面積は、$\displaystyle \frac{1}{2}$ $\times$ 底辺 $\times$ 高さで与えられるので、高さが等しい場合の面積の比は底辺の比で決まります。したがって上図のように、$\mathrm{AE:EC=5:1}$ となります。ここが理解できれば、あとは関数の式を利用して計算をするだけです!
$\mathrm{EC}$ の長さは点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標で表されるので、$\displaystyle y=\frac{16}{t}$ となります。また、$\mathrm{AE}$ の長さは点 $\mathrm{A}$ の $y$ 座標から点 $\mathrm{B}$ の $y$ 座標を引いたものとなるので
$$16-\frac{16}{t}$$
となります。$\mathrm{EC}$ の長さの5倍が$\mathrm{AE}$ の長さとなるので
$$5\times \frac{16}{t}=16-\frac{16}{t}$$
となります。したがって
\begin{align*}
\frac{5\times 16}{t}&=\frac{16t-16}{t}\\
5&=t-1\\
6&=t
\end{align*}
大問4
内容 方程式
難易度 標準
大問4は方程式の問題でした。最近の入試問題では、問題文が長文化してきているのですが、今回は比較的シンプルな問題でした。が、珍しく穴埋めタイプの問題になっていたので「余計なお世話じゃ!」と思った人もいたかもしれません(笑)
では、問題を見ていきましょう。
という設定が与えられています。
(1)は弟のお小遣いを $x$ 円とするとき、兄のお小遣いが
$$\frac{4}{3}(\qquad)$$
と表すことができ、このときの( )を埋めろという問題です。
問題に「弟のお小遣いは兄のお小遣いの $\displaystyle\frac{3}{4}$ より100円少ない」とあるので、今月までの兄のお小遣いを $y$ 円としたとき
$$x=\frac{3}{4}y-100$$
となります。これを $y$ について解き直せば
$$\frac{3}{4}y=x+100\Longleftrightarrow y=\frac{4}{3}(x+100)$$
となります。よって、( )内は $x+100$ となります。
(2)は、来月からは、兄のお小遣いが200円増えるため、弟のお小遣いは兄のお小遣いの $\displaystyle \frac{3}{5}$ より260円多くなる。来月からの兄のお小遣いは何円か、という問題です。(1)と同様に今月までの兄のお小遣いを $y$ 円とすると
$$x=\frac{3}{5}(y+200)+260$$
となります。これと(1)の $x=\frac{3}{4}y-100$ を連立して $y$ を求めます。$x$ を消去して
$$\frac{3}{5}(y+200)+260=\frac{3}{4}y-100$$
となります。これを解くと、$y=3200$ となります。したがって、来月からの兄のお小遣いは $3200+200=3400$ 円となります。
大問5
内容 作図
難易度 易
大問5は作図の問題でした。作図の問題はかなり難しい問題が出題されることもあり、難易度がなかなか安定しません。そのため、幅広く問題にあたっておくことが大切です。
また、作図とは言っても基本は図形の問題なので、図形の知識に不安がある人は、まずそちらを固めることを優先しましょう。図形の知識がしっかり出来上がっていれば、あとは基本の作図を組み合わせるだけで解けるようになっています。基本の作図も、角の二等分線・線分の垂直二等分線、垂線など6パターンくらいを押さえておけば十分です。
今回の問題では、点Pについての条件が
- $\angle\mathrm{ABC}$ の二等分線上にある
- $\angle\mathrm{BPC}=90^\circ$
の2つ与えられています。
いきなりコンパスと定規を持って描き始める人がいますが、少し落ち着いてくださいね(笑)
まずは、大体でいいので、どのような位置にあるかを把握してみましょう。
こんな感じになります。最初に角の二等分線を作図し、次にCからその二等分線に垂線を下ろせばOKですね。
大問6
内容 平面図形
難易度 標準
大問6は平面図形の問題でした。この時期の図形の問題は使える道具が少ないため、難しくなりがちです。解くのにも時間がかかってしまうため、試験時間内に手をつけられなかった人も多いと思います。まずは時間のことは忘れて、じっくりと考えてみましょう。
(1)は角度の問題でした。長方形 $\mathrm{ABCD}$ において、$\angle\mathrm{AED}=63^\circ$ が与えられています。
また、条件として $\mathrm{AB=BE}$ も忘れてはいけません。$\triangle\mathrm{ABE}$ が二等辺三角形であり、$\angle\mathrm{BAE}=\angle\mathrm{BEA}$ であることもチェックしておきましょう。
図からすぐに分かると思いますが、$\mathrm{AB//DC}$ なので錯角を考えて、$\angle\mathrm{AED}=\angle\mathrm{BAE}=63^\circ$ となります。したがって、二等辺三角形である $\triangle\mathrm{ABE}$ の内角を考えて
$$\angle\mathrm{ABE}=180^\circ-63^\circ\times 2=54^\circ$$
となります。
(2)は、図において $\triangle\mathrm{ABH}\equiv \triangle\mathrm{BEC}$ を証明する問題です。
直角三角形であることはすぐに分かるでしょう。また、与えらえた条件から $\mathrm{AB=BE}$ (斜辺が等しい)もすぐに分かります。
直角三角形の合同を示すには、もう1つの角または辺が等しいことを示せばいいのですが、与えられた条件から角を考える方が良さそうです。
ここでも錯角を考えることで
$$\angle\mathrm{ABH}=\angle\mathrm{BEC}$$
が示せます。
以上から $\triangle\mathrm{ABH}\equiv \triangle\mathrm{BEC}$ が示せました。
(3)は、(2)の設定を引き継ぐ問題です。もちろん、$\triangle\mathrm{ABH}\equiv \triangle\mathrm{BEC}$ も利用できます。求めるものは $\triangle\mathrm{EDH}$ の面積となります。
ここでは新たな条件として、$\mathrm{CE:ED=5:4}$ と長方形の面積 $\mathrm{63cm^2}$ が与えられます。
このとき、$\mathrm{DC=AB=BE}$ であることをまずチェックしましょう。さらに、$\triangle\mathrm{ABH}\equiv \triangle\mathrm{BEC}$ であることから、$\mathrm{CE=BH}$ となります。
したがって、$\mathrm{BH:HE=5:4}$ であることまで芋づる式に分かります。
あとは、$\triangle\mathrm{EDH}$ の面積を考えていくだけです。せっかく比が与えられているので、これを利用することをまずは第1に考えましょう。
大問3でも登場した高さの等しい三角形に着目できれば、アッサリと解くことができます。
まずは、$\triangle\mathrm{BCD}$ を考えます。これは長方形の半分になるので、$\displaystyle \triangle\mathrm{BCD}=\frac{63}{2}$ となります。
次に $\triangle\mathrm{BCD}$ を $\triangle\mathrm{BCE}$ と $\triangle\mathrm{BED}$ に分けます。底辺をそれぞれ $\mathrm{CE}$、$\mathrm{ED}$ と見れば、高さの等しい三角形となるため、底辺の比 $5:4$ がそのまま面積比となります。
したがって、$\displaystyle \triangle\mathrm{BED}=\frac{4}{9}\times \triangle\mathrm{BCD}=14$ となります。
さらに、$\triangle\mathrm{BED}$ を $\triangle\mathrm{DBH}$ と $\triangle\mathrm{DHE}$ に分けます。底辺をそれぞれ $\mathrm{BH}$、$\mathrm{HE}$ と見れば、これらも高さの等しい三角形となるため、底辺の比 $5:4$ がそのまま面積比となります。
したがって、$\displaystyle \triangle\mathrm{EDH}=\frac{4}{9}\times \triangle\mathrm{BED}=\frac{56}{9}(\mathrm{cm^2})$ となります。
大問7
内容 空間図形
難易度 やや難
大問7は空間図形の問題でした。空間図形は苦手とする人が多く正答率がとても低いのですが、得意な人は差をつけやすい問題なので積極的に挑戦してほしいところです。また、時間的に厳しくて空間図形の問題に辿り着かなかったという人もいるかもしれません。いずれにしても、時間のことは一旦忘れて、しっかりと復習をしておきましょう。
(1)は簡単な知識問題です。
面BFGCと垂直な辺を考える問題ですが、これは大丈夫でしょう。BA、CD、FE、GHとなります。
(2)は下図において $\mathrm{BI=EG}$ が成り立つときの四角形 $\mathrm{IEFB}$ の面積を求める問題です。
大事なのは $\mathrm{BI=EG}$ をどう利用するかです。$\mathrm{EG}$ が対角線になっているので、$\mathrm{BI}$ が対角線となるような長方形を意識してみましょう。同じ形を作ってみるというのは図形の基本的な考え方です。それぞれの平面を取り出してみます。
図において、長方形 $\mathrm{HEFG}$ と長方形 $\mathrm{AIPB}$ は合同な図形となります。
したがって、四角形 $\mathrm{IEFB}$ の面積は長方形 $\mathrm{AEFB}$ から $\triangle\mathrm{AIB}$ をひいて
$$5\times 3-\frac{1}{2}\times 4\times 3=9(\mathrm{cm^2})$$
となります。
(3)はかなり難しい問題でした。$\mathrm{EJ:JG=3:2}$ が与えられたときの四面体 $\mathrm{BCEJ}$ の体積を求める問題です。
問題冊子に書かれている図(上図)を見て、いきなり四面体 $\mathrm{BCEJ}$ の体積を考えようとしても、四面体の形が把握しにくいのでどう求めていくかが分かりにくいですね。
この形の捉えにくさを回避するには、拠り所となる面を作るのが良いでしょう。拠り所となる面というのは、切断面ではなく、もとの立体と共有するような面です。四面体 $\mathrm{BCEJ}$ にはもとの直方体と共有する面が1つもないのが考えにくい原因です。
そこで、四面体 $\mathrm{BCEJ}$ を含む少し大きな立体を考えてみましょう。
いちばんシンプルに考える(と言っても難しいんですけど)ために $\mathrm{EJ}$ を延長した $\mathrm{EG}$ を考えます。具体的にはBGを結んでしまうのがいいでしょう。
この1本の線が入るだけで、かなり見易くなったという人もいるのではないでしょうか。
ここで、四面体 $\mathrm{BEGC}$ は底面 $\triangle\mathrm{BCG}$、高さ $\mathrm{EF}$ となるので
$$\frac{1}{3}\times \left(\frac{1}{2}\times 4\times 5\times 3\right)=10$$
となります。このように、拠り所を作ると計算がしやすくなります。
次に、底面を $\triangle\mathrm{CEG}$ に取り直します。
そして、四面体 $\mathrm{BEGC}$ を2つの四面体 $\mathrm{B-CEJ}$ と $\mathrm{B-CJG}$ に分割します。そうすると、四面体 $\mathrm{B-CEJ}$ と四面体 $\mathrm{B-CJG}$ は高さが等しい四面体となり、体積比は底面積の比と等しくなることが分かります。
いま、$\triangle\mathrm{CEJ}:\triangle\mathrm{CJG}=\mathrm{EJ:JG}=3:2$ であるため、四面体 $B-CEJ$ の体積は
四面体 $\displaystyle\mathrm{BEGC}\times \frac{3}{5}$
となります。したがって、求める図形の体積は
$$10\times \frac{3}{5}=6(\mathrm{cm^3})$$
となることが分かります。
まとめ
石川県総合模試のような入試と同形式の試験を受験するのは今回が初めてという人も多かったと思います。普段の定期テストとは全然違う内容に驚いた人もいるでしょう。また、会場受験した人は、入試さながらの緊張感から普段ではやらないようなミスをしてしまったという人もいたかもしれません。そういうことを経験しておくことも、模試を受験する理由の1つとなります。
また、時間が全然足りなかったという人もたくさんいたと思います。今後、問題を解くスピードを上げていく必要があるのですが、スピードにこだわりすぎて雑な勉強にならないように充分気をつけてください。とくに数学では、仕組みもよくわからずに「早く解ける方法」みたいなものに頼っている人を見かけます。これは絶対にやめてください。
また、点数だけ追い求めるような勉強にならないように気をつけてほしいです。問題の解き方を覚えてそれに従って答えを出すという方法は、手っ取り早く点数を取るためには効果的かもしれません。あるいは、難しい問題は捨てて、確実に得点を拾える問題だけを練習するというのも受験対策としては有効かもしれません。しかし、この時期にやるべきことは「対策」ではなく、正しく数学を勉強することです。
高校入試でおかしな勉強方法に染まってしまうと、その先で軌道修正するのがとても難しくなります。せっかく上位校に合格したものの、伸び悩んでしまう生徒がかなりいます。そんなことにならないように、目先の数字(点数や偏差値)を追いかける歪んだ勉強とは早めに決別してほしいなあと思います。
なお、昨年の問題と比較すると難易度的には同等か少し易しいくらいでした。昨年の平均点が45.9点だったので、今年もそのくらいなるかもしれません。いずれにしても、現時点の点数や偏差値といったものは目安程度に考えておきましょう。模試結果に一喜一憂するのではなく、地に足をつけて実力を伸ばしていくことを考えてくださいね!